Ghost Town|ショートストーリー
長い夢を見ていた。
そこはどこかの外国の街の古ぼけた駅だった。
駅舎にある時計を見ると時刻は深夜2時を指している。自分がどうやってこんな場所に来たか、どうしてここに来たのか、全くわからない。がしかし、私はその駅にいた。
ズボンの尻ポケットからはぐしゃぐしゃになった紙幣、古ぼけたライター、ポップキャンディ、コイン数枚、そして紙くずが入っている。
紙くずは何重にも織り込まれていて、まるでガムを捨てたかの様な有様だった。その紙を開いてゆくと、何か地図のようなものと×印が描かれている。
落書きみたいな地図と、目の前に広がる古ぼけた閑散とした街を照らし合わせる、街を見て、地図を見る。どうやら違う場所の地図のようだ。
時刻表を見ると朝の8時にまた次の列車が来るようだ。まだ6時間程ある。
仕方がないので街を歩いてみることにした。
瓶や缶のゴミが散乱している道を眺めながら、点々とついている街頭を目印に歩いてみる。
もしかしたら誰かに会うかもしれない。
真夜中の夜の街、じわりと背中に汗がにじむ。
尻ポケットからキャンディを取り出し、包装紙を開けて口に放り込む、甘ったるいコーラの味が広がる。
包装紙を捨てようとしたそのとき、なにかが書いてあるのに気がつく。
「Welcome to my town.(ようこそ 私の街へ)」
悪戯か、はたまた嫌がらせか、たまたまか、しばらくその印字された文字を眺めていると、後ろから車のライトに照らされていることに気がつく。小さめな水色の荷台のあるトラックだ。
運転席には黒いキャップを深くかぶった少女がひとり。彼女は、車の窓から身を乗り出し、荷台に顎をぐいと向けて、乗るように促してくる。口には私と同じキャンディを咥えていた。
私は行くあてもないので、仕方なく彼女のトラックの荷台に乗り込んだ。
ガタンガタンと揺れるトラックの荷台は、居心地がいいとは言えない。時たま尻を床にぶつけながら古ぼけたネオンの明かりの灯る街を抜けてゆく。
街を出て、川沿いを走る。
川に街の光が反射し、しまいにはその光も消えていった。川の先には古ぼけた橋が見える。
人は誰もいない。しばらくするとその揺れがなんだか心地よくなり、睡魔が襲ってくる。
そうだ、この街は、30年前に旅をして立ち寄ったあの場所だ。当時私は世界を旅していた。一体自分の居場所はどこなんだろうと彷徨い続けていた。
まるでゴーストのように。
たしか、夜にゴーストがでるだとか、そんな噂を耳にした場所だ、魂が集まってきてしまう街。
そうだ、これは夢。
私は病院に運ばれて…その先が思い出せない。
いまはとても眠い、揺れが心地良い、
一眠りしたらまた考えよう。
次は一体どんな夢だろう。