ひそやかな時間たち
今朝仕事で早朝に家を出た私は、車のボンネットにある水滴に目を奪われていた。つるりとした光の粒のようなものがとてもきれいに見えたのだ。
たしか昨夜は満月で、深夜には雲も晴れてきれいな夜空だったような気がする。ということは、わたしが寝ている間に雨が降ってきたのだろう。
そのことに気がつくと、空気がなんだかしっとりとしているように感じたり、地面が濃い色になっていることに目がいくようになる。
人生の中で睡眠が占める割合は、1/3らしいとどこかでみた事があるけれど、自分が寝ている間にも、世界では色々な事があって、きっと知らぬ間に終わる事が大半なのかもしれない。
不思議でもあり、それがなんだか少しだけ素敵なことのようにも思えるのは、知らない時間をボンネットの水滴から感じたからだろうか。
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この間近所の映画館で『ムーンライトシャドウ』という映画を見てきた。
これは、吉本ばななさんの著書「キッチン」に収録されている話のひとつだ。
あらすじは割愛するがその中で、満月の夜に亡くなってしまった人に会えるという「月影現象」というものが出てくる。その案内人である女性が、月影現象は起こっているけれど、それを世界の人は知らない、知らぬ間にすぎていくものだ、と話すのだ。
「ムーンライトシャドウ」の監督はマレーシアのエドモンド・ヨウだ。原作のファンだという彼の世界から描かれた、吉本ばななさんの世界は、どこか浮世離れしているような、どこか知らない国のような不思議な光を見せてくれた。
ひそやかに世界に発信されている、もしかしたら見逃してしまったかもしれないようなものはとても美しく見える事があるのは、それが世界の秘密のひとつだからなのかもしれない。
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