財務局の業務と役割
1.はじめに
皆さん、こんにちは弁護士のスガオです。
本日は、金融に関わらない方には馴染みが少ないかもしれない財務局の業務内容について、私の経験を通じてご紹介したいと思います。
私は任期付き公務員として、財務省関東財務局の証券取引等監視官部門において証券検査官として金融商品取引業者等に対する証券検査の業務に従事しておりました。
財務局や証券検査官といえば、ドラマ「半沢直樹」の登場人物、黒崎駿一氏(演じるのは片岡愛之助さん)の肩書が思い浮かぶかもしれません。
彼の役職は「証券取引等監視委員会事務局 証券検査課統括検査官」で、これは私が勤めていた部署とも関連が深いものです。
しかし、ドラマに出てくるような面白みや華やかさだけではなく、実際の業務はもっと奥深いものです。
それを理解するためには、財務省、金融庁、証券取引等監視委員会といった組織との関係性や、かつての大蔵省の役割について知ることが必要です。
財務局の業務を深く理解するには、大蔵省の歴史を知ることから始めるのが良いと思います。
2.大蔵省の歴史
かつての大蔵省は、現在の財務省、金融庁、証券取引等監視委員会などを包括するような大きな組織でした。
「行政最強の組織」、「官庁の中の官庁」などと言われていました。
しかし、時代の変化とともに行政改革が進み、大蔵省は財務省へと名称が変更され、金融行政は分離されることになりました。
その経緯を簡単に振り返ってみましょう。
1992年7月、国家行政組織法第8条に基づいて証券取引等監視委員会が大蔵省に設置され、証券行政の見直しが始まりました。
続く1996年6月には、大蔵省銀行局や証券局の所掌事務の一部を分離し、新たに金融監督庁が設置されることとなります。この時点で証券取引等監視委員会も金融監督庁に移管されました。同年12月には、金融再生委員会の発足に伴い、金融監督庁と証券取引等監視委員会は、共に金融再生委員会に移管されます。
次に、大きな変革があったのは2000年です。それまで大蔵省金融企画局が担ってきた金融制度の企画・立案に関する事務も金融監督庁に移管され、新たに金融庁が発足しました。証券取引等監視委員会もこの時に金融庁へと移管されました。そして2001年、中央省庁再編により金融再生委員会が廃止され、内閣府の外局として金融庁が設置されました。これに伴い、大蔵省は財務省に改称されることとなりました。証券取引等監視委員会も同様に、内閣府の外局としての金融庁に移管されました。
3.財務局の歴史とその性格
その一方、財務局は1949(昭和24)年に大蔵省の総合出先機関として設立されました。
大蔵省が財務省へと改称され、金融に関する全ての事務が新たに設置された金融庁に移される中で、地方における業務は引き続き財務局が担うことになりました。
このように、財務局は財務省の総合出先機関でありつつも、金融庁から事務を委任される役割も持っています。
そのため、その業務範囲は広く、財政、金融、国有財産、経済調査と多岐にわたります。
例えば、関東財務局の理財部の中には主計課(第1~3)や金融監督第1~6課など、様々な部署が存在します。
主計課は国の予算に関する事務を担当し、金融監督課は銀行・信用金庫・信用組合・保険・貸金業者・前払式支払手段発行者等の監督に関する事務を行っています。また、私が所属していた証券取引等監視官部門は、証券取引等監視委員会が掌握する事務を専門に担当する部署です。
このように財務省の総合出先機関と金融庁・証券取引等監視委員会の事務委任を受ける機関としての2つの性格を有し、多様な業務を担うのが財務局の大きな特徴と言えます。
以上が財務局における業務とその背後にある財務省と金融庁、そしてかつての大蔵省との関係性についての説明です。
参考文献