役員退職金の算定方法って?驚きの計算ルールを大公開!
今回紹介するのは、役員退職金についてです。
事業承継を行う場合や相続税の対策をする際に、役員退職金がいくらかにより、対策の内容も大きく変動します。
また、その算定方法も単純ではなく、自社の実態に合った形にする必要があります。
中小企業の経営者やご家族、後継者の方は、必読の内容となります。
税法の規定
では、まずは税法の規定から見ていきます。
法人税法と施行令では、役員退職金について、以下の条文が存在します。
金額の基準は「不相当に高額」
まず、法人税法では「不相当に高額」な金額は法人の損金(費用処理)算入させないとなっています。
次に施行令では、もう少し具体的に記載されています。
・業務に従事した期間
・退職の事情
・事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況
実に曖昧な表現です・・・
法律なので致し方ないのでしょうが、いくらまでならOKという明確な基準はありませんので、個々の会社の実情に照らし合わせ、世の中の相場とバランスを図る必要があります。
実施的な退職の事実が必要
また、退職の事実があるかも重要です。
役職のみ変更し、実質的には経営に従事している場合は、退職とは認められません。
カッコ書きを見るとわかるように、代表権があったり、経営上主要な地位がある場合は除かれているので、役職のみを変更しただけでは退職にはなりません。
最終的には、答えがない世界なので支給金額の合理性と退職後の勤務実態で判断せざるを得ないと考えます。
この金額なら絶対に大丈夫ですという基準はない事をよく理解しておきましょう。
役員退職金の支給には、株主総会の決議が必要
役員退職金の支給ですが、会社法では以下のように定められています。
会社法361条では、役員退職金(職務執行の対価)を支給する際の選択肢は、以下の二つです。
・定款で定める
・株主総会の決議
ここで間違っている方も多いかもしれませんが、役員退職金の支給は取締役会の決議では、法的には無効です。
役員退職金規程が存在していたとしても、取締役会のみで決議をした場合に否認された判例もありますので、決議機関は注意が必要です。
役員退職金の算定方法
役員退職金の支給の透明性を担保するには、役員退職金規程を制定し、その計算方法を明らかにしておく必要があります。
そして、役員退職金の計算方法には以下のような方法が考えられます。
最終報酬月額方式
最も一般的な方式です。
あくまでも、役員退職金の計算の元となるのは、最終の役員報酬月額です。
上の図では、右肩上がりでなだらかに報酬が上がっていますが、退職の直前で報酬を上げたり下げたりすると不合理な計算となってしまうデメリットがあります。
役位別積み上げ方式
次の方法は、役員の役位別に算定し、積み上げていく方法です。
大きな特徴は、役員ごとに退職金を計算し、合計するところです。よって、役位別に功績倍率を乗じる為、より実態に近いと言えます。また、退職の直前で報酬を増減した場合の不合理の解消も期待できます。
しかし、計算は煩雑になるのがデメリットとなります。
1年あたり平均法
最後に紹介するのが、1年あたり平均法です。
この1年あたりの退職金平均額が、同業種・同規模法人の退職金を参考に平均額を算出する方法です。
ただし、この方法は前で紹介した功績倍率を使用する方法が不合理な場合に採用されることが多いので、あまり一般的な方法ではありません。
功績倍率の考え方
なお、功績倍率については、明確な基準はありませんが、昭和55年の裁判例により示された基準が目安となっています。
まとめ
今回は、事業承継や相続税においても重要な要素となる「役員退職金」について、税法の基準や計算方法などを紹介しました。
役員退職金は、税務調査で否認されると法人に与える影響が大きく、かつ、社長のライフプランにも大きく影響します。
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