ことばにならない思いだって、きっと伝わっているよ。
大勢の人が忙しなく行き交う帰宅ラッシュ真っ只中の目黒駅。スマホをかざし改札を通り抜けるか抜けないかの一瞬。すえきち〜、という低めの声が背後から聞こえた。突然のことに体がビックリしたのか、むせるように咳き込みながら駅構内に振り向く。そこには懐かしい、ひげ姿の男性が立っていた。
内山龍一さん、ウッチー改め、りゅう。( うっちーはひらがな表記だったかもしれないし、リュウはカタカナ表記なのかもしれない。が、そのあたりの細かいところはよし、としよう )彼とは偶然、よく出合う。それも、どこかの駅であることが多い。なんの意味があるのかないのか…それは不明だ。
とはいえ、ずいぶん久しぶりの偶然の出合い。近くのカフェへ移動し、コーヒーを飲みながら話をすることにした。穏やかなノリで話ができて、気づきが多いのが彼との会話の特徴である。どんな流れからか忘れたけれど、こんなようなことを口にした。
ことばにならない思いだって、きっと伝わっている。
そのことばが耳に届いたとき、ぼくの意識は瞬間移動した。自宅で亡き父に手を合わせているぼくがそこにはいた。そのぼくは、手を合わせて父に何かを語りかけようとしている。しかし、ちっともことばが出てこない。
お父さん…
ただ呼びかけただけで、ことばにつまる。次のことばは出てこない。でも、そのぼくには、たくさん思いや気持ちが渦巻いている。ほんとうに、たくさんのことを思ってる。感じてる。でも、どうしても、ことばにならない。もどかしそうで、じぶんをちょっと責めているようでもあった。
ことばにならない思いだって、きっと伝わっているよ。
そのことばが伝わった瞬間。ことばが無用なものとなり、何かで父とつながれて、優しいあたたかさに包まれていた。しばらくのあいだ、ぼくはきっと、口は半開きで目は空を見つめていたであろう。
無理にことばにしなくたって、通じてる思いはある。よね?
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最近SNSやブログ、HPなどでサイービスや商品をことばにして伝えるのが当たり前になってきました。が、ぼくのクライアントさんには、ブログもSNSもHPさえも使わず人がたくさん集まるお店や会社があります。
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