小さくて大きな物語。
家に次々と本が運び届けられてくる。送り先はほとんどがAmazon。配達員さんから奪うようにして受け取った控えに、いつもより一層汚いサインを書く。その紙と交換するようにして荷物を手渡される。いつもよりもズシリと重い。焦る気持ちを抑えて包装箱を開ける。
おぉ…。
ごく控えめなうれしさがおずおずとやって来る。ぼくは大げさに迎え入れる。うれしさが体いっぱいに広がる。
本を手にとって、しばらく眺める。表紙をじいっと見ては、裏っ返してじいっ。おっと、背表紙も。そして撫でる。鼻も近づける。
レイモンド・カーヴァーの全集。I〜Ⅶまであり、豪華装丁版はそれぞれ4000円近くする。
7冊のうち6冊はAmazonに新品が揃っていた。しかし、ほぼどれも残り一冊という表示。合計金額の計算をするよりも先に、指が注文ボタンをクリックしていた。( 奥さんはもちろん呆れていた )
ちなみに、『愛について語るときに我々の語ること』という一冊はAmazonでの販売がされていなくて、中古しかなかった。そんななかぼくは、新品を取り扱うお店を見つけた。金額は定価の倍以上。流石に一瞬ひるむ。が、3秒で注文ボタンをクリック。( この原稿をどうか奥さんが読みませんように…。ともに、もしも読んだときのために、ここで謝っておこう。ごめんよ、バカな男で )
もうずっと前に買って読んでいた『Carver's dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』を再読。小さな物語たち。静かな佇まい。心に生まれるほころび。忍び寄る小さな不穏の足音。薄暗い闇のなかに輝くあたたかい光。ぼくは打ちのめされ、ある衝動の芽生えを感じた。彼のすべての作品を読みたい。
そうしてぼくは、残り四冊の到着を待つ。
追伸、、、
レイモンド・カーヴァーの全集はハードカバーだけではなく、1000円ちょっとのソフトカバーの本やKindle版もあります。まずは、『Carver's dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』を読んでみて、気に入れば全集もぜひ。
傑作選『Carver's dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』
全集Ⅰ『頼むから静かにしてくれ』
全集Ⅱ『愛について語るときに我々の語ること』
全集Ⅲ『大聖堂』
全集Ⅳ『ファイアズ』
全集Ⅴ『水と水が出会うところ』
全集Ⅵ『象/滝への新しい小径』
全集Ⅶ『英雄を謳うまい』
全集Ⅷ『必要になったら電話をかけて』
タイトルがいい味を出してますよね。