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なんでもない日、おめでとう。
ぼくはときどき、このことばを見つめる。いつもではない、ときどきだ。
ちょっとめくらないと見えない、隠れていることば。いつも目に入ってこない、控えめなことば。その佇まいにやさしさを感じる。
なんでもない日、おめでとう。
父を亡くしてからというもの、なんでもない日のことをよく思い出す。東京に上京してきたとき、松屋でデミグラストマトのハンバーグを隣り合わせで食べた日のこと。空港から実家へ帰る道中、地元の同級生たちの近況を話した日のこと。感動もののドキュメンタリーを観て、パンツ姿で鼻をすすっていた日のこと。隣で従業員と電話したあと、眉間にしわを寄せた困り顔でちょっと怒っていた日のこと。弟と遊んで帰ってくると、カフェの席に母と向かい合わせに座って待っていてくれた日のこと。
あまりにも当たり前に過ぎてゆく、昨日が、今日が、明日が、いつの日かの小さな思い出になっている。ぼくというひとりの人間を構成するかけがえのない思い出になっている。
だから、なんでもない日を歓迎しよう。毎日じゃなくて、思い出したときだけでもいいから。肩ひじ張ってじゃなくて、ふと思うくらいでいいから。
なんでもない日、おめでとう。
こうして今日もまた、なんでもない日がはじまる。
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このことばが書かれている、秋山具義さんがデザインしたほぼ日手帳のカバー「LOVE ME DO」がほんとに素敵なのです。お気に入りのちっちゃな秘密基地みたいになっています。開くたびにうれしい。
今日の有料マガジンコーナーの話題は、「ぼくの身に起こった、なんでもない変化」についてです。土曜日なのでゆるゆると書いています。( ほんとうになんでもないので、単発での購入はオススメしません )
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