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ChatGPT時代の企画能力の磨き方4.


コラム3.AIの思考の癖、人間の思考の癖

将棋AIは、勝つための最短の一手をプログラミングされており、人間には時として、違和感があると申し上げましたが、これは、双方の考え方、アプローチに違いがあるからとも言えます。
これをマーケティング的な観点ででまとめてみましょう。

まず、AIが、「単線思考」だとしたら、人間は「複線思考」だということです。

AIはゴールに到達するために数理的に合理化して、結果的に最短の手をシミュレーションしています。
このような思考は人間にもあるわけですが、大量データ高速処理の時代になって、コンピュータがより優位性を発揮するようにになりました。

一方人間は、「複線思考」を取る癖があります。ゴールに到達するためには、いくつかの有力なルートがあるという前提で考えを巡らせるのです。
例えば、山登りのルートが最短ルートだけではなく、「素人でも登りやすい」、「途中絶景が見られる」など、人間にとって意味のあるいくつかのルートを設定するように、将棋においても、相手の思考や癖を見越した勝ちやすいルートがいくつかあるのではないかという発想をします。(図①参照)


次の癖ですが、AIは、「最適化思考」をするのに対し、人間は「戦略思考」をします。

AIは局面単位で勝つための次の一手を指し示すのは前述の通りですが、これは言ってみれば、その場、その場で状況を一瞬静止状態にして、360度眺め回し、勝つという目的達成のための最適なシミュレーションをしているということです。

一方人間は、最短距離だろうと回り道だろうと、一端ルートを決めたら容易にそれを変えないという癖があります。悪く言えば、頑固ですが、いい意味では、行動に一貫性を持たせたいという強い意志があるのです。
紆余曲折があろうと一度決めたら一貫性を持つ。そしてその根拠設定にこだわります。
こういう癖を「戦略思考」と名付けました。(図②参照)


考えてみたら、人間以外の生物は、生存と種の維持という本能に忠実で、その意味での単線思考、最適化思考ですが、人間は、そこに独特の意味や意志を持たせようとする複線思考、戦略思考という癖で独自の発展を遂げたわけですね。

それはそれで素晴らしいことですが、世界がより複雑化する中、目的達成の単線が見えなくなりつつあり、それをAIに助けてもらっているのが今の状況とも言えなくもない気もします。

事実、この単線思考を見直した結果、将棋界の次の一手の革新が起っているわけです。
棋士たちが今やっていることは、自分たち(人間)の思考の癖を客観視し、AIのいい所を自分の脳に刻み込もうとする行為とも言えるでしょう。

人間がアンドロイド化しているとも言えますねぇ。


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