『#DX白書2021』公開記念連載④ 「DXが起こした顧客体験革命」
皆さんこんにちは!
メリークリスマス🎄
Kaizen Platformのスドケンこと須藤憲司です。
前回お届けした「DXでキャッシュポイントをいかに創るか?」は、いかがでしたでしょうか?
『 #DX白書2021 』 は、おかげさまで1,200DLを超えました。
ありがとうございます🙇♂️
最近登壇したウェビナーでも、読みましたというお声をいただくことが多く感無量です!😭
前回のおさらい
前回、DXで大切なことは、顧客体験にイノベーションを起こし、しっかり収益を上げることだとお伝えしました。
自社のワークフローやバリューチェーンなどを丁寧に分析し、交換価値・体験価値を設計すれば、どのような業態でもDXでキャッシュポイントを創ることができるというお話でした。
今回は、『 #DX白書2021 』の中から、4章~8章に書かれている「B to CビジネスのDX」について解説しながら重要なポイントをお届けしたいと思います。
人類の資源は石油からデータへ
これまで、幾度となく「顧客について知ることが大事だ」と言われてきましたが、いまやInstagramやFacebook、Amazon、Tiktokのようなプラットフォーマーの方が消費者の好みを知り尽くしている時代です。データを活用し、AIや機械学習の力でどんなページや画像を見ているか、どこで親指を止めているかまでわかるようになりました。
20世紀は「石油メジャー」という言葉があったように、経済の覇権は「石油」を持っている国・企業が掌握していました。
しかし、2010年代以降、「データメジャー」という言葉が登場し、データが覇権争いをめぐる重要な「資源」とされるようになってきています。
そんな中、膨大なデータを持っている企業が続々とサブスクリプションモデルなどで直接消費者とつながるようになってきました。
メーカー:卸売を通じて小売店で商品を販売→デジタルで直接消費者とつながる〔顧客接点のDX /D2C〕
小売業:店頭で商品を販売→ECサイトで販売し店頭で受け渡すなど〔購買体験のDX /OMO〕
これまで直接消費者について知ることのできなかったメーカーがダイレクトに消費者に製品を販売するようになったのがD2C(Direct to Consumer:顧客接点のDX)です。
また、店頭販売店等受け渡しが主流だった小売店が、ECサイトで販売した製品を店頭受け取り可能にするなどのデジタルを絡めた販売手法を取るようになったことがOMO(Online Merges with Offline:購買体験のDX)です。
こうした新しい変化は、DXがもたらした「顧客体験革命」の一つだと言えるでしょう。
顧客接点のDX「D2C」には3パターン存在
ここからはB to C領域の「顧客体験DX」であるD2CとOMOについて、具体的に説明していきます。
先ほどもお伝えしたように、これまで日本のメーカーは、卸売を通じて小売店に商品を卸し、消費者に販売してきました。
しかしD2Cブランドはデジタル上でダイレクトに商品を販売しています。すると店頭やリアルな顧客接点から「消費行動」や「購買」が消えてしまうという状態をもたらしました。
2018年10月、アメリカの寝具大手「Mattress Firm(マットレスファーム)」が破産法を申請しました。その背景には、創業わずか4年ほどの寝具のD2Cブランド「Casper(キャスパー)」の台頭があったと言われています。
日本でも、Mr.チーズケーキやキリンホームタップ、スナックミー、AmazonのHappy Valleyなど、顧客情報や消費者の好みをデータサイエンスや機械学習で分析し、総合的な顧客体験を向上させているD2Cブランドが次々と登場しています。
こうしたD2Cブランドには3つのパターンがあります。
ピュアD2Cプレイヤー:独自性の高いコンセプトで新たに立ち上げたスタートアップブランド。オンラインから店頭を始めとするオフラインへ進出〔ブランド体験の醸成とパーソナライズ〕
メーカーのD2Cブランド:もともとメーカーとして自社商品を製造・販売していたメーカーが、新たにリッチな顧客体験を提供する直販ブランド〔リッチな体験を提供〕
プラットフォーマーのPB(プライベートブランド):Amazonなどプラットフォーマーが自社ブランドをつくり商品開発するケース〔利便性と安さが武器〕
D2Cブランドはサブスクリプションモデルとの親和性が高いのも特徴です。月額契約をした時点で消費者の「財布の紐」はゆるんでいて、そのブランドや商品への信頼は醸成されている状態です。そこにさらに欲しい商品があればどんどん追加していくわけですから、収益は安定し、売り上げは右肩上がりになりやすいのです。
こうしたビジネスモデルは、商品の棚取りをして消費者の「財布の紐をゆるめる」ために広告・宣伝を行っていたこれまでのメーカーのビジネスモデルとは全く異なります。
デジタルやIoTを活用することで、ペットフードや学習教材など、買う人(Shopper)と実際に消費する人(Consumer)の違う商材も、実際に使う人に向けたマーケティングやパーソナライズもしやすくなりました。
収益予想がしやすいため、投資家からの評判もよくコロナ禍で軒並み株価や業績を上昇させています。
DXで消費が店頭から消えていく
次に「顧客接点のDX」であるOMOについて見てみましょう。
OMOで着目すべきは中国です。中国はあまりに急激に経済成長をしたため、リアルな店舗体験を持つ消費者はそれほど多くありません。
経済成長とデジタルの盛り上がりが同時に訪れ、購買体験はECとモバイルが非常に多くの割合を占めています。
・中国のGDP:1400兆円→うちECは240兆円(EC化率 17%)
・日本のGDP:500兆円→うちECは19兆円(EC化率 4%)
と全体のGDPで約3倍、ECは約15倍と規模の大きな差がでてきています。
例えば日本では店頭中心の自動車販売ですが、中国では自動車の「自動販売機」を開発したアリババが、いまや最大の自動車ディーラーになっています。
また、同じくアリババがはじめた「フーマ―」という食品スーパーは、オンラインとオフラインの垣根がなくシームレスとなり、ネット注文された商品は3km圏内なら30分以内で無料配達されます。
中小飲食店のデリバリーを請け負う、中国版の出前館「ウーラマ」が発達した結果、メニューなし、レジなし、イートインスペースなしの飲食店が増加。コンビニの売り上げを奪い始めています。
中国で店舗のあり方や顧客体験のあり方を劇的に変えてしまったOMOは、確実に日本にも大きな変化をもたらすでしょう。
今まで、商品選択・決済・受取の3つを店頭で賄って来た所が、それぞれネットでもリアルでも良く、体験が相互に行き来する状態になってきました。
商品選択(店頭でもネットでも、店頭で実際にみてネットでも =Showroomingのように相互に行き来しても良いし、自宅に送って返品しても良い)
決済(店頭でもキャッシュレス、ネットでもキャッシュレスに)
受取(店頭受取 = BOPIS:Buy Online Pickup In Storeでも、自宅でも)
インターネットは人々を距離の呪縛から開放し、レコメンドにより快適な購買を生み出しました。そしてついには選択の煩わしさからも人々を開放し始めています。
このとき顧客の姿が「見えない」ままでは、気づかない間に消費者そのものが姿を消し、消費行動や購買が丸ごと消えてしまうことになるでしょう。
次回、最終回となる5回目では、『#DX白書2021 』の中から「顧客体験をどうDXするか」「B to B企業の顧客体験」についてお伝えしたいと思います。
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