『#DX白書2021』公開記念連載① 「日本におけるDXの課題」(前編)
皆さんこんにちは!
Kaizen Platformのスドケンこと須藤憲司です。
激動の2020年も終わりが近づいてきました。
様々な企業のDXに関するプロジェクトを支援している私たちも、新しい製品をリリースしたり、コロナ禍におけるDXのあり方を模索したりといろんな取り組みを行ってきた一年でした。
その締めくくりとして、DXの最新潮流とこれからについてまとめたホワイトペーパー『 #DX白書2021 』を12/1に公開しました。
そこでこれから5回にわたって、『#DX白書2021』の内容をダイジェストでお届けします!
今回はその1回目として、僕が『#DX白書2021』を作った背景として、あらためてなぜDXが重要なのか、そして「日本におけるDXの課題」についてお伝えしたいと思います。
10年でネットと紙の収益構造は反転した
僕は2003年から2013年まで10年間、リクルートに在籍していました。入社当時のリクルートは、インターネットの売り上げが約25%。残りの4分の3は市販の情報誌やフリーペーパーなどの紙媒体の売上でした。
ところが2013年に僕が辞める時、その数字は反転していました。売り上げの大半が、インターネット経由になっていたのです。
その頃、デジタルの事業責任者として僕が最も困っていたのは、デジタル系の人材、すなわち、いまで言う「DX人材」が足りないということでした。デジタルを駆使したビジネスを推進できるプロデューサーもいなければ、マーケターもエンジニアもクリエイターやデザイナーも、データサイエンティストも足りませんでした。
それで、デジタル人材を少しでも早く採用しようと懸命になっていたのです。
リクルートという会社はそもそも、一年で8~10%の人材が入れ替わります。つまり10年で7割の社員が入れ替わるわけです。つまり、その頃のリクルートは、DX人材を採用することによってデジタルトランスフォーメーションを行っていたという事になります。
これは、組織をダイナミックに入れ替える欧米や中国の企業とやり方としては似ています。要は、血を入れ替える方法でのDXです。
日本におけるDXの課題
リクルート以外の会社に目を向けてみると、一般的な大企業における年間の退職率は2.3〜2.4%と言われています。これは10年間で20%余りしか人材が入れ替わらない構造です。
しかも、ジョブローテーションがあるため、せっかくDX人材を採用してもその専門性を生かしきれず、育成することもできません。
日本のDXを阻む壁は、ここにあります。
アメリカや中国を始めとする海外は人材の流動性が高く、リストラや買収などダイナミックに組織を入れ替える事が少なくありません。
つまり社内の人材のポートフォリオをデジタル人材に入れ替えることで、デジタルトランスフォーメーションを行うことができます。
ところが、日本ではそれができません。
大企業ができる選択肢で最も可能性が高いと思われるのは、DXに精通した外部のプロフェッショナルとコラボレーションしていく事です。
雇用慣習を背景とする、組織や人材を基点としたDXが成し得ないこと。
それが日本におけるDXの課題の核心です。
日本企業は人材採用以外に独自の「日本型DX」を見つけなければならないのです。
社会システムは製造業モデルから情報モデルへ
日本がDXを成し遂げる上で、もう一つ大きな課題があります。
それはいまの社会システムが製造業に合わせて構築されてきているという点です。
戦後の経済成長を支えてきた自動車産業や鉄鋼業といった製造業の工場では、熟練の労働者が必要です。すると従業員を新卒一括採用し、終身雇用で長期的に働いてもらうことで製品づくりの習熟度を高めなければなりませんでした。
ところが豊かになり、人件費が上がっていく日本では、人口の総量で太刀打ちできないアメリカや中国とはモノの生産量での勝負ができなくなりました。
それに加えて、「GDP(国内総生産)」、すなわち「モノをつくることが豊かさの指標である」という考え方や、これまで信じられてきた「モノの所有が豊かである」という思想自体も古くなりつつあります。
果たしてYouTuberはモノを生産しているのでしょうか。
メルカリでモノを買うことは、何かを生産していることになるのでしょうか。
いまや1日8時間働かずとも高い成果を上げられるクリエイティブな仕事が増え、モノを生産しなくても情報やモノの交換で財を成すことができるようになりました。
グローバルに目を向ければ、GAFAやアリババなど、モノを生産していないデジタル企業がこの10年で急激に成長しています。
つまり、日本がこれまで行ってきた「製造業で世界に勝つ」戦略と、製造業を発展させるために有効だった新卒一括採用&終身雇用という社会システムが、いまの時代とミスマッチを起こしているのです。
誰もが同じ仕事をして、同じ成果を求められる製造業モデルのビジネスとは異なり、これからは同じ勤務時間でも、人によって大きく成果の異なるクリエイティブ型の仕事が様々な職場で増えてきています。
企業レベルでも個人レベルでも、自分が主体的にDXする側に回るのか、それともいつしかDXされてしまうのか大きな岐路が訪れていると言えます。
次の30年を考えたとき、いま社会に何が起きているのかを正しく理解し、どのような選択をするのか重要なタイミングが来ていると思います。
そんなタイミングで世界的に大きな影響をもたらしたのが新型コロナウィルスの感染拡大です。次回は、このコロナをどのように捉えるべきか、そしてDXにどのような影響をもたらすのかをお話したいと思います。
コロナ禍からデジタル庁まで、様々なDXの動きやキーワードの解説、事例など2020年のDXの総決算となる全164ページの超大作のホワイトペーパー
「 #DX白書2021 」
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