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映画「窮鼠はチーズの夢を見る」を観て〜壁を乗り越える愛〜

2009年に発売された超人気BLコミック「窮鼠はチーズの夢を見る」がまさかの映画化!しかも主演はジャニーズの大倉忠義!
という訳で、早速観に行って参りました。
「窮鼠〜」についてnoteを書くにあたって、映画への感想のみならず原作への感想も語らざるを得ない訳なのですが、その前に私がBLというジャンルと向き合った時に得た気づきについて触れたいと思います。

私は果たしてBLが好きなのか否か

先に結論から述べますと、考察した結果私は腐女子ではありませんでした。
だけども、この原作コミックに関してはめちゃくちゃハマりました
初めて読んだのは確か5年ほど前。
あまりの感動に(もしや私、腐女子の性質があるのでは…!?)と思い、名作と言われるいくつかのBL作品を読んでみました。
結果として、「窮鼠は〜」以外はどれもピンと来ず・・・
当時その理由は分からず、なんとなく(濡れ場が多すぎる作品は合わないのかなぁ)と考えていました。
時を経て、2018年。
おっさんずラブ人気が巷を席巻し、ミーハーな私も例に漏れずハマり、そしてようやく気づいたのです!
私が「窮鼠〜」に惹かれたのは、ラブストーリーの最重要項目である大きな障害を乗り越えて愛を育むという部分を思いっきり満たしてくれていたからでした。
つまり、

(自分は異性愛者だ)という認識で生きている所謂ノンケの男性が、
グイグイ来るゲイにほだされて情が湧いてしまい、
自分の性的嗜好を見つめ直し、葛藤した末にその壁を乗り越え、
同性同士の恋愛に足を踏み入れて行く。

という点にグッときたのです。

壁を乗り越えろ!

同性愛者同士の恋愛も勿論いろんな障壁があるとは思うのですが、私個人としてはそれはもう心理的に何の抵抗もないというか、異性愛者同士の恋愛と何ら変わらないと思ってしまうので、乗り越えた感が薄いんですよね。
しかし自分のことを異性愛者と思っている人間が同性を愛した時の戸惑いとか、要する勇気の大きさって計り知れないと思うのです。

言うまでもないですが、ラブストーリーに障壁は必須項目。
でも、現代においてその障壁って徐々に減りつつあると思います。
身分の壁なんかは現代日本においてほぼ聞かない話ですし、距離の壁だって交通機関や通信の発達した現代では相当縮まってきている…(近いのに遠い北朝鮮と韓国という設定は、目の付け所が素晴らしい巨壁中の巨壁ですね!)
あらゆる障壁のジャンルは使い古され、しかもどれもリアリティが薄まって来ている・・・そんな中で、性的嗜好を乗り越えるという壁はラブストーリーのジャンルとして目新しく、瑞々しく感じたのです。

ドラマ「花盛りの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」

思い返せば、私が同様のトキメキを感じた作品が他にもありました。
2007年放映のドラマ「花盛りの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」です。
堀北真希演じる芦屋瑞稀という女の子が男装して男子高に潜り込み、そこでてんやわんやが巻き起こるラブコメなのですが、このドラマ1の人気キャラは生田斗真演じる中津秀一でした。
中津は男装した瑞稀を本当の男だと思っています。
それなのにどんどん瑞稀に惹かれていく自分に戸惑います。
(俺って男が好きだったの?!えっ?そうなの?)と自分で自分に驚いて慌てふためき、(そんなはずない!これは恋じゃない!)と言い聞かせてみるものの、(やっぱり俺は瑞稀が好きだ!性別なんて関係ない!)と覚悟を決めるのです。
瑞稀は本当は女の子なのでこの作品はBLではないのですが、構造的には「窮鼠〜」や「おっさんずラブ」にとっても近いと思います。
自分の価値観を見つめ直し、当たり前だと思っていたその価値観を疑い、壊し、新たな価値観を築こうとする。価値観と価値観の狭間で揺さぶられ、三半規管がおかしくなるほど心を動かすその様に、強い愛を感じるのです。

映画「窮鼠はチーズの夢を見る」で一番印象的だったシーン

今ヶ瀬(成田凌)の猛アタックに流され続け、同棲状態になる大伴(大倉忠義)ですが、可愛い部下(女)の出現によってバランスを崩した2人は遂に別れてしまいます。
自分から振ったようなものなのに今ヶ瀬が気になって仕方ない大伴は、何を思ったか突然一人でゲイバーに向かいます。
恐々と、だけど意を決してゲイバーに乗り込んだ大伴ですが、その顔は蒼白です。ガチムチ系の男達から次々に声を掛けられますが、完全無視して人気のないところに逃げ込みます。だいぶ具合が悪そうです。
すると細身のイケメンが「どうしたの?大丈夫?」と心配してくれます。
が、大伴は「ごめんなさい」と言い残して店を後にします。
店を出た大伴は、早足で夜の街を歩きながら涙を流します。
そして次のシーンでは、可愛い部下となんと婚約しているのです。

最初は理解が追いつかなくて、(えっ?何で?色々なんで?!?!?!?)と思ってしまったのですが、後から(ああ、そういうことか)と分かりました。

大伴は、自分はバイなのか否かを調べにゲイバーに赴いたのです。
そして思い知るのです。
自分はあくまで異性愛者だということを。
だけど今ヶ瀬だけは例外で、それはつまり今ヶ瀬を愛してしまっているのだということを。(2人が同棲状態になって暫くした頃に、今ヶ瀬が『心底惚れるって、すべてにおいてその人だけが例外になっちゃうってことなんだ』と大伴に言う場面があります。)

涙を流しながら夜の街を足早に歩く大伴の姿は、「揺れる」を具現化した存在に見えました。ぐらっぐらでした。この葛藤こそが、揺らぎこそが、私が物語を享受する上で見たいものなのです。

最後に

原作の終わり方と異なる終わり方だったので(えっ?ここで終わるの?)と面食らったのですが、総じてなかなか楽しめました。
原作だと大伴が29歳・今ヶ瀬が27歳なので実写版はちょっと老けてるなぁ…と感じてしまったのですが、30代半ばになってからの価値観の揺らぎの方がより一層葛藤が大きくなると思うので、そういった意味ではこのキャスティングもアリだったかと思います。

おっさんずラブ的なものを期待して見にいくと、エッチさが100倍くらい濃いのでびっくらこいてしまうと思います。日活ロマンポルノを見に行くくらいのテンションで、できれば一人で見に行くことをお勧めします。

#窮鼠はチーズの夢を見る #水城せとな #大倉くん #大倉忠義 #成田凌  #BL




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