漫画村について色々思ったことと、これからの価値
漫画村を利用していた大学生が街頭インタビューに顔出しで応じていたことに「頭が悪い」「罪の意識が無いのか」とコメントされたツイートを見かけて色々思ったので書きます。
無知は罪なのか
そのインタビュー画像の中では「漫画村が鯖落ち!管理人に逃亡説も浮上!?」というテロップと共に、実際に海賊版サイトを利用していたという大学生3人がインタビューに応じていました。
それぞれ「いいんじゃないですかね 買わないで読みたかったら」、「悲しい…悲しいみたいな え~どうしようこれから…みたいな」、「困ります 無料で見れたのはありがたかったので」と答えています。
確かに顔を出して堂々と「違法なサイト使ってました!閉鎖?!マジ困るわ~悲しいわ~」というのは恥ずかしい行為だと思います。
しかし、そうやって『恥ずかしい』と思えるのは私自身クリエイターとして作品をつくってきた経験があるからこそ「作品には価値がある」という意識を強く持っているからだと感じています。
つくることを知らない人からすれば世に出てきたコンテンツ(作品)は消耗するものでしかありません。
ご飯をつくったことがある人だけがご飯をつくる大変さを知っているし、ご飯を残されたときの悲しさを知っています。
だからこそ誰かにご飯をつくってもらえた時のありがたさも強く感じるのです。
自分でご飯をつくったことの無い人が、ご飯をつくってもらうありがたさや大変さを知らないことは罪なのでしょうか?
そこで大きく関係してくるのが「自分には無い能力(価値)を持っている」という認識です。
提供するということ
漫画は娯楽です。
娯楽の中にも千差万別あります。
授業中に鉛筆や消しゴムたちを戦わせるのも娯楽ですし、散歩のついでに綺麗な花をケータイのカメラで撮るのも娯楽と言えるでしょう。
それらの娯楽を嗜むためには鉛筆が必要だったり消しゴムが必要だったりケータイが必要だったりするのですが、既に日常の一部となっているものに対して価値やコストを感じづらくなるというのが一般的な人間の感情ではないでしょうか。
その代わりに期間限定で付いてくる鉛筆キャップや、自然に咲いた花などの自分からはコストを消費していないものをとてもありがたがってしまうんですから不思議ですよね。
娯楽にはその「自分からはコストを消費していないもの」という要素がとても大事で、それらからいかにして価値を得られるかが娯楽に対する満足度の指標になってくるのだと思います。
写真を撮ってSNSにアップしていっぱいイイネをもらえる。
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イイネをした人は素敵な写真を見れて華やかな気持ちになる。
かわいいイラストを描いてSNSにアップしていっぱいイイネをもらえる。
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イイネをした人はかわいいイラストが見れて嬉しい気持ちになる。
これには前述した「自分には無い能力(価値)を持っている」という関係性が大きく作用しています。
ここでは例として嗜むためにコストのかからないコンテンツを挙げましたが、それでは実際にコストのかかる漫画や書籍などはどうなのでしょうか?
コストの価値
一般的に漫画を嗜むためにはコストがかかります。
それは1冊500円だったり700円だったりします。
単純な紙と印刷のコストだけで考えれば200ページちょっと刷ったくらいで500円は少々高いかもしれません。
ではどうしてそれらに500円の値段がつけられているのか…なんて話を今さらするのもナンセンスなお話ですが、それだけの人や物事がその1冊の漫画を出すために頑張っているということです。
しかしこれらの話は散々言われていますし、例えこれを言ったところで「ご飯を残すな!今でも地球上のどこかで貧困に陥っている子どもたちは~」と叱るおじさんと一緒です。
大事なのは「なぜコストを払わなければいけないのか」では無く、「なぜそこに価値があるのか」を考える力だと私は思っています。
多くの人が頑張って出した漫画だから買ってね!
そんな売り出し方をしたところで誰の心にも響かないでしょう。
それよりも「その作品を通して得られる体験」にこそ一番の価値があるはずです。
誰が頑張ったとか、どこに拘ったなんて話は大半の人にとってどうでもいいことで、読者はその作品が良いか悪いかでしか判断をしません。
そしてその作品が良かったと感じた時にこう思うでしょう。
「500円分以上の価値があった」と。
体験を通して初めてコストと価値の関係性が生まれるのです。
海賊版サイトの価値
漫画村には多くの体験的価値がありました。
・有料の漫画が無料で読めること
・会員登録など無しにすぐに読めること
・漫画だけでなく週刊誌や写真集も読めること
・場所を取らない
私は最初に漫画村が話題に上がるようになって初めて存在をしった程度なのであまり多くは分かりませんが、少なくとも5分10分程度サイト内を見て回って漫画村にはこれだけの大きな体験的価値があると感じました。
この体験をしてしまったら正直お金を払って漫画を買うという行為がいかに面倒な行為であるか計り知れたものではありません。
現に私自身も以前は紙の漫画本を大量に収集していましたが、場所は取るし何巻まで買ったのか忘れるしで最終的には読むことすら面倒になってすべて売却したという経験があります。
「いや~、やっぱり本は紙じゃないと~」と言う人も多い中で、きっと漫画村を通してはじめて「電子で本を読む」という体験をした人も多数いるのではないかと思います。
これらの話は漫画村に限らずアダルトサイトにも言えることでしょう。
それまではAVはビデオデッキで見るもので、いかにして親の所持しているAVを盗み見るかという体験を踏まえ、やがてネットに触れることでXVideosやYourFileHostに出会い
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> ネットではエロが簡単にタダで見れる! <
‾Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y‾
という意識のまま大人になってしまい、今でも「無料エロ動画まとめ」みたいなサイトを巡回しているという人は多いのではないでしょうか。
漫画業界と同じくらいAV業界もそういった海賊版サイトの被害は大きいでしょう。
AVのタイトルで検索すれば検索結果の3番目くらいには必ずそのビデオがフルでしかも高画質で見れてしまう海賊版サイトが上がってくるのですから。
そういった「タダで簡単にすぐに何でも見れてしまうことが価値である」という認識は間違っていないでしょう。
それがもし法的に認められた正規のルートで漫画や動画がタダに簡単にすぐに何でも見れてしまう状態にあったら、ユーザーは喜んで飛びつくでしょう。
これからのプラットフォーム
各社色々なうたい文句をつけて様々な漫画配信サービスを運営していますが、正直言ってそういうのも本来読者が求めている形ではないでしょう。
昨今では月額制で映画見放題や音楽が聴き放題のサービスが人気ですが、漫画にもそういった月額制の読み放題サービスが必要なのだと思います。
なおかつ、それにはメジャーな作品もすべて読めることが絶対条件です。
なぜなら他の映画見放題や音楽聴き放題もメジャーな作品・アーティストが参加しているからです。
作品ひとつひとつ大切なコンテンツではありますが、それだけのサービスが他にある以上出し惜しみしている時点で例えどんなに既存の漫画配信サービスを頑張ったとしてもユーザーは痺れを切らして違法に走るか見向きもしなくなるかのどちらかでしょう。
「でもお金がかかるんじゃ今まで漫画村で読んでいた人たちは利用してくれないんじゃないの?」と思われるでしょうが、お金を払う人は払うし、払わない人は徹底して払わないので心配するだけ無駄です。
つい先日ケータイ大手3社がSMSを進化させた「+メッセージ」というサービスを発表しましたが、これだって格安SIMブームが起きる前に3社で協力してこのサービスをリリースできていれば大手キャリアを利用する付加価値としてユーザーが格安SIMに流れていくのを少しでも食い止められたかもしれません。
電話番号を教え合って初めて取れるコミュニケーションなんて、LINEを知ってしまった世代は誰も取りたがらないでしょう。
ならばその大手3社はLINEと協力して、より良いメッセージングサービスを作り上げるのが理想だったと思うし、必ずしも新しいプラットフォームを自分たちで一からつくり上げることが正解では無いということも時と場合によってはあります。
書籍であればAmazonの読み放題サービス「Kindle Unlimited」がありますし、何よりKindleの知名度や普及率、そしてプラットフォームとしての完成度も申し分ないでしょう。
また、「マンガ図書館Z」というサービスがあることも教えて頂きました。
こちらは絶版になった漫画や作家さんが自分で投稿した漫画を無料で読めるというサービスになっています。
このサービスの面白い所は広告収益を100%作家さんに還元していたり、マンガ作品と作家さんからのサイン色紙などがもらえる一種のクラウドファンディングのような「作家応援キャンペーン」があるところです。
子どもたちを笑顔にして飯を食べる某有名YouTuberだって動画に広告をつけています。
本来のあるべきところに価値が還元される広告ならばそんなに有益なことはないのではないでしょうか?
これからはタダでコンテンツに触れられることに価値を見出すのではなく、クリエイターに還元することに価値を見出せる時代になることを切に願います。
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