【本当のルーキー祭審査】チーム5 曲コメント

初めましての人は初めまして。
ボカロPをしている導天使と申します。

今回、本当のルーキー祭で審査員を務めることになりました。
別に僕自身、実績も実力もないので
審査員なんてとんでもないって感じなのですが、
たまたま主催者様と関わりがありまして、
審査員の数が足りないと嘆いていたので少しでも力になれればと思い、審査員枠として応募させていただきました。

今回、審査の担当になったのはチーム5の10曲になります。
以下、曲とリンク(ニコニコ動画)を列挙しておきます。どの曲も本当に良いところが詰まっている曲なので、ぜひぜひ聞いてみてください!


(順番は、リスト順。作者は敬称略)
①青に染まれ feat.鏡音リン(作者:ことかげ)

②超絶最強究極ビ→ム feat.鏡音リン(作者:iri;Isro)

③心フィルム(re) feat.京町セイカ(作者:やすらぎ)

④そのまま夢を見続けて feat. IA (作者:つひのclap(ガラクタ))

⑤依存的片思い feat.知声 (作者:芥川)

⑥LOVE SONG feat. Mai (作者:栗村エラ)

⑦Elixir feat. 重音テト (作者:たかやま はるき)

⑧rabid dog feat.可不 (作者:ほたか)

⑨ロックンロールは死んだんだ! feat. 結月ゆかり (作者:にんじん)

⑩君と翔ける feat. 重音テト (作者:なん)

以下、それぞれの曲についてよかったところ等述べていきます。
その前に、注意事項と審査基準についても示しておきます。
(関係ない人は飛ばしてください)

<注意事項>
・この部分がダメだとかそういう話はしません。
・正直、改善点どこやって曲が多いんですが、もしそういうのを求めているというのがあれば、作者本人からの申し出に限り個人的に対応します。
・恥ずかしながら耳コピをほとんどやってきたことのない人間なので、色々間違えているかもしれません。記述に間違いなどありましたら、画面の奥で笑い話にするか、あるいはこっそりとでも教えていただければと思います。
・絵や動画、あとは歌詞についてはほとんど触れていません。
(絵や動画についてはマジでよく知らないのでコメントしようにもコメントできない。歌詞は概要欄に書いてくださっている人もいれば書いていない人もいるので辿るのが面倒くさいので一律で歌詞に関しては評価対象にはしていないです。ただ、アクセントや韻踏みなどそういうところで部分的な評価はしているかもしれません)
・審査結果についてはこちらからは公表しません。

<審査基準>
・初見で直感的に良いと思えるか

以上、基本的にはこれだけです。
本当になんと適当な審査なんでしょうか。主催者様に後で怒られるかもしれないんですが、審査基準設けてないとのことだったので、自分独自の審査基準はこうなります。

視聴環境は、以下の通りです。
・ボカコレアプリを使用
・審査担当曲をリスインして、シャッフル再生
・1000円ほどの有線イヤホン

ボカコレアプリ使用ということは、つまり視覚で入ってくる情報が「サムネ・作者名・曲名・シンガー」だけになります。
なので、動画・絵に関しては【評価の対象外】となります。
同様に歌詞についても【ほぼ評価の対象外】となります。

シャッフル再生する理由は、どうしても最初に聴く曲が評価の基準になってしまうからです。なので、聴く順番にはランダム性を持たせるようにしました。
今回はあくまで相対評価なので、最初に聴いた曲を「60点」で置いて、そこからどうかという形で判定しました。
なので、仮に最初に聴いた曲が一番良いと思えるならば、最高点は「60点」になります。

リスナー視点に立ったときに、モニターヘッドホンで聴く人はいないので、自分が普段使っているイヤホンが視聴環境に選ばれました。
無線イヤホン使わない人間なのですみません。結構、音質は悪めです。

つまり、リスナーの視点に立って、いかにその環境にも適応した曲を作れるかがポイントになります。
また、きわめて主観的な判断にはなってしまうのですが、特に自分の重視するポイントはメロディです。
メロディが良いなと思えばそれだけで自然と良いと捉えてしまうという単純な人間なのでご了承ください。

したがって、決して曲のクオリティがそのまま順位を表しているわけではないということにご留意いただければと思います。
また、こうした順位付けするのは慣れていないというのはあるのですが、順位が低いからといって決してダメな曲ではないということもご留意いただければと思います。その証拠は、これから一曲一曲に対して自分のできる精いっぱいのコメントを書いていくので、それでそう感じてもらえればと思います。

他には、
・曲の長さは審査基準に含んでいません
・シンガーの好みは審査基準に含んでいません→でも無意識なバイアスはあるかも

もし、審査基準について何か不明点あれば申し出てもらえればと思います。とはいえ、審査基準自体がかなり主観的なので、ちゃんと納得する形でお答えできるかは分かりません。

すみません、長くなりました。
以下に1曲ずつ示していきます。


①青に染まれ feat.鏡音リン (作者:ことかげ)

まず、全体を通してオケがすごく綺麗ですね。
綺麗って何が綺麗なんだと言われてもうまく言語化できないのですが。
最初の奥行きのあるピアノがそう感じさせてくれるのでしょうか。

次に、こちらも全体を通してなのですが、リズムが独特だなと感じました。一作目の「眺め星」も少し崩したようなリズムがありましたが、それ以上にリズムを崩している部分が多いなと感じました。
特に印象的だったのは、最初の「積み重ねた」の「た」を「月日がさ」の部分に先送りにしている部分ですね。
例えば、「かさ」をひとまとまりにすることもできたと思うのですが、敢えてですかね。「重ね」の部分が1音1拍になるので、その部分を強調する効果もあると思います。

「青色に染まっていく」の部分からFXがクレッシェンドしていって、盛り上がってイントロに繋がっていくという流れがすごく綺麗です

独特なリズムの中でも曲全体がしっかりと成立しているのは、基本となるドラムのリズムが四つ打ちで安定しているからだと思います。

あと、イントロのベル系の音がすごく綺麗で好きですね。曲の感じと合っていると思いました。イントロのリードを担っているんでしょうか、シンセ系の音で、コードの隙間に入る「レミレドラ」の音も良いですね。

では、Aメロ。
「枯れてしまった・・・ばいばい」の部分は、少し明るめな長調な感じ。
「存在が曖昧な言葉足らず」の部分は、Ⅵ終止の短調の感じと、Aメロの中での雰囲気の対比が良いですね。
「ずれた鏡を」の後にベースを少し遮るかのような一瞬の効果音(シェイクみたいな?)が右から聞こえてきました。Aメロを2回繰り返すと思うんですが、そういう細かいところで差別化しようという工夫があるのかなと思いました。
Aメロ1ループ目の「ばいばい」と2ループ目の「バイバイ」にはどんな意図があるのでしょうか。そこはボカロ考察班に任せることにしましょう。

Bメロ。
サビに向けてベースの厚みが増していって、FXも入ってサビへ向かっていく。サビへの繋ぎとしての役割をしっかりと果たしていると思いました。
サビの「透明な笑顔の先」っていうのが、メロディも良いし、サビ前からの繋がりという観点からも、開放感というか、サビだなというのを感じさせてくれます。

サビのオケは特に、ベルの音がすごく良い味出しているなと思いまして、サビの明るさをうまく演出しているなと思います。
全体的に明るい感じの曲だと思いますが、最後の「揺れる青だ」のメロ6度跳躍&Ⅵ終止が、盛り上がりつつも切ない感じも持ち合わせるという形で終わっていて、終わり方にもエモさを感じました。

<作者について>
ことかげさん。今回は、投稿お疲れ様でした。
これが二作目ということですが、本当に二作目!?って思ってます。
ことかげさんの作品はまだ2分以内の曲しか出せていないと思いますが、ぜひ二番以降も含めたような長い曲にも挑戦していってほしいなと思います
こういう曲って、オケも聴かせるのが醍醐味だと思うので、そのためには間奏の時間長く取る必要があるので、二番も加えた構成にするとさらに面白くなりそうだなと感じています。

二作品とも鏡音リンに歌わせていますが、リンちゃんの力強さと綺麗さ、それをうまいバランスで組み合わせているなと感じます。これからも鏡音リン主体で曲を作っていくのでしょうか。

概要欄に「少しでも好きだと思えてもらえたら嬉しいです」との記載がありましたが、謙虚な人なんだなと感じました。
それ自体は本当に素晴らしいことですが、今後も曲を投稿したり、あるいは界隈と繋がったりするとその謙虚さが逆に邪魔に感じられてしまうことがあるかもしれません。
でも、謙虚だからこそ「1つの貰えたいいね」に価値を感じることができたり、感謝の気持ちを持つことができたりすると思います。聴いて下さる一人ひとり、反応してくださる一人ひとりを大切にしながら、これからも自分の想いを紡いでいって欲しいと思います。私も頑張ります。

②超絶最強究極ビ→ム feat. 鏡音リン (作者:iri;Isro)

ありきたりに思える人生も・・・

すごくいいこと書いてあるなと思ったんですが、もうMVは真剣に読まない方がいいということを学ばせていただきました。

さて、最初の黒背景部分のシンセベルが綺麗ですね。
そして、ダブルテンポになってシンセでイントロメロディを復唱。すごく疾走感を感じます。
その疾走感のままAメロへ。
ただ、Aメロに向かう前で一度盛り上げた後に、音階下降して少しリセットした感じでAメロに入ります。盛り上げてAメロというような単純な形じゃなくて、そこをワンクッション挟んでAメロに移行する流れが、メリハリがあって良いですね。

Aメロ。
歌詞もその疾走感のあるリズムに乗ったまま流れるように進んでいきます。
Aメロで同じメロディを繰り返すわけですが、「けれども」の部分で一変化つけて、「嘘だった」という変化したメロディへ繋げるためのトリガーにしています。「けれども」と(嘘)「だったって」のメロディの類似性もみられます。
Aメロ2周目の2ループ目も、また1周目とは違った変化(「ビームが撃てたら・・・」)になっていて、Aメロの細かいところでも工夫があるなと感じました。

Bメロは、スネア助走で丸々取っている感じでしたが、助走してそのまますぐサビではなく、Bメロ終わりに1小節分空けてシンセのコード弾きで上昇している雰囲気を作っています。
恐らく+1転調の準備ですかね?転調もいきなり転調じゃなくて、そういう準備があるのは、サビの部分にすっと入れるので良いなと思います。

サビの部分だと、「面倒な」のメロディとリズムが好きですね。サビ入ってからも、流れるようなメロディが続く中で、「面倒な」のところでうまくリズムの抑揚をつけているように感じます。
「ババッバッバッババン!」のリズムも良いですね。それで終わるのかなと思ったら、そのあとに「限界寸前放心ロード」の小節頭にアクセントが来るゾーンに突入して、その流れで来るのかと思いました。小節頭のアクセントもすごくいいですね。

A'メロですかね?2番のAメロとBメロの間に入るような部分。
「願ってたってだって」のリズム、「そこに意味は無いかな」のリズム、それぞれ違うリズムだけどクセになるリズムで、それを一緒にして詰め込んでるのが印象的でした。

シンセソロ、楽譜あるの非常に助かりました。
(キー合ってるか不安だったので、確認できてよかった)
ただ、あれを弾くのは簡単じゃないです。誰だ、簡単って言ってる奴は。

落ちサビからラスサビに+1転調も良いですね。今回の審査担当曲において+1転調の曲そんなに多くなかったので、新鮮な気持ちもありつつ。でも、やっぱり盛り上げ方としては最高ですね。
ラスサビですが、クライマックスに近づくにつれて、ハット?の主張も強くなっていって、拍の力強さをより感じられました。

<作者について>
作者のiri;Isroさんですが、以前はカバー曲を出していて、ボカロでいったら恐らく9作目、
10作目あたりでしょうか。投稿お疲れ様でした。
イリアスロさんの作品も聴かせてもらいました。本当にリン愛を感じる方だなという印象で、これからも自分の想いをリンに託して紡いでいってほしいなと思います。
1作目と2作目が恐らくボカコレ冬の投稿作品(「80億プロタゴニスト」、「Jesus, no thinking」なのだと思うのですが、聞いて直感で、この方、「才能」で悩んでいた節があったんじゃないかなと感じました。間違っていたらスミマセン。
でも、5作目の「穿て最低人生destiny」でたしか「never give up」的なことを表現していたと思うのですが、そこから一気に解像度が上がっていったような感じがしました。
時間の都合もあってちゃんと聴けてないのですが、1作目~4作目と、6作目以降では、言葉では表し切れないけれども、すごい変化を感じました。5作目を通して、何かの解答を得たんじゃないかなと勝手に思ったり。
MVに楽譜載せるあたり、凡人にはやらないことなので、これからもイリアスロさんの楽曲には期待したいと思います。本当にありがとうございました。

③心フィルム(re) feat. 京町セイカ (作者:やすらぎ)

イントロから、もう音の広がりが綺麗ですごく癒されますね。
正直、イントロだけずっと聴いててもいいくらい。

Aメロ反復のときに、オケで流れるピアノのアルペジオが好きです。うまく音と音の隙間に入れ込んで、目立たないくらいにうまく主張しています。

Bメロになって、さらに音の密度が濃くなっていって、段階的にサビに向けて盛り上げの演出。
「春夏秋冬と」のところからハモリが入ってきて、またバックで流れる高音のピアノが盛り上げつつも、その上でより華麗な印象を強めています。

サビ入りのオケですが、1拍ごとにピアノで和音を重ねていっているのがすごく好きです。サビならではの壮大な感じと華麗な感じをうまく両立させています。
「軋むペダル」の部分もリズムも好きです。伸ばすところとのバランスもサビ内でよく取れているなと思います。

サビ終わりの間奏のピアノもすごく綺麗だなと思ったら、「ナナイロ」が来ました。「ナナイロ」の部分で鳴っていたピアノの余韻が「街並みの・・・」のところまで残っているのが良いですね。
また、「ナナイロ」がもう一度出てくると思いますが、うまくラスサビへとつなげる役割を果たしています。

ラスサビに「ただ、青」で音数を減らすことによって、伸びやかな感じが表現されていていいですね。
最後の「心フィルム」の「ム」をⅦにするというのが、音の使い方としてもすごく良いなと感じました。
後奏もピアノが綺麗でした。やっぱピアノ曲良いですね。

<作者について>
やすらぎさん、久々の投稿ということで、投稿お疲れ様でした。
名前に恥じないやすらぎを与えてくださりありがとうございます。
本作は無色透名祭のリメイク版ということのようです。ちなみに、無色透「名」警察にはご注意を。
無色透名祭がいつだったのか覚えてないのですが、それを除いて考えても投稿したのがボカコレ2023夏ルーキー以来ということで、本当に久々の投稿だったのかなと思います。
全然ブランクを感じさせないというか、「最近あまり作曲できてなかったので」という文言を見て「え?」って思いました。良い意味で。
1作目?の「晩夏に告げる」聴いた時点で、「あ、音楽やってた人だなあ」と思いました。1作目からクオリティが高い。
ただ、1~3作目までは「DTM初心者」タグをつけていて、本人も「初心者」のつもりでやっていたと思いますが、4作目の「モノクロ夜空」からそのタグが消えていて、たしかに4作目以降でさらにクオリティが上がっている感じがしました。
その4作目もピアノ主体の曲で、4作目以降のやすらぎさんの楽曲にも影響を与えた部分があったんだろうなと推測できます。
最初は、きりたんやめろうに歌わせていることが多かったのですが、イベントに初参加した「金曜日のハナウタ」からmai・京町セイカが登場。以降は、京町セイカをメインとして出していて、10作目の「八月の暮れに私はまた夢を捨てた」で男女デュエットとして、ryoが登場しています。
また、本当のルーキー祭のもう1曲として、「茜空」という曲も出ています。
個人的には、イベント初参加した「金曜日のハナウタ」がすごく好きです。申し訳ないのですが、全部は聴けてないんですけど。
以降は、ボカコレ・ボカロックなどにも参加していて、これからもイベントで見かけるかもしれませんね。そのときはまたよろしくお願いします。

④そのまま夢を見続けて feat.IA (作者:つひのclap)

イントロの「ドドドドド・・・」のリズムが良いなと思いました。

恐らくイントロはCメジャーだと思うのですが、AメロでFメジャーに転調ですかね?
Aメロの「無くしたのかな」と「蓋をしていた」のところは、同じAメロの反復になりますが、若干メロディ変えてるのが見られました。多分、歌詞のアクセントとかを踏まえてメロディを細かに調整している感じなのかなと思います。

Bメロの「もしあなた」の部分のリズムが良いですね。
Aメロのリズムが1音1拍とシンプルな感じのリズムだったので、Bメロでいい感じにリズムの変化をつけていると思います。

頭シンバルから始まるサビと、ドラムの輪郭がはっきりとし始めて、サビ以外とサビとの対比がうまくできています。
「間違ってないよ」「そのままでいいよ」の部分のリズムが好きです。間に挟まるシンバルもいい味を出しています。

間奏では、音階の上昇と下降を繰り返していて、ドラムもキックの音をうまく使っていますね。

2番では別メロディを使って、音を詰め込んでいます。なのでテンポ感がありますが、「ブレないで」「迷わず」のところで、またゆったりとした感じに戻っています。そのあとにくる「まだ勝負の途中」のところのリズムとメロディが好きですね。その部分だけ少しオケも余白を持たせる感じで。歌詞を聴かせるためのメリハリを感じました。

サビ前メロに合流して、そのままサビに。
「他人に(もっと)優しく」の部分も文字を詰め込んでいて、1サビとの変化を見せています。
そして、サビをもう一度繰り返し。「間違ってないよ」をもう一度聞けるのもいいですね。

アウトロのメロディ「ミファラソミファーミレドー」好きですね。

<作者について>
つひのclapさんですが、ガラクタさんとしいたけさんが交互に曲を出していってるようです。本作はガラクタさんによるものです。投稿お疲れ様でした。
インスト曲もあげていて、そっちは聴けてなくて申し訳ないんですが、ボカロ曲でいうとボカコレ2024冬ルーキーが初出で、「可惜夜」と「スピードギブアップ」、「インソムニア ウォーカー」と三作品も出しています。正直、僕なら一作品で十分おなかいっぱいです。でも、二人で交互に作っているからこそ成し得る技ですね。
ガラクタさんは、IAを使っていて、しいたけさんは鏡音リンを使っています。
二人の曲を聴いて、ガラクタさんはどちらかというと現実志向の感じの曲で、つらい現実をありのままに綴っている印象があります。
しいたけさんは、どちらかというと非現実的な感じ、なんか言語化が難しいんですが、例えば5作目の「起死回生」とかですかね。ただ、最近の曲「i my mind」ではモロ現実的なことを率直に綴っているので、明確な線引きは難しいかもしれません。
ただ、結構ガラクタさんが今までネガティブな感じで曲を書いていたのに対して、本作ではすごくポジティブな言葉をひたすらぶつけていくようなそんな感じになったのが意外でした。何か心境の変化などあったのでしょうか。
社会人ならではという視点を生かして、これからもさらに多くの曲を書き綴っていってほしいなと思います。ありがとうございました。

⑤依存的片思い feat.可不 (作者:芥川)

イントロのメロディが好きですね。聴き取りやすいです。
シンプルなメロディではありますが、メロディ繰り返し4回目で高い方のレからシにいく変化をつけています。良いですね。

Aメロ。
「注意をするけど」で終わり少し音が下がってから、高音へのメロディの跳躍。メロディの上下の移動をうまく生かしたような箇所が何か所かみられます。
そして、高音への跳躍に移った際にそこからハモリを入れています。変化をうまく生かしているなという感じです。
「混ざる」→「片付かない」も1オクぐらいの音の下降ですかね?

Bメロの三拍子風のリズム感が好きです。
サビ前のパート。B'メロの表記で良いんですかね?
「(ない)だろうね」→「ずるい」まで、1オク以上音を下降させて、そこからサビへの準備に入っていきます。
サビ前部分で音を下げておいたからこそ、本サビの「ずるい」の部分がすごく生かされてるなと感じました。このサビ前部分入れるの、曲の展開として工夫されてるなと思いました。

2番のAメロ、右側から聞こえるパッド系の音が良いですね。
「曖昧な情緒、利己的な少女」と韻を踏んで流れるようにリズムを刻んだあとでの「ただ眠りたい」と間を空けるリズムが好きですね。

2サビ「浮かばないな」から間奏にかけて少しリズムずらす感じが良いですね。
「悪い、悪い事」のサビ前パートの部分で、ダイナミックレンジを活かした抑揚も良いですね。そこからの+1転調もすごく盛り上がります。
また、意図的なのか分からないですが、転調によって最後が「ド」で終わるのが気持ちいいですね。後奏を用意しなかったのも、この「ド」で終わる余韻を噛みしめさせてくれる一因になっていると思います。

<作者について>
芥川さん、投稿お疲れ様でした。
同時投稿の「単純明快恋愛商店街」の方が伸びているようで、そちらも聴かせていただきましたが、和を感じられるすごく良い曲でした。でも、この曲もそれに負けず劣らずの凄く良い曲だったと思います。やっぱりシンプルな構成いいですよね。
セルフカバーも出しているので、おそらくボカロPやる前も音楽活動はされていた方なのだと思います。
1作目は「ズレる」でボカコレ2023夏top100に参加。いきなり、top100参戦してるのが凄いなと思いますが。
2作目は「文学少女の秘密」です。これはボカロック参加曲になります。知声を使い始めてから、すごく芥川さんの作風にフィットするボカロ音声が見つかったという感覚なんじゃないでしょうか。本曲も、すごく知声の良さを存分に生かせていると思います。
たしか「単純明快恋愛商店街」の方はセルフカバーが出ていたと思います。確かにそっちは歌いやすそうですもんね。「依存的片思い」はメロディの跳躍が激しいので歌うのは難しそうです。「ずるい」の部分で声が死にそう。
歌える人って曲作るの上手いんですよね。私も歌のセンスが欲しかった。
本当にありがとうございました。

⑥ LOVE SONG feat. Mai (栗村エラ)

Maiの調声が工夫されているなと感じました。掠れた感じも再現できるんですね。

はじめのピアノの静けさがいいですね。
「君を想い出す」の後のピアノのメロディに「ド#」が浮遊感や不安定感を醸し出しています。
「なぜ?」のあと、先述のメロディ→アルペジオ、そしてストリングスが入ってきます。
黒背景の部分は、シンプルな音の響きで胸の中に伝わってきますね。

そこから、ギターが突入してくるというのは全くの予想外でした。
曲の展開として、すごくインパクトのある入りですね。
「優しい」の部分のメロディがMaiの高音活かしているなと思いました。
あと、「歌ってあげる」のところでⅠ終止になっているのが良いなと思いました。そもそもサビがⅡ始まりであることや、どこか不安定感があった中で、最後は安定した形で終わっていて気持ち良かったです。

落ちサビの部分のピアノの音が良いですね。
そして、そこからサビで再びギターの音が入ってきます。そのメリハリのところも十分に表現できています。

ラスサビ終わりの後奏でストリングスのアルペジオを通して終わるのが、壮大な感じがあってよかったです。

<作者について>
栗村エラさん、投稿お疲れ様でした。
これまでに15作ほど出していまして、架空アニソン祭から2024の主要投稿祭ほとんど全てに参加されている強者です。
これまでの実績をまとめますと、架空アニソン祭・歌詞統一祭・キラハピ・ボカロック・裏ボカロック・花隈千冬投稿祭・ノーランカー祭・ホラー投稿祭・ボカロストリングス投稿祭・まかぎ祭・動物ソング・ピコピコ・小室と、私以上に投稿祭に参加している人あまり見かけないので、純粋に凄いなと思います。
そして、投稿祭というのは制限があるわけで、ロックやポップ、バラード、それぞれの要求に幅広く合わせられるのが強みだと思います。
その上で、ノーランカー祭及び今回の本当のルーキー祭というのは、言ってしまえば制限のない投稿祭となります。
だからこそ、ノーランカー祭で採用した「枯れぬ花」や本作には、本当に伝えたい想いが詰まっているんじゃないかなと思います。

作者コメントを掲載させていただきます。(概要欄より)

私は声が出せないのでこの曲は私の願望であり
憧れみたいな感じです
少し声にザラつきを出したのは
声が出たら多分ザラザラした声だろうなと思ったからです
心を込めて作ったので優しい気持ちで聴いて頂けたら
幸いです٩( 'ω' )و

ということで、掠れた感じのMaiのその調声にはこのような想いがあったわけですね。
今までの投稿祭では、Maiを自身の代替として完全には表現できていなかった部分があると思いますが、本作ではその想いをこの曲に託しています。
改めてボカロがあって良かったなと思いましたし、こうした想い(強さ大小さまざまあるとは思いますが)を持って皆が曲をあげているということを改めて気づかせてくれる一曲でした。
これまでの使用ボカロはMaiと花隈千冬ですが、Maiに拘るのもそうした強い想い所以なのでしょうね。
本当にありがとうございました。

⑦ Elixir feat. 重音テト (作者:たかやま はるき)

まずギターの音がカッコいいです。
イントロで、音が徐々に上昇していく感じがいいですね。

Aメロで3連続で似たような旋律とリズムの中で、7小節目でリズムをスタッカート風にしていくとともに、8小節で終わらせずに、「ように」からA'メロへと繋げていくところに工夫が見られるなと感じました。
でも、しっかりと「ようだった」でAメロとBメロとの区切りをはっきりさせているのもすごく良いなと思いました。うやむやな感じでBメロに繋げないところにメリハリを感じます。

「明滅して」以降の畳みかけ→サビへの綺麗な流れが良いですね。
「またねって」「笑って」の部分、転調挟んでる?音楽理論よくわからないんで、転調といえるのか分からないんですが、そこの部分での変化も感じました。多分、サビは調変わってませんよね。

サビ。
「きっとこの先幸せだよ。」の部分で、メロディに追従する形でベースラインが入ってくるのがいいですね。
あと、「幸せだよ。」で一度区切った後に、「なんて」を挟んでメロディを跳躍させるためのワンクッションにしてるのも良いですね。
「くだらない」の後にコードが半音上がっているのも良いですね。そして、そこから最後のフレーズを繰り返して、「Elixir」で締めるという、気持ち良い終わり方ですね。

<作者について>
たかやま はるきさん。投稿お疲れ様でした。
動画の概要欄を見まして、「初投稿です。」の文言。「え?」と思いました。
初投稿にしては完成されてすぎやしないか、と。
ちなみに、本投稿祭に「夏の思い出」というアコギ主体の曲も出しています。ぜひそちらも聴いていってください。
本人はギターボーカルを目指していたorいるそうで、だからこそやっぱりギターの曲強いなあと思いました。
これからが更に楽しみです。カッコいいサウンドをさらに決めていってください。ありがとうございました。

⑧ rabid dog feat. 可不 (作者:ほたか)

ベースソロから始まるイントロがかっこいいです。
休符の使い方が上手く、空白をうまく使えています。
メロディに追従する形のギター、パーカッション。

最初のAメロ後の間奏の一瞬止まるところがありましたが、全然4つ打ちで4小節分やり過ごすのもありな中で、そうしたずらす工夫が見えました。
で、それが裏拍移行への布石になっているんだなと感じました。
それで、そのままA'メロで裏拍移行。ギターは追従、パーカッションが裏拍をとってAメロの隙間を埋めている格好ですね。表拍と裏拍を変える形での差別化は面白いなと思いました。

Aメロが「ミ、ファ#、ソ」のみの使用だったわけですが、Bメロ頭で「ラ」を使っているところで、Bメロへの変化が分かりやすくなっています。
「泣ける」の後の小節で表拍に戻った後、「焦る」の後で即「ゆらり」の部分で再び裏拍に戻るという拍変化の付け方。そんな拍変更の仕方があるんだと思いました。

サビの音程が徐々に下がっていく感じが良いですね。コードとも若干ずれる感じが不気味さをいい感じに演出しています。
特に、「いい子に飽きた」のメロディ、ハモリが好きです。
「ワレコソワ」狗の終わり方がカッコいいですね。

2A→「シド×8シ」のところから落ちサビに展開していくのは少し意外な感じでした。
「気が触れる 早く」の部分のリズムが良いですね。
「愛してますか」のメロ6度跳躍も良いです。全体的にメロの跳躍が少ない曲なので、その中で最後に跳躍出しているのは良いですね。しっかりとラスサビも変化をつけていて良かったです。

<作者について>
ほたかさん。投稿お疲れ様でした。
1作目?が「スワンソング」ですかね。はじめはきりたんに歌わせていて、可不の使用は前作の「つら」からになります。
オケの不穏な感じは1作目の「スワンソング」から出ていて、今回のような歌詞の構成の仕方とかは2作目の「primal sensation」でなんとなく面影を感じます。
同じ可不の使用というのもあって、「つら」が本作に雰囲気としては近い感じになっています。
本当のルーキー祭に参加されている方への曲のコメントを一人ひとり個別に返しているのをX(旧Twitter)上で拝見しまして、そのコメントの語彙力の高さに震えています。なので、私はもう黙っておきます。
本当にありがとうございました。

⑨ ロックンロールは死んだんだ! feat.結月ゆかり (作者:にんじん)

ギターの音が気持ちいいですね。重なり方が綺麗です。
Aメロ入る前に一旦音が消えるのが引き込まれる感じがして良いですね。

Aメロ全体通してリズム感いいですね。

Bメロでリズムや雰囲気が変わるのがいいですね。「ずっと変わる」という歌詞にも通じます。
四拍子で取ろうとすると、なんか変な感じがするんですが、「一つだけ」で合流するのが気持ちいいですね。変拍子なんですかね。変拍子の感覚が無い人なので分からないんですが。

サビが同じフレーズの繰り返しで中毒性があります。メロディ4音しか使っていないので、歌いやすいし理解しやすいので頭に入ってきやすいですね。
また同じフレーズの合間にも「レミファ#ミレ」を挟んできて、サビのメロディを刷り込んできます。私もその被害者です。別にロックンロールのことなんか考えたくないのに。

Cメロ。
「死んだんだ」のディレイを残すのも良いですね。
テンポを落とす感じのリズムがエモさを感じます。
そして、サビ前の「ロッ/クン/ロール」で分割してから、すぐフィル入れてサビというのも面白いラスサビへの入り方ですね。
2サビのリードギターのメロディがカッコいいですね。

最後に、「きっと新しい何かが生まれるんだ」というところで、ロックンロールは死んだんだ!だけで終わらせないのが良いですね。でも、それに対しての答えはまだ出ていない。

<作者について>
にんじんさん、投稿お疲れ様でした。
1作目は「Answer」という曲で、人生をテーマにしたバラードです。全体を通して「生き方」をテーマにしているんでしょうか。1作目の「Answer」が結局、答えが出ないまま終わるような形になっていて。本作の、「きっと新しい何かが生まれるんだ」というのは、一つの希望になっているんじゃないかと思い、1作目のような絶望感との一つの対比になっているんじゃないかなと思いました。
と、真面目に考察していましたが、概要欄より

「ロックンロールは死んだんだ!」と叫んでた酔っぱらいのおっさんからインスピレーションを受けて曲を作りました

とのことなので、あまり関係なさそうですね。
審査の関係上、何回も繰り返して曲聴かないといけないので、私が立派な被害者の一人です()
にんじんさんの曲、すごくキャッチ―なメロディなんですけど、その中に暗さがあって、音が下がる傾向にあるのかな。というなんとなくの解釈なのですが。
また、にんじんさんは全ての作品で「結月ゆかり」を使用しています。結月ゆかりオンリーで使用する人は珍しいなと思うので、すごく良いなと思います。私も結月ゆかりの声好きです。
本当にありがとうございました。

⑩君と翔ける feat. 重音テト (作者:なん)

イントロのストリングスが綺麗でバランスも良いです。

イントロからAメロまでの変化が上がっていく感じがあって、高揚感を感じます。その上昇の過程のコードがどうなってるのかはよくわからないので考えないことにしました。
「負けないって思えた」のブルーノート良いですね。
ピアノの音も綺麗でしっかりしていて安定感があります。

サビ前に、Aメロ前の上昇をもう一度挟んでいって、+8の転調ですかね?
さっきも言いましたが、どういう過程でどう転調に至ってるのかよく分からないのでそこについては触れませんが、上昇する過程で転調に繋げるのはすごく良いなと思います。

初サビの部分の「待ってる」とサビの部分の「待ってる」を比べた際に、後者の方が引き延ばしている感じがあってうまく引き付けています。

「輝き続けよう」のあとのC#dimですかね?あの半音上昇が良い味出してますね。終わり方も非常にきれいです。

<作者について>
なんさん、投稿お疲れ様でした。
初投稿とは思えないクオリティです。
「作曲歴とても浅い」って一体どのくらいなのか気になりますが。これからがさらに本当に楽しみですね。
どうしても閉塞的な部分があるので、こうしたイベントとかじゃないとなかなか曲が伸びないみたいないことはあるのですが、数字なんて気にせずにこれからも自分の想いをそのまま、ありのままに伝えていって欲しいと思います。
本当にありがとうございました。

審査してみての感想

本当に投稿お疲れ様でした。
自分、今回審査員してみて思ったことは、マジで自分自身が一番勉強になったなということです。それはどういうことかというと、

①耳コピの練習になった
②インプットする機会になった

ということで、今まで耳コピとかちゃんとやったことない人間だったので、今回の審査曲のメロディの主要な部分だけはしっかりと耳コピ練習しました。精度はあってるか微妙ですが。
一応、ピアノやってたのでそれなりに音感はあるつもりなんですが、やっぱりキーの特定とか難しかったです。なんかおかしいぐらいに転調する曲にあたらなくてよかったです。
そして、同じく曲分析の時間も最近は全然取れていなくて、というか私自身インプットしようみたいになることがあまりなくて、今回無理やり曲分析の時間を作ることができたのでよかったです。

あと、普通に自分よりも曲作り上手いの何なんですか(誉め言葉)。
もっと頑張らなきゃなと思いました。

おわりに

本当のルーキー祭りを企画してくださったsynNightPさん、そして投稿してくださった皆さん本当にありがとうございました。

感想コメント見てもらえれば分かると思うんですが、本当に語彙力・そして音楽知識が乏しくて申し訳ないです。

本当にそこの質の部分は申し訳ないなという想いでいっぱいなのですが、だからこそちゃんと時間を掛けてじっくりと聴こうとの思いで今回の審査に臨ませていただきました。
それぞれの過去作についても、全部は聴けてなくてサビだけとかで申し訳ないんですが、目を通させてもらいました。
少しでもその姿勢というか、態度を感じていただいてお許しいただければと思います。

10000字以上も書いているので、誤字脱字等さまざまあると思います。正直見返すのめんどいので見返しません。何かあればコメントかもしくはDM等で直接言っていただければと思います。悪意は0%ですので、何卒よろしくお願いします。

DTMって結構挫折率が高いという話をよく聴きます。
出す作品の質がどうあれ、自分の作品として出せた時点で十分立派なボカロPだと思います。作者についての紹介欄に、初投稿の方については今後の活躍の期待を込めたメッセージを添えました。
「上から目線で何なん」って思うかもしれないですが、そうした気持ちはなく、純粋に活躍をお祈りしています。

すごく有意義な投稿祭になったと思います。本当にありがとうございました。

導天使

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