政治家への入り口?『支部長』って何?
昨日は、ジェラルド・L・カーティスの名著『代議士の誕生』について書いた。そこでは、どのように国会議員になるかということを描いていたが、その中でも描かれていた「支部長」というポジションをご存知だろうか。
実は、支部長は政党の公認候補(特に小選挙区)の“なりかけ”みたいな存在らしい。(公認候補ではないというのがミソ)今回はこの「支部長」について、整理してみる。
支部長ってなに?
「支部長」とは、端的に言うと「次の衆議院選挙で党公認候補になる可能性が高い人」が、その選挙区を預かっている状態を指す。つまり、「いざ選挙だ!」となったときに、自民党なら自民党の候補者として出馬する準備をし
ている人が支部長ということ。
自民党などの大きな政党ではほぼすべての選挙区に支部長を任命している。各小選挙区で現役の国会議員がいればその人が原則的には支部長も兼ねるが、もちろんバッジがついていない支部長という肩書だけの人もいる。
なぜそんな肩書きがあるかというと、公募なり推薦なりで「この選挙区はあなたに任せます」という認定を党がするわけだ。だけど、選挙はまだ先だし、公示前なので「候補」まではいかない。その候補予定者が、党支部のトップ、すなわち“支部長”としてその地域に根を張ることになる。普段は地元を回ったり、党員を増やしたり、地域の声を拾ったりして、次の選挙に向けた基盤づくりに専念する。
支部長のなり方ってどうするの?
支部長のなり方は自民党だと、「小選挙区支部長公募」という仕組みがあり、一定期間に募集して、その選考に受かれば「あなたは〇〇区の支部長です」って形になる。他の党でも、ある程度似たような流れはあるが、党ごとにルールが微妙に違う。
たとえば、自民党の場合、世襲議員や有力者が優先されることが多いけれど、最近は「新しい力」を入れようと公募枠を増やしたりしている。公募の実際の選考を行うのは、自民党の本部ではなく、各都道府県の自民党支部であるため、公募が出るかどうかは全国47都道府県の自民党支部のホームページをチェックする必要がある。例えば2024年12月現在は埼玉県連で公募を実施している
公募ごとに出す申請書や履歴書、論文のフォーマットが違うが上記を例にとると以下が必要だ。
申請書の中に志望動機や政治家になってやりたいことなどを書く欄があり、レポートはレポートで別で書く。だいたいの公募が自筆必須。いまどきはデータ提出が多いが、手書きで郵送というロックなスタイルだ。
さて、応募書類を出した後は数人程度に絞ってあとは面接をするらしい。面接までたどり着いたことがないのでどんな内容かはわからない。ぜひとも今後ちゃんと面接にたどり着きたいものだ。ただ、面接官は国政議員だけでなく、地元の地方議員もなるらしい。それも踏まえた面接での応答が必要なのではないかと推察される。
維新や立憲民主などでも公募はあるが、候補者選びは党の方針や地域事情によってまちまち。支部長になるには、要は党内選考を突破し、「次の衆議院選挙ではこの人で行くぞ」と党に思わせることが必須だ。
支部長がやることって何?
支部長は、まだ「候補」じゃないけど「ほぼ候補予定者」みたいなものなので、活動内容は候補者とあまり変わらない。地元有権者とのコミュニケーション、後援会組織の整備、党員拡大、政策提言、講演やイベント参加など、ひたすらに駅頭あいさつ、政治活動期間中は戸別訪問など、次の選挙戦で勝つための土台づくりをする。
支部長でいる期間は比較的長くなることもあり、実質的な顔として地域に溶け込む。選挙が近づけば、「公認候補」に格上げされ、晴れて「〇〇党公認 衆議院△区候補〇〇〇〇」という肩書きで表舞台に立つというわけだ。逆にいうと、実際の公認までは「公認候補の候補」でしかない。
この前の衆院選では2000万円問題が話題になったが、「あなたを公認しましたよ」という名目で払われる500万円の公認料も含まれた振り込み額になっていたので問題になったということだ。
これは選挙のための資金だが、支部長でいる間も給料っぽい形で資金が党から払われるらしい。まだ議員になっていない「支部長」たちがどうやって生きているかというとそれらの資金で生きている場合もあるのかもしれない。この額面も党によってもちろん違うらしい。
政党ごとの違い
どの党も、公募や選考で決まった人物が、長期間その選挙区を預かることが多いが、比較的野党側は流動的な場合があり、選挙前になって急に候補者を差し込むケースや、複数人で調整して最終的に決まるケースもある。
維新は公募に力を入れていると言われるし、立憲や国民民主、共産なども人材発掘の試みを行っているが、名称や運用は党によって微妙に異なる。
要は、支部長は「次期候補予定者」としてインストールされる存在で、これは与党・野党問わず必要な仕組みだが、その運用方法は党ごとのカラーが出る。
まとめ:支部長とは何か、なぜ知るべきか
支部長を理解することは、「政治家がどうやって政治家になるか」を理解するのに役立つ。昨日書いた『代議士の誕生』が、政治家誕生のリアルを示したように、現代日本でも政治家は一朝一夕では生まれない。支部長として地域に根を張り、人脈を作り、政策ビジョンを磨く。それは次の総選挙で「公認候補」となり、「当選」を目指す長い道のりの中核となるステップなのだ。
政治を外から眺めていると、政治家が突然ポンと現れたように思えるかもしれないが、実は「支部長」という肩書きの下、粘り強く基盤づくりをしている期間がある。そのプロセスを知ることで、政治家の存在がぐっと身近になるはずだ。
以上、「支部長って何?」という疑問を掘り下げてみた。次回は、せっかく埼玉の支部長公募がやっているのでそちらへの応募をしてみようと思う。お楽しみに。