はじめに
『ファミコン版ファイナルファンタジーIV』という、幻の作品をご存知だろうか。
『ファイナルファンタジーIV』は、1991年7月19日にスーパーファミコン用ソフトとしてスクウェアから発売されたFFシリーズの4作目。
発売決定した当時は『V』として発表されており、『IV』はファミコン用ソフトとして開発中だったという逸話がある。
ここからは、それぞれ『ファミコン版FF4』『SFC版FF5』と表記していくが、『ファミコン版FF4』についてはハッキリしたことが分からず、様々なウワサが広まっている。
今回、『ファミコン版FF4』の情報を改めてまとめてみた。
◆ファミコン版FF4の実像
当時のゲーム雑誌でどのような情報が出ていたか、ファミリーコンピュータMagazine、ファミコン通信、マル勝ファミコンの3誌を中心に紹介していく。
・第一報
どの雑誌でも第一報は『SFC版FF5』の発売決定についての記事。その中で『FF3』の続編が『FF5』になった経緯として『ファミコン版FF4』について記載がされている。画面写真などは無い。
・第二報
第一報から3か月後。『SFC版FF5』改め『SFC版FF4』の第二報にて『ファミコン版FF4』はその姿を見せることなく開発中止が報じられた。
と、ファミリーコンピュータMagagineが変更をあっさり伝えたのに対して、ファミコン通信とマル勝ファミコンではスクウェアからのFAX文面について書面を多く使って紹介している。
そのFAX文面にて開発中止の理由について曰く、
なお、マル勝ファミコンでは「作品性を判断できるレベルまで出来ていたとすると『FC版FF4』は70%以上は完成していたのだろう」という見解を述べており、これがFF用語辞典での「70%はできていたらしい」の記載の元になっている。
・その後
開発中止の発表以降にも『ファミコン版FF4』について語っている記事があるので紹介していく。
「FC版FF4はFFシリーズの続編として、その名に恥じない作品」だったはずなのだが、ファミコンでは『FF3』を越えられなかったのが開発中止の理由と語るのは、スクウェア広報の平田氏。
インタビュー内でハードの限界は最初からある程度わかってたのでは?とのツッコミを受けている。
さらにFF4発売後のインタビューでは、ディレクターの坂口氏も質問を受けている。
更に話が変わって、平田氏が自信ありと言っていたシナリオは完成していなかったし、作ったのは初期コンセプトだけだったと語られている。FFシリーズの続編として、その名に恥じないのはコンセプトだったのか。
同インタビューによるとSFCの方の『FF4』の初期コンセプトが作られたのが1990年5月なので、同時にスタートしたFC版の開発はこの頃にストップしたのだと推察される。
★雑誌記事のまとめ
判明した情報をまとると、このようになる。
ウワサに聞く『ファミコン版FF4』とはだいぶ違うと思った人もいるのではないだろうか。
次に、ウワサがどこから発生したのかを確認していく。
◆ファミコン版FF4のウワサ
・画面写真
以下の画像をネットで見た人もいると思う。実際にゲーム雑誌で見た記憶がある人もいるだろう。
この画像の正体は、『ファミコン版FF4』も『SFC版FF5』も発表前のファミコン通信1990年11月9日号のRPG特集。
人気作の続編を予想している記事の右上、記者が独自に作成した予想画面を抜き出したものである。
記事内では他にもジョブの追加(手品師、神父、コック、大工)なども予想していて、これを本物の『ファミコン版FF4』の記事として読んだと記憶している人も一定数いるようだ。
・実は8割できていた
8割ほど完成していたというウワサ、の大元となったと思われる2001年の書き込みが掲示板『2ちゃんねる』の過去ログに残されている。
この書き込み自体は、怪しげなリンクを踏ませる為のいわゆる"釣り"。
インタビュー内容は捏造なのだが、8割完成したデータが存在するというロマンに惹かれた人たちによって今なお伝播されている。
・聖剣伝説2になった
『ファミコン版FF4』がFFUSAになった、ゼノギアスになったなど色々な後のスクウェア作品になったと言われる中で、最も多く言われているのが聖剣伝説2。
2006年8月24日に電撃オンラインに掲載されたインタビューでの田中弘道氏の発言が元になっている。
世に出なかったFF4の話ということで『ファミコン版FF4』と結びつき、「ファミコン版FF4は後に聖剣伝説2になった」と実しやかに語られるようになった。
実際どうかというと、別のインタビューで田中氏が語って曰く
ということで、田中氏のFF4案はスーパーファミコン用の初期案の一つであったことが示されており、『ファミコン版FF4』の話では無いことが分かる。
◆ファミコン版FF4の幻
田中氏のSFC向け企画については別のインタビューでも語られていて、それは『FF5』ではなく『FF4』であったという。
何故にSFC用ソフトとしてのFF4が検討されていながら、ファミコンでFF4を出すことになったのか。
何故に見劣りするのが明白で、開発も初期で止まっていたファミコン用ソフトを後で出すかもと公表するまで至ったのか。
その答えに近いと思われるのがアニバーサリーアルティマニアでの時田貴司氏の発言。
開発中止の発表時の出来事なら欠番にする話が出ただけで"おおらかな時代"とはいうのは大袈裟な感じだが、これが『SFC版FF5』が発表される前の話で、最初から4を永久欠番にするつもりで5を発表していたのなら…
それは"おおらかな時代"と言うのがしっくり来るだろう。
ドラクエに追いつき追い越せでFFに欠番に作ろうとした話は、コンサート中のトークで植松伸夫氏も語っている。ただし欠番になるのは5と言う話で。
これは氏の覚え違いor言い間違いで『FF4』の話だったのではないか。
『ファミコン版FF4』の持つ不自然さは、社長命令との苦闘の産物だったのではないか。
偽記憶。妄想。思い込み。推測。
ファミコン版ファイナルファンタジーIV。
それは、幻。