本当は、リーダーこそ「聴いて」もらいたがっている
「そんなこと言うなら、辞めてもらってもいいよって。それだけでした」
地域ではちょっと知られたカフェで、何年も働いてきた女性。お店の接客で気になる点についてひと言伝えたところ、オーナーから返ってきた言葉が「これ」だったそう。
「いままでも『意見があったら言ってね』とは言われてきたけど、それができる雰囲気じゃ全然ないんですよね。いつもピリピリしていて、人を寄せ付けない感じ。でも今回はお客さんに直接関係することだから、思い切って伝えてみたんです。そしたら……。正直、もう限界かなって感じてます」
もっといいお店にしていこう、という従業員の声に耳を貸さない。貸したくない。
会社での上司と部下や、サークルのリーダーとメンバーなど、似たような話はどこにでもある。何かの縁や想いに共鳴して集まったにも関わらず、こうしたコミュニケーションの問題で分裂してしまうのはとてももったいない。
そもそも、どうして「聴けない」リーダーが多いのか?
当然、具体的理由は個別にある。でも、共通して言えるのは「恐れ」だろう。
従業員(または部下)から何か意見されることが、自分の能力や人格までを非難・否定されているように感じてしまう。
そうではないと分かっていても、そう受け取ってしまう。傷つきたくない。だから「聴かない」ことで自分を守っている。
ほとんどの人は、もともとそうだったわけではない。経験のなかで、自己防衛的になってしまったのだ。
ある知り合いの男性は、起業当初は従業員を気遣い、交流会も頻繁に開いていた。ただ、そのうちに一部のスタッフがあからさまに舐めた態度を取り始め、なかには手が付けられないほど傲慢になってしまった者まで。よりよい関係性を回復しようにも、傲慢な者に彼のどんな言葉も響かなかった。
誰にとっても働きやすい職場環境を―との理想を掲げていた彼は、とても苦悩していた。そして心から血を流しながら、そのスタッフを斬った。そこから彼は変わってしまった。誰の意見にも耳を傾けず、自分の決定を淡々と指示するだけになった。彼の事業は地元のメディアに度々取り上げられる。表向きは華やかだが、その目はいつも疲れ切り、孤独と悲哀に充ちている。
「話を聴かない」リーダーこそ、実はもっとも聴いてもらいたがっている。恐れを、不安を、弱さを……。ただ、それが表せない。伝えられる相手がいない。そもそも、そんなそぶりは絶対に見せられない。
だから、「聴かない」
だから、従業員(部下、メンバー)の気持ちが分からない
だから、従業員(部下、メンバー)が離れる
だから、改善点に気づけなくなる
だから、発展しなくなる
だから、理想から遠ざかる
だから、苛立つ
だから、よけいに聴かなくなる
そして、孤独を深めて行く。
そのままで、本当にいいの?
あなたが「聴く」という意味を深め、「聴ける」人になるなら、この負のスパイラルは止められるのに。
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