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没になったオモパを放出する会(再放送・増量版)

【はじめに】
本記事は過去に自ブログ「パズルに関する備忘録」で書いた ペンパアドベント2018 の時の記事を再編したものです。つい最近時効を迎えた本誌175号向けのオモパまで含めた増量版となっております。
元記事の問題PDFはリンク切れになってしまい遊べなくなってしまっているので、後々サルベージできたらpenpa-editなどのツール上で遊べるようにする予定です


パズル界隈にはおなじみ「パズル通信ニコリ(通称:本誌)」には毎号「オモロパズルのできるまで(通称:オモパ)」というコーナーがありまして、読者から投稿された完全新作ルールのパズルが公開される場所になっています。
もしオモパコーナーに興味を持った方、自分も参加してみたい、という方は今年のペンパアドベント2022で記事を書きましたので読んでいただけば。

さて、没となり闇に消えた悲しきオモパというのはいくつかありまして、これらをPCのストレージに眠らせておくのももったいない。
もしかしたら、ここで出したアイデアがだれかのインスピレーションとなって別のアイデアが生まれてくるかもしれない。
そんな思いで、過去に没になったオモパ(のルール)をここにて一挙公開しようと思った次第であります。

現在は当時と環境が変わり「パズルスクエア」といった公開の場や、「penpa-edit」といった汎用ツールも整備されてきておりますので、これを機になんかの拍子で流行ってくれたらうれしい限り。
ちなみに、パズルスクエア発のオリジナルパズルというのも結構ありまして、最新のものは網羅されていないようですが大体はペンパ大百科のこちらのページから見れます。

No.1:トツゲキループ(仮題)

※2018年に公開したときの旧題は「直進サーキット」

<例題と解答>

<ルール>
① 盤面のいくつかの白マスに線と矢印を引き、全体で向きがある1つの輪っかを作りましょう。
② 線と矢印はマスの中央を通るようにタテヨコに引きます。線を枝分かれさせたり、交差させたりしてはいけません。
③ 丸のあるマスからは、その中の数字と同じマス数分の長さの矢印がタテヨコにまっすぐ引かれます。数字のない丸ではどの長さの矢印が引かれるか分かりません。矢印の途中で外枠や黒マス、他の丸にぶつかってはいけません。
④ 丸のあるマスには線が必ず引かれ、そこで直角に曲がります。
⑤ すべての矢印の向きは線の進行方向に対して同じになっていなければいけません。

本誌151号向けに投稿した没作品1。当時は掲載された「ウソワン」「スカイスクレイパー」をしのいで一番自信があったのですが、すでに同じようなルールが出ていそう。とはいえ他の151号向けに送った没オモパと比べれば段違いで楽しいです。
黒マスを使ってよいので、積極的に黒マスを使っていくと幅広いバリエーションで面白い問題がいろいろ作れそうではあります。ありがちなルールながら安定はしていると思いますね。

No.2:イオンルーム

<例題と画像>

<ルール>
① 盤面のいくつかの白マスに+か-のどちらかを入れましょう。
② 太線で区切られた領域の左上の数字は、その部屋に入る+の数から-の数を引いた結果を表します。
③ +同士、-同士はタテヨコに隣り合ってはいけません。
④ それぞれの+、-は少なくとも一つの他方の記号と隣り合っていなければなりません。


本誌151号向けの没作品2。
パズルとして解くことはできますが、全体として地味・単調な傾向にあり10x10サイズでもうおなかいっぱいかなという感じのパズル。もっと派手に湧き出しとかまとめてプラスマイナスが決まるとかできるルールだと良かった。
部屋の分割を複雑にできてそこからダイナミックな展開を期待させるだけに、道中の地味さや出来上がり盤面の映えなさがガッカリポイント。
プラスとマイナスの「差分」をヒントにするというアイデアは本誌149号の「マグプレ」というパズルから拝借したものでした。この差分でヒントを与えるアイデアは他に使える気がする。

No.3: へやきり

<例題と解答>

<ルール>
① 太線で区切られた部屋の中に、マスの中央をタテヨコに通り、部屋の外枠と起点・終点とする直線を引きましょう。
② 部屋の左上の数字は、その部屋が直線でいくつの部屋に切り分けられるかを表します。数字のない部屋にはいくつに切り分けられるか分かりません。
③ 直線は太線をまたいではいけません。
④ 直線の通らないマスはタテヨコに隣り合ってはいけません。


本誌151号向け没作品3。当時は完全に「数うちゃ当たる」人海戦術・物量攻めでした。編集部の方々には変な負担をかけて申し訳なかったです。
このパズルは自分の中でも記憶からほとんど消えかけていた地味な印象の作品でして、今改めて例題解いてああこれは没だ、となった作品。
入口の時点で掛け算の計算要素が絡んでくるあたりが悪い意味でマニアックだし、そもそも盤面の点線が邪魔で数えづらいし、展開的にもずっと地味だし、といろいろ難があります。
「部屋の中を突貫する線を引く」アイデア自体はまだ他の案の転用できそうです。

No. 4: ワンダーランド(仮題)

<例題と画像>

<ルール>
① 盤面のいくつかの白マスに線を引き、全体で一つの輪っかを作りましょう。
② 線はマスの中央を通るようにタテヨコに引きます。線を交差させたり、枝分かれさせたり、黒マスや白四角のマスに通したりしてはいけません。
③ 黒マス、白四角の中の数字は、そのマスの周囲8マスのうち何マスに線が通るかを表します。数字のない黒マスや白四角では、周囲8マスのうち何マスに線が引かれるか分かりません。
④ 白四角の周囲8マスは、1周につき1回だけしか通り抜けることができません。

本誌152号向け没作品。これまたありがちなループ系で、④ルール以外は「ラインスイーパー」と同じです。まあこの手のパズルは類似ルールがいっぱいあるよね。
④ルールの「一回で通過しないといけない」はなかなかいい味が出てるのではないかと思います。今でも割と気に入っている没オモパの一つ。タイトルはけっこう適当につけてます。

No.5:タイルコンベア

<例題と解答>

<ルール>
① 盤面のすべてのマスにベルトコンベア(幅1マスで長さ2マス以上の長方形)を敷き詰めましょう。
② 横長のベルトコンベアは右向きか左向きに、縦長のベルトコンベアは上向きか下向きのいずれかの向きを持ちます。
③ 同じ向きを持つベルトコンベア同士はタテヨコに隣り合ってはいけません。
④ すべての盤面上の数字は、そのマスからベルトコンベアの方向をたどっていくことで、枠外にある同じ数字を持つ丸付き数字の場所にたどり着くようにします。


本誌153号向け没作品。ベルトコンベアをテーマに何か作りたいなと思い出来た作品で、本誌オモパの「ベルトコンベア」や「ろーま」あたりの系譜になるでしょうか。いつか改案を作って生まれ変わらせようと今に至るまでこじらせている作品。

No.6:うきわじま

<例題と画像>

<ルール>
① 盤面のいくつかの白マスに浮き輪(白丸)を入れましょう。
② すべての島(タテヨコにつながった黒マス)は、浮き輪のカタマリを介してひとつながりになるようにします。
③ 黒マスの数字は、そのマスにタテヨコにつながっている浮き輪のカタマリに含まれる浮き輪の数の総和を表します。
④ 浮き輪が縦横につながってできたカタマリは長方形または正方形になります。

本誌154号向け没作品。
「夢でこんな感じの見た目のオモパを見て面白そうと思ったから」というコンセプトのもとノリと勢いでできた作品。「ビジュアル面での楽しさ」は最近自分が気にしているテーマでもありますね。
当時はちょうど旧二軍枠の「クロット」が終了した時期で、これをリスペクトしたルールになっていますが、今の視点で③④ルールを再検討したら新生「うきわじま」として復帰できるかもしれない。

No. 7:サンクル

<例題と画像>

<ルール>
① 盤面のいくつかの白マスに丸を入れましょう。
② 太線で区切られた各領域には、あらかじめ盤面にある丸も含めてちょうど3つだけ丸が入るようにします。
③ 丸の中の数字がある場合、その丸とタテヨコにひとつながりになっている、自信を含めた丸の数を表します。
④ 丸の入るマスは2x2以上の塊になってはいけません。


155号没作品。当時は「クロクローン」「月か太陽」が人気を得てきて調子に乗っていた時期で、とにかく安定志向(=作問のしやすさ&自由度の高さ)に面舵を切った結果の産物。名前も「サークル」+「3」というこれまた安直なネーミング。
自由形領域、数字ヒント、2x2禁ととにかく無難なルールで固めた自由度が高いパズルではありますが、ありきたりなルールの組み合わせで特にテーマ的な新鮮さを感じない、ヒント数字と3つだけルールと2種類の「数える」要素で途中で混乱しやすい、と今思えば難のあるルール設計なのでした。
確かに解けはするけど、どれも他のパズルでできる手筋ばかりで、オモパ特有の「とがった」特徴がないのですね。

No. 8:ナナメハイウェイ

(旧題:感染道路)

<ルール>
① 丸と丸の間にタテヨコまたはナナメ45度の線を引き、すべての丸がひとつながりなるようにしましょう。
② 線は他の丸や黒マスを飛び越す形で引いてはいけませんが、ナナメ線と黒マスが角で接するのは構いません。線を枝分かれさせたり、交差させたりしてはいけません。
③ 黒丸同士はナナメの線で、白丸と黒丸はタテヨコの線でつながります。白丸同士を直接線でつないではいけません。
④ すべての丸は一つだけ自身とは違う色の丸とつながるようにします。
⑤ 白丸は黒く塗りつぶすことができ、これによりルール上黒丸として扱うことができます。

156号没作品。「サンクル」没を受けて、このころからオモパ制作の方向性を独自性重視に路線変換。これはルールが複雑なことと上級手筋の幅が少ないことからあまり期待しておらず、同時に投稿した「ストストーン」の前座として生贄になってもらったやつです。今だと考えられない投稿の仕方だ。
元々は「ゾンビパニック」というタイトルで、次々と白から黒へ感染していくゾンビ(黒丸)を人間(白丸)が退治していくみたいなコンセプトだったのですが、中級以降の展開がことごとく「人間サイドが合法的に×しを行えるよう故意に他人をゾンビに感染させる」というなんともサイコパスで殺伐なストーリーになってしまい、これはマズイと改名。
感染の仕方がナナメ45度という「ビショップ」の動き方になっている都合上、黒丸にならない「安全地帯」が市松状に盤面の半分を占めることになり、この定理を知っているか知らないかで難易度が大きく変わってしまうのが欠点。

No. 9:ゴンダンゴ / おでんでお

<例題と解答>

<ルール>
① 盤面に何本かの線(串)を引き、すべての記号を通る「ダンゴ」/「おでん」をいくつか作りましょう。
② 線はマスの中央を通るようにタテヨコに引きます。線を交差させたり、枝分かれさせたりしてはいけません。
③ 串の両端は必ず記号のマスになり、1つ以上の記号を連続して通った後、1マス以上の空白マスを通って、さらに同じ数の記号を連続して通って他方の端へ到達するようにします。
④ 串の両端にある記号は、他方の端側の記号の並びに対して互いに逆順になるようにします。
⑤ 串は記号のマスでは曲がることができますが、空白のマスで曲がることはできません。
⑥ 記号の数字は、串の間の何も通っていない部分から両端に向かって記号を数えていったとき、何番目に当たるかを表します。

※「おでんでお」と「ゴンダンゴ」は記号の数が3種類か2種類かの違いです。

「おでんでお」は本誌158号、「ゴンダンゴ」は本誌175号向けにリベンジしたものの没になった作品。タイトルが示す通り「回文」をテーマにしたパズルで割と悪くないルールだったと思うのですが、作ってみると裏道との戦いであっさり解けてしまい、思い通りの作問がなかなかしづらいのでした。

No.10:おやこどり

<例題と画像>

<ルール>
① 親鳥(○)と雛鳥(●)を巣(2マスの灰色マス)まで移動させましょう。
② それぞれの巣には親鳥と雛鳥が1匹ずつ入るようにします。
③ 親鳥、雛鳥の移動は矢印で表します。矢印の線ハマスの中央を通るようにタテヨコに引き、枝分かれさせたり交差させたり他の丸を飛び越えて移動してはいけません。
④ 親鳥はエサを求めて最低でも1回は仕切りをまたいで移動しないといけません。
⑤ 雛鳥はまだ飛べないので太線で区切られた仕切りの中でしか移動できません。


本誌159号向け没作品。158号登場で伊澤さん原作の「わたりどり」と「ぐんたいあり」がどちらの似た感じで好みの解き味だったので、これを一つにまとめられないかと思案した結果生まれたパズルです。
投稿原稿のメモを見ると、当時ブームだった「けものフレンズ」に便乗して動物園テーマで何か作りたいなと思っていたらしい。もうそんな経つのねあのアニメ。
没オモパの中では一番のお気に入りで、これはパズスク出身として少しでも流行ってくれればいいなあと思っています。

さて、ここからは前回記事にはなかった、新たに時効を迎えた没オモパ編。

No.11:りぴるーと

<例題と解答>

<ルール>
① 二つの矢印を結ぶ線を引き、以下のルールに沿って線を通ったとき、通過した文字が指定した文字列になるようにします。
② 線はマスの中央を通るようにタテヨコに引きます。途中で枝分かれさせたり、四角のマス以外で交差させたりしてはいけません。
③ 四角のマスには必ず交差するように線が通り、次のように通り抜けるものとします。
 (1) 最初に、四角のマスを直進する。
 (2) 次に、最初に入った方向に対して横側から入る。
 (3) 数字の回数だけ周回した後、直進して抜ける。

本誌169号向け没作品。こうみると160号台はそんなにオモパを作っていないですね。
プログラミング的な反復構造の考え方を取り入れたパズルで、そういうSTEM教育のいい教材になるかなと思って作ったのですが、マニアックすぎたかなあ。二重・三重にネストさせるループができたりもして面白いのですが。タイトルがひらがななのはなんとなく。
「よみどおり」的なダミー文字兼壁が作れます。言葉系にもできるけど、ナンスケみたいに論理的な手筋に着目させたかったのでこのようなルールです。

No.12:サンアンコー

<例題と画像>

<ルール>
① 空いているマスのいくつかに1~3の数字を1つ入れましょう。
② 数字は、同じ数字がちょうど3つだけタテヨコにつながった「ブロック」の形でのみ入るようにします。
③ ブロック同士がタテヨコに隣り合ってはいけません。
④ 黒マスの数字は、その上下左右の白マスに入る数字の和を表します。

本誌175号向けの没作品。この号はやたらオモパ熱が再燃し新作を3つほど送っていますが全没でございました(代わりにテーマ枠でオモパみたいなものを載せていただけた)。
数字系のオモパで一山当てたい願望がありできた作品。この願望は後の179号の「ハニーダース」まで続くのですが、それも一号限りだったことで熱が冷めて今に至ります。計算要素は敬遠される方が多いということもあってか、数字系オモパを流行らせるのは難しい。

No.13:ゼロイチライン

<例題と解答>

<ルール>
① 盤面のすべての空白マスを通るように「0」型の線と「1」型の線を引きましょう。
② 線はマスの中央を通るようにタテヨコに引きます。線は交差や枝分かれをしてはいけません。
③ 「0」型の線は長方形もしくは正方形の輪っかで、「1」型の線は2マス以上を通る直線になります。
④ 矢印付きの数字は、そのマスから矢印の方向へ盤面の端に達するまでにある「1」型の線の本数を表します。
⑤ 矢印付き数字のあるマスに線は通りません。

全マス充填系のラインもの。ヒント形式の出し方はいろいろ苦心したのですが、結局ヤジリン形式に落ち着きました。手筋はそれほど多いわけではなく奥が深そうな印象はないのですが、斬新さ勝負で行けるかなと思っていた。

おしまい。
問題PDFは過去原稿を漁って発掘できたらまた更新します。


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