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ニコリ投稿の手引き・オモパ編

【この記事は ペンパアドベント2022 の9日目の記事です。皆様の記事も宜しくお願いします。】

齋藤スバルです。最近の主食は納豆です。
明日は12月10日。これが何の日かといいますと、みなさんご存じ「パズル通信ニコリ vol.181号」の発売日です。この記事が公開される頃には、もうすでに手元に届いている方もいるかもしれません。自分のもとにはまだ来ておりません。
さて、ニコリ本誌の目玉といったら、というと十人十色の意見が出てきそうですが、自分としては何といっても「オモロパズルのできるまで(オモパ)」のコーナーです。
「新しいルールのパズルを作って育てる」というコンセプトのコーナーで、あの「スリザーリンク」「へやわけ」「ヤジリン」などをはじめ、ニコリで定番となっているパズルのほとんどはここ出身なのです。最近では「ダブルチョコ」がこのコーナーからレギュラーパズルへと巣立ち大盛況となっています。
自分のアイデアが数年したら大人気の定番パズルになっているかもしれない、そんななんとも夢のあるコーナーです。

オモパコーナーも他のパズル同様、すべて読者投稿によって成り立っています。新作ルールの投稿はもちろん、どのパズルが生き残って育っていくのかも、基本的には読者からの投稿数次第。
最初は「新作」からはじまり、何号か続けて掲載を勝ち取り一定の人気を得た作品は「二軍」へと昇格し、そこからさらに安定の人気を集めれば、ニコリの「レギュラー、定食枠」として旅立ってゆくのです。
執筆時点で最新の180号の2軍では、いま最も勢いに乗っている「チョコバナナ」、来年頭にはジャイアントも来そうな期待の新星「チェンブロ」、登場から4年以上経つもなお根強い人気のある重鎮「ミッドループ」、新鮮な言葉系パズルの「ボンバーワーズ」がおります。
そんなエキサイティングなコーナーに興味がある、自分も参加してみたいという方向けに今日はオモパ特化の「投稿の手引き」を書いてみようかなと思います。

なお、原稿のフォーマットや投稿の仕方など、ニコリ本誌への投稿の基本事項についてはある程度知っているものという前提で話を進めます。
こちらは半袖さんの記事やにょろっぴぃさんの記事が大変参考になりますので、そちらを一読しておくことをお勧めします。

【参考サイト】
- 半袖さんによる記事:ニコリ投稿の手引きの手引き(実践編)
- にょろっぴぃさんによる記事:ニコリ作家デビュー、してみませんか?

1.まずは「応援作」から手を出してみよう

オモパコーナーに興味があるけど、良いネタも特に思い浮かばない……という方は「応援作」からオモパに参加してみるのがおススメ。応援作がなければこのコーナーは成り立ちませんので、応援作を作ることはとってもっとっても重要なことなのです。
作り方としては普段のレギュラー枠を作るのとほとんど同じです。自分が気に入った検討枠、二軍枠のパズルを作って投稿してみましょう。フォーマットも通常の原稿と変わりません。パズル種ごとに別の紙に分けて、問題盤面と解答盤面は別に用意する(※問題と解答は同じ紙でもOK)。あとは住所やペンネーム、連絡先といった必要事項を書いて送ればOK。
現在はpuzz.linkで定期的に新パズルのエディタが開発されておりますし、penta-editor というオモパ作成にはうってつけの万能ツールがありますので、デジタルでの原稿作成はだいぶ楽になりました。もちろん、アナログで作っても問題ありません。

ただし、オモパ関連の締め切りは「本誌発売から約1か月以内」とかなり短いので要注意。特に近年は号によって締切日が前後する場合があるので、毎号しっかり本家「投稿の手引き」のページの真ん中下あたりをチェックしておきましょう。

Q:検討枠と二軍枠、どっちがねらい目?
「検討枠」は二軍枠と比べると問題掲載数が3~6問と多めで掲載倍率も比較的低い印象、そして生まれたて故に「作り慣れている度」という点では初めての方もベテラン作家もスタートラインはほとんど同じなので、デビュー狙いの方からすれば穴場だったりします。その代わり、どれだけ良い問題を投稿しても、次の号でそのパズルごと消滅するリスクがあります(※)。まあそういうコーナーですからこればかりは仕方がない。せっかく調整含めて3時間くらいかけて「スカイウォーク」の趣向作を作ったのに、いざ181号の目次見たらパズルごと消えてる、なんてことがあります。かなしい。
一方の「二軍枠」は予告なしにいきなり消滅することはないので安定はしていますが、投稿数も多く掲載枠は各難易度1問ずつの計3問のみと倍率はかなり高いです。ただ別冊の「ザ・ペンシルパズル」シリーズや「パズルBOX」シリーズにまとめて載ることもあるので送っておいて損はないでしょう。
(※)大変なレアケースですが、一度消滅したオモパでも応援作を送り続けることで復活することがあります。例えば「波及効果」や「のりのり」は一度消滅してから奇跡の復活を遂げてレギュラーまで上りつめたパズルです。本当に推したい作品であれば、消えてしまっても諦めず送り続ければ奇跡的に復活するかも。もしそうなればあなたは「救世主」です。

Q:どれが残りそうかの見分け方はある?
これはとても一概には言えないです。「これは定食化いける」と自信満々に送り出したパズルが1号で消えたりする世界です。ちょっと前の「ハニーダース」とか。一つ言えそうなのは、作りやすいパズルは敷居が低く必然的に投稿も多くなって残りやすい傾向にある、ということでしょうか。
ネットで感想をあさってみるのも手ではありますが、純粋に「自分が気に入ったかどうか」「作れそうかどうか」などを自分と相談して決めてみるのが結局一番いいのではと思います。

Q:盤面サイズはどうするの?
種類にもよりますが、検討枠であれば4x4 ~ 10x10 の正方形であればなんでも良いです。11x11以上はよっぽどのことがない限りまず載りません。
3-4号続けて残留しており二軍昇格目前の作品なら、10x10サイズのらくらく、おてごろ問題は需要が高く狙い目。二軍昇格が迫ってくると「10x10のみでヨロシク」といったお達しが出るので、編集部のコメントも目を通しておきましょう。
二軍枠の数理系パズルは基本的に10x10のみですが、17x17の中サイズ(※)は毎年11月の「ザ・ペンシルパズル」シリーズで拾われる可能性があるので敢えて送ってみるのも手。
ジャイアントサイズやSGサイズを送り付けるのはかなりハイリスクで無謀な賭けですが、もしかしたらそれがきっかけで定食化に漕ぎつけたり年始めの「パズル・ザ・ジャイアント」へのお誘いが来たりするかもしれません?
(※)「ダブルチョコ」や「ストストーン」などのルール的に17x17が不可能なパズルは、16x16や18x18等にして送ればOKです。最初に掲載された中サイズのマス数が今後の標準になります。

2.「改案」を提案してみよう。

何かと競争の側面が強いオモパコーナーですが、協力して育てていくのも大切です。特に新しいネタが思い浮かばない、だけどオモパに何か載せたい、そんなときは「改案」に手を出してみるのもアリです。
例えば、気に入ったオモパがあるけど、そのルールの一部にちょっと気になる点がある。もしくはルールは良いんだけど、表出形式や見た目にちょっと気になる点がある。もしそんな「モヤモヤ感」を抱いたら、これをこうした方が良いという提案と問題を添えて送ってみましょう。
ルール文の変更がある場合は、新ルール文(ルールの①~③までは元と同じ、のようにしても伝わればOK)と例題+解答も一緒に送るのを忘れずに。
もしそれが編集部の方々に刺されば、新作と同じ扱いで1個分枠を確保してくれることがあります。最近の例では「ヤジカズセット2」や「ツインループ記号変更版」みたいな。
本誌180号の「ナンバーロープ」5番のような形で1問だけ採用されたり、問題としては没になって編集部のコメントで言及されるだけ(例:179号でのチョコバナナの黒マス表出のくだり)、というケースもありますが、そこはみんなで作っていくコーナーという精神を忘れてはいけません。

なお、ちょっとした改案を練っているうちに元のパズルとは似て非なるれっきとした「新作」を思いつくことがあります。というか齋藤の最近のここ数年の新作はだいたいこのパターン。こうなったら自信をもって新作として送ってみましょう。

3.夢は大きく「新作」を作ってみよう。

やはりオモパコーナー最大の醍醐味は、自分で考え出した「新作」ルールでパズルを載せれる、という点です。それがヒットして二軍昇格、果てにはレギュラー化までいってくれれば、原作者としてこれより嬉しいことはもう何もありません。
リアルな話になりますが、新作枠で1発載せられると実質3~5問分まとめて掲載されることになるので、ジャイアント掲載相当の💰がもらえたりします。例題として採用されてもちゃんと1問分入ります。

Q:原稿フォーマットはどうすればいい?
定食枠や応援作の時と違って、通常の問題・解答の他に次のこともしっかり書いてあげないといけません。
・オモパのタイトル
・ルール文
・例題
・例題の解答
余白があれば、このパズルの推しポイントや開発経緯などをつづってあげると載りやすさポイントが加算されるかもしれません。されないかもしれません。

Q:タイトルはどうする?
昔はタイトルを編集部任せにして無題で送っていた方も多かったようですが、少なくとも自分はつけるようにしています。そのまま仮題として採用されることもあれば、テコ入れが入って別の名前として目次サンプルPDFで初お披露目、ということもあります。最近は少なくなったように感じますが。
「名は体を表す」の格言もある通り、名前も大事なオモパの構成要素だと思いますので、じっくり考えてあげるに良いに越したことはありません。
汎用的な一般名詞(美術館やスラロームなど)で名前を付けるのももちろん良いのですが、Twitterやら個人ブログやらで感想を検索したいときに不便なので、固有名詞で独自タイトルをつけてあげるとエゴサ的なことがしやすくなっておすすめです。

Q:例題はどうする?
「ルール上の制約を一通り網羅した」「4x4~5x5サイズ」「らくらくレベル」の問題が必須要件じゃないでしょうか。掲載時に編集部サイドで作り直してくれるケースもありますが、先述の通り例題としての採用でもちゃんと1問分の謝礼がもらえるほか、例題づくりを通してオモパとしての質を吟味することもできるので、しっかり考えた方が良いでしょう。
例題の作り方に関しては、先日のパズスク例題コンテストのときのfff氏の記事よりいい例題とは(通常編)がかなり参考になると思います。

Q:ルール文の書き方のコツは?
1番目のルールは「何をすればよいのか」の概要を述べるのが原則。線を引くタイプだったら「盤面に1つの輪っかを作りましょう」、パンダの記号を配置するのだったら「盤面のいくつかの白マスにパンダを配置しましょう」みたいな。
似たようなルールを持つパズルが既にあるのなら、そこから一部を拝借して切り貼りするのが手っ取り早いです。
ルール文の推敲は編集部サイドでも細心の注意を以てやっていただけるので多少のミスがあっても大丈夫ですが、少しでも載せやすくするために文をちゃんと練っておくに良いに越したことは無いです。

ちなみに、ルールの項目数ですが、個人的には4個までに収まっていると「すっきりしたルールのパズルだなあ」と感じます。5個とか6個になると「複雑なルール」というマイナス要素になりがちです。もちろん5項目以上あっても面白いパズルはたくさんありますが。

Q:問題数はどうする?
人によってまちまちだと思うのですが、自分はだいたい10問前後です。
作りすぎてしまったときは2枚の紙に分けて15問くらい送ったりするときもあります。
編集部側の負担を考え、最初からこちらで精選して5~6問まで絞っておくと親切なのかもしれませんが、ここまでくると強者ですね。

新作枠としての掲載の場合、6x6以下のサイズがメインに載り、8x8,10x10サイズは最後に1-2問載る程度でしょうか。種類によっても異なるので一概には言えませんが。
少なくとも新作で送る場合、どんな解き手であれみな「初心者」になるわけですから、難易度はらくらく・おてごろ比重多めの方が望ましいです。ましてや試行錯誤や2手以上の先読みを要する作品はよほどエレガントな趣向があるとかでない限り載りません(これは定食パズルでもおんなじ)。

Q:原稿はデジタルの方がいいの?
現在はpenpa-editorがあるおかげで、大半のオモパはこれで事足ります。逆に、これで対応できないオモパは相当斬新なアイデアということなので自信をもっていいと思います。
Excelで方眼紙にして作っても良し、penpa-editorで画像出力するもよし、もちろんアナログ手書きでやってもOKです。
なお、上述の半袖さんの記事でも言われておりますように、解答盤面は問題盤面を印刷したあと手書きで仕上げるのがおススメです。PC上とは異なる紙面上での解き味の吟味、別解や破綻がないかの最終チェックが主目的なのですが、何より単純に楽しいです。

Q:少しでも載せやすくするコツは?
ルール要素の設計が大事なのはもちろんですが「問題自体の質」も掲載に当たってかなり重要な要素になります。せっかくルールは良くても問題の質が足を引っ張って没になるパターンも結構あるとのこと、と何年か前の新年会で前編集長(現社長)からお伺いしました。
あと初期の自分がよくやらかしていたのが「手筋の多さを見せびらかすため難しめの問題ばかり作る」ですが、これは先程の理由から控えた方がいいです。オモパとして載っても、問題として載せられたためしがありません。
仮に掲載されたとして、お披露目する相手はどんなパズラーであれ等しく「初心者」なわけです。作者側は慣れ親しんでいる手筋でも、大半の解き手には初見なわけなので、そこの「立場の違い」を普段よりもはっきり意識する必要があると考えます。

Q:いいネタが思いつかないんだけど
おすすめは「改案」の延長として、既にあるパズルをベースに新しいパズルを作っていく方法でしょうか。例えば、過去に出た別の案と組み合わせたり。
最近だと179号の「ハニーダース」は151号の「ハニカズ」と170号の「ラインダース」の融合体で、そこに「ナンバーロープ」の好きな部分を活かせるよう微調整したものです。現二軍の「チェンブロ」も172号の「区区」と「ミラーリングタイル」の融合体に独自のチェーンルールを付け加えたものですね。

他には、wikipediaの「おまかせ記事」のようなアイデアの種を自動生成してくれるツール類をいろいろ漁ってみて「これだ」というテーマの軸を決め、あとはそれをメインディッシュに、その味が引き立つように補助ルール(連黒分断禁やら2x2禁やら)をいろいろなパズルからつぎはぎしていく、というのも良いでしょう。

必死に絞りだそうとしても出ないときは出ないです。時にはあきらめも肝心。忘れかけたころにふっと降ってくるものなので、焦らないのも大事かもしれません。

Q:いい感じの補助ルールを選ぶコツは?
「自由形領域」と「数字ヒント」の組み合わせはかなり万能です。明太マヨとか鰹節ネギのような、どんなテーマにも合う汎用性を持ちます。ただし新鮮味に欠け飽きられやすいきらいがある、などのデメリットも当然あるわけですが。
あと、追加する補助ルールは少なければ少ない方が良いです。「オッカムの剃刀」的な考え方で、ルールを追加したいときは、ルール複雑化のデメリットを覆えせるほどの「手筋・入口の幅」「奥深さ」が出るかどうかを慎重に検討しましょう。
特に作っていて・解いていてうっかり忘れてしまう程度の「影の薄いルール要素」は削ってみることを検討した方が良いです。アイスバーンの「全部のアイスバーンを1回は通る」ルールみたいな。

Q:投稿するのに良いタイミングはあるの?
自分としては、なんとなくあるなあとは感じています。例えば、あるテーマのパズルが絶賛流行中のときに似たようなテーマで送っても載りづらい傾向にある気がします(新鮮味に欠く+他の方も類似ルールで送ってくる可能性が高い)。
ネタとしていいのが浮かんで原稿まで仕上がっても「今はまだ出す時ではない」と見送ることは結構あります。「月か太陽」の原案となった昔のオモパをリメイクしてみたものの、結局3~4年くらい原稿をストックしたまんまにしているのですが、これは当時似たような系統の「ドッチループ」が台頭していたためです。
あと、締め切り前に焦って問題を揃えるのもあまりよくないかもしれません。自信があるルールだからこそ、じっくり時間をかけて問題を作り、よりよいルールはないかと吟味してみるのが良いかと思います。
流行の波があるのは確かですが、オモパ界隈は割とスローライフでそう簡単にチャンスが逃げていくものではありません。むしろ流行が過ぎて忘れられかけたころに再燃を図ってみるのがベターだと思っている部分もあります。3か月半年くらいゆっくり待って寝かせてみるのも手でしょう。寝かせている間に、もっといい案が出たり改善点が見つかったりするかもしれません。
焦ってはいけない」というのはあると思います。

4.「感想・コメント」だけ送るのも立派な貢献

これまでは問題を投稿するという方向での話でしたが、問題が作れなくても感想やコメントをハガキに書いて送っていただけるだけで、立派なオモパへの貢献になります。
Twitterなどで感想をつぶやくだけでもありがたいですし、オモパ好き好き勢としては読んでいるだけでも楽しいものです。

最後に

これを書いている時点でまだ11月なので本誌181号の中身は未知なのですが、もし「マルタリング」というオモパが載っていたら、ぜひとも応援作をお願いします。改案・感想・コメントもお待ちしております。
12/1追記】目次にて掲載確認・・・!まだ手元にないのでたまたま同じ名前で別の方が作った可能性もありますが・・・
新作オモパ(テーマパズル枠も)を投稿すると、本誌発売前に先駆けて公開される目次PDFだけで楽しくなれるのでオススメです。


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