ポケモンSV逆1位考察
この記事はPokémon Past Generation Advent Calendar 2022 8日目の記事です。
これはなに?
ポケモンスカーレット・バイオレット(以下SV)における逆1位ルールの大枠を考察した記事です。逆1位ルールって何だよというおおよそ大多数の方はまずはこちらをお読みください。
注意
この記事ではポケモンHOME解禁以前の環境(以下、現行環境)を前提としています。また、この記事は飽くまでデータを眺めて抱いた感想にすぎません。実際に対戦で使ってはいない、いわゆるエアプ記事であることを念頭に置いてお読みください。
環境雑感
消えてしまった要素
まず第一に思ったことは、「何もない」です。これまでの逆1位環境で強かったあらゆる要素が存在しません。
6世代の黎明期を支えたモンメン・エルフーン(合わせて通称『親子』)・ヌケニン・テッカニン・ニャオニクスが全て入国拒否されています。リオル・ルカリオは入国こそ許されたものの、この指止まれを没収されている(これは剣盾からですが…)ため、全盛期ほどの汎用性は失っています。
ニャオニクスに加えてチョロネコ・レパルダスも入国拒否されているため、6世代トップメタの一角だった猫爆発も不可能です。というか猫の手自体が剣盾に引き続いて使用不可のため、そもそもコンセプトごと存在を否定されています。
猫爆発に対するスペードの3的存在であったパラスも入国拒否。文字通りの技のデパート、ドーブルも入国拒否(これに関しては残当)。
7世代で登場した歴代催促コンボのコブシアン / エテコブシも、コンボの要であるナマコブシが入国拒否。コブシアンへの数少ない回答であり、また汎用性の高い妨害技のスポットライトも存在が消されたまま。
剣盾で環境をぶち壊した化学変化ガスも、ドガース族が入国拒否されているので存在しません。これに関してだけは逆1位の平和が戻ったので全力で喜んでいます。
以上の通り、6世代〜8世代で強かったコンボやキャラが悉く存在しない環境なのです。逆1位のマスコットだったヌケニンやパラスがいなくてとても寂しいです…。
生存している要素
残念がっていても仕方がないので、逆に残っているキャラを見ていきましょう。ざっと思いつくのは以下の通りです。
最速の爆発使い、マルマイン
『かお』の愛称でおなじみ(?)、精神力+爆発のオニゴーリ
猫騙し耐性を持つ高速爆発役、ゲンガー
爆発+置き土産+封印に特性は軽業も誘爆も優秀な便利役、フワライド
この指を取り上げられても最低限の仕事はできそうなリオル・ルカリオ
サイコメイカーで後続を含めた猫騙しケアができ、この指まで持っているイエッサン♀
現行環境でおそらく唯一の先制コンボが使えるアロテヤマ
また、剣盾では化学変化ガスが蔓延していたせいで忘れられていたかもしれませんが、重要な仕様変更として、素早さ変化が即時反映されるようになっています。このため、7世代以前では大した意味が無かったいたずらごころでの追い風や天候変化+素早さ上昇特性などが強くなっています。特にヤミカラスはかなり器用で、追い風をはじめ、天候変化、さきおくり、フェザーダンスによる爆発の調整崩しなど、対面時に考える択が多いので厄介かもしれません。
そして、過去世代と比べてプール全体のパワーが2段階ほど落ちているため、これまでの環境では注目に値しなかったポケモンも活躍するチャンスが大いにあります。たとえば、すいすい爆発の一芸しかないハリーセンなどや、サイコフィールドを剥がせるバチンウニも選択肢に十分入ってくると思います(と思ったらバチンウニくんは自爆を取り上げられていました。超低速置き土産しかできません…。お前がパワーダウンしてどうするんだ…)。
新要素について
SVで追加された仕様・持ち物・ポケモンの中には、逆1位ルールでも活躍しそうなものがいくつかあります。
テラスタル
SVの目玉システムです。1匹限定ではありますが、任意のポケモンをゴーストタイプにして猫騙し耐性を与えることができます。あるいは悪タイプにして悪戯心耐性を持たせたり、草タイプにして怒りの粉・キノコの胞子耐性を持たせたりすることもできます(粉・胞子に関しては対策する以前にまともな使い手がいませんが…)。耐性を持たせる以外でも、一致補正の上昇を受けることでアロテヤマ系コンボの調整に幅が出るかもしれません(ホンマか?)。
ただしテラピースを50個集めるのが大変すぎるのでなかなか手が出せません。こんな変則ルールのためにテラピース集めるやつおらんやろ
おんみつマント
持たせると技の追加効果を受けなくなります。手軽に猫騙し耐性を得られる要素その2です。テラスタルと合わせて任意の2体が猫騙し耐性を持てるため、安心して猫騙しが打てる時代は終わってしまったかもしれません。スカーフや火力アイテムを持てなくなるのがネックでしょうか。
クリアチャーム
持たせると能力ダウンに対してクリアボディと同様の耐性を得ます。威嚇耐性という意味では逆1位においてはしろいハーブの上位互換でしょう。
いかさまダイス
持たせると連続技の最低保証が4回に増えます。ゴツメ持ったガブにつっぱりとかするコンボは芸術点だけは高そう。芸術点だけ。
コノヨザル
オコリザルの追加進化です。ゴーストタイプによる猫騙し耐性を得た代わりにSが95から90に下がってしまいました。ルカリオと似た役割を持ち、ルカリオと同速です。
H種族値が110と高いですが、これは倒せる味方が増える代わりに自身が倒れにくく、またこの指で吸われたときに相手を倒してしまいやすいので一長一短といったところ。
特性に精神力もあるのが逆1位的にはもったいない感じがしますね。むしろゴーストは味方の爆発や命がけの対象にするのが難しくなることを考えると、ゴーストタイプが邪魔に思えてきます。
ハバタクカミ
元のS種族値が135もあるうえに、パラドックスポケモン専用アイテムのブーストエナジーを持たせて特性:こだいかっせいを発動させるとSを1.5倍にすることができます。スカーフ枠を消費しないのが偉いです。
こだいかっせい / クォークチャージは他のパラドックスポケモンも持っていますが、自滅ができるのはハバタクカミだけでした。とても残念。というか気合が足りてなさすぎる。未来のポケモンがあの見た目で爆発のひとつもできないのはどうかしてます。
準伝説
一応項目を作りましたが、特に何もできません。強いて言えばチオンジェンの特性:わざわいのおふだがクリアチャームなどのランクダウン耐性を貫通して攻撃を下げられますが、それだけです。
強そうな並び
正直あまり思いつかなかったのですが、6世代初期以来の復権を果たしそうなアロテヤマと、逆1位の寿司要素であるジョートロだけ挙げておきます。
アロテヤマ
じつは6世代でも強かったわけではなく、使われたのも1回だけなのに、なぜか有名なアロテヤマ。これはレベル38 A特化ファイアローの珠ブレバを隣のゴツメ持ちレベル50ハリテヤマ(H252、B無振り個体値0下降補正)に打つことでハリテヤマをギリギリ倒し、反動ダメージ+珠ダメージ+ゴツメダメージでファイアローも倒れるというコンボです。
威嚇に弱い、この指に弱い、猫騙しに弱いという欠陥が目立つ並びなのですが(はやてのつばさの弱体化により、ファイアローが猫騙しで削れてしまうと優先度が0になってしまうので実は6世代より弱くなっている)、目の上のたんこぶだった猫爆発・親子・コブシアンなどの先制コンボが軒並み出禁になっている現行環境では、おそらく優先度+1以上から自滅ができる唯一のコンボです。
猫爆発やコブシアンほどの制圧力こそ無いものの、つねに一定の警戒は必要な並びだと言えます。復権しても「一定の警戒」レベルなのが悲しいですが…。
ジョートロ
カマスジョーのアクアジェットでトロッゴンの特性:じょうききかんを発動させ、S実数値448からトロッゴンが爆発をキメるコンボです。同じくじょうききかんを持つ進化前のタンドンと進化後のセキタンザンはS種族値が30ですが、トロッゴンは50もあります。なお、寿司要素は名前だけです。
7世代でも成立はしたんですが、優先度持ちコンボがいたこと、パラスがいたこと、そして何より化学変化ガスの前には無力なことで、日の目を見ることはありませんでした。
この並びの強みはコンボ成立時の圧倒的な素早さだけではなく、カマスジョーの特性:スクリューおびれによるこの指耐性があること、両者の持ち物がフリーなこと、アロテヤマにも立ち回り次第で勝てる(マント持ちカマスジョーでハリテヤマにアクジェを打ってブレバの反動ダメージを減らせばアローが反動で倒れない)ことなどにもあります。
ただ、コンボ成立のために持ち物は使わないものの、アロテヤマをはじめとした猫騙しへのケアとしてカマスジョーにおんみつマントを持たせてトロッゴンはテラスタルゴースト、威嚇や先制フェザーダンスで崩されないためにトロッゴンがクリアチャームを持つまで固定かなぁとも思います。
厳選環境
じつはこれが一番の問題だったりします…。今作ではレベル50からすごいとっくんができるようになり、ミントや王冠が無制限に購入できるようになっている上にお金もA連打で稼げるため、普通の対戦で使う個体に関しては、その辺で捕まえてきたポケモンにクスリとハッパをぶち込んで怪しいおじさんに個体値を上げてもらうだけで完了するようになりました。一方で孵化厳選のUIは非常に劣化しており、タマゴパワーを発動させないとタマゴが全然見つからない、タマゴができたかどうかAボタンを押さないと確認できないのにA連打しているとカウンターが溜まらずタマゴが出来ない、タマゴが出来るピクニックとタマゴを孵すための歩数稼ぎが同時にできない…と散々です。そもそもHB個体値が0の親を揃えるのがかなり大変ですし、レベル調整をするときにはすごい特訓が使えないので、理想個体の厳選が必要になります。加えてテラスタイプを変更するために必要なテラピースを集めるのも大変です。そして、そこまでして育成した個体は、一般ルールにはおよそ転用不可です。現行環境は歴代で最も逆1位ルールにかける情熱が試されている環境でもあると言えるでしょう。
まとめ
ハイスペックなキャラのパワーを押し付け合うこれまでの逆1位環境とは異なり、現行環境は地に足の着いた性能のポケモンたちによる置き土産と命がけと大爆発が織りなす堅実な環境になっていると思われます。猫爆発や超高速内臓パンチやパラスと言った派手さ奇抜さこそありませんが、実はこれが逆1位ルール本来の味わいなのかもしれません。興味を持った方はぜひ対戦しましょう! 厳選難易度の高さは……どうしようもありませんが……。個体値を下げる特訓が実装され、テラピースの入手が楽になるのを待つしかありません…。
定型文
9日目はメイユールさんによるXD乱数調整の自動化のお話です。乱数調整の自動化はここ最近の発展が目覚ましい分野です。楽しみですね!