『MZM』をレビューする(前編)
2019年5月8日、MonsterZ MATE(以下MZM)の1stアルバム『MZM』が発売されます。MZMの名刺がわりとなるこのアルバムは、1か月1曲アップロードされる曲を1年分まとめたものです。今回はこのアルバムの曲についてレビューを書いてみたいと思います。
実は、この文章はアルバムが発売してから公開しようと考えていました。これを発売前に公開したのは、いちおうの理由があります。レビューを書いてみるぞと決めて書き出したところ、折り返し地点にたどり着く前に3000字を越える量になってしまったからです。超大ボリューム。さすがに1万字越えは読みにくいだろうと分割することに決めました。幸いにも前半の6曲はすでに発表されている曲です。そこで、発売前に前編を公開して、発売後に後編を公開する形を取ろうと考えました。
ということで、これから前編をお送りしていきます。(前編を読んで興味を持った人はぜひアルバムを買ってください。)
店舗別予約特典もあります。
さて、最初に断っておきますが、私は音楽に関して造詣が深いわけではありません。ふだんは耳に心地よい音楽を好きに聴く程度です。ですから、ためになることはあまり書けないと思います。1人のファンの日記か手紙くらいの温度感で読んでいただければ幸いです。
そして願わくば、これを読んでいる皆さんにもレビューを書いてほしいと思います。発売前でも発売後でも、全曲でも一曲でも。単純に、読みたい。そうすることで、いろんな角度からMZMの音楽を味わってみたいのです。以上私からのささやかなお願いでした。
0. MonsterZ MATEとは
まずは音楽ユニットとしてのMZMについて説明するところからレビューをはじめたいと思います。
バーチャルYoutuberとしてのMZMについては以前私が書いたnoteをご覧ください。
MZMは吸血鬼のコーサカさんと狼男のアンジョーさんによる2人組ユニットです。ラップの部分をコーサカさんが、歌の部分をアンジョーさんが歌唱する形をとっています。このスタイルに対する考えについては以下のとおりです。
今成さん(ユニバーサルミュージック)「リアルを表現しようとした時に、リアルさってラップで言葉を詰められた方が表現できるじゃないですか。歌っていうのはそこを曖昧にするのも歌の良さだったりする。だからメッセージ性もあるし、歌のうまさもある。」
コーサカ「何故俺らのセールスポイントを知っているんだ……」
(3:02~)
いちファンとして、この一言が本当にその通りだと思ったので抜粋させていただきました。また、動画内で言及されているアンジョーさんの高い歌声というのも、間違いなくMZMの魅力のひとつだと思います。
付け加えるとすれば、コーサカさんの表現力も魅力的だと思います。今成さんの言う通り、リアルを語るのはコーサカさんの役割ですが、その表現力がメッセージ性にブーストを掛けているように聴こえるのです。声色や吐息ののせ方など、ひとつひとつが計算されていると感じますし、実際その幅に堪えうる引き出しを持っていることがすごい。
それでは以上を踏まえて1曲ずつ見ていきましょう。
1. 「Live your life!!」
MZMの2人で作った、初めての楽曲です。MZMがバズるきっかけとなったV紅白歌合戦で披露された楽曲ですので、この曲に思い入れのある方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。また、1周年を迎えた5月5日に10万再生を突破したMVでもあります。私自身、初めて見た10分でわかる動画の中に入っていたこの曲に衝撃を受け、その後何回もこのMVを見直したのをよく覚えています。
本人たちもファンも、アンセムと呼びます。アンセムの説明が難しいんですけど、例えばライブをしたとして演奏されなかったら「なんでや!!!」と思ってしまう曲、という説明でわかっていただけるかなと思います。(私は勘でアンセムという言葉を理解している……。) 要石となるような大事な曲です。
個人的にこの疾走感が大好きで、リストを再生しながら歩いているときにこの曲が流れ始めると、問答無用で走り出したくなります。ふつうに不審者だと思われるか車に轢かれるかのどちらかなので、真似しないでください。
余談ですが、というかこれが一番大事なことなのかもしれませんが、MZMファンの方と話す時、「心を打たれた歌詞・リリックはありますか?」と質問するのが好きでして。統計をとっているわけではないのですが、結構な人数が「Live your life!!」の「死んでないじゃなく生きていたい」(Cメロ前)を挙げます。ファンの心をぐっと掴んで離さない曲なのです。
届いたデモを一緒に聴く動画のエモさがすごいです。楽しそうで眩しい。
一緒にMVを振り返る動画もあります。
2. 「トロピカ☆ナツオーレ 〜俺らの恋した真夏のVenus〜」
アップロードは8月31日の、楽しく踊れる夏曲です。ハッピーでセクシーで、ちょっとだけ切ない感じがたまりません。嫌なことはいったん横において、頭を空っぽにして聴きたいですね。そのハッピーさゆえに、わたしは笑顔が大事になる局面の前に聴くことが多いです。
ちょっとどうでもいい話をしてもいいですか? ある朝この曲を掛けながら(そして踊りながら)身支度をして外出したところ、財布を忘れました。人生で初めての出来事でした。それくらい影響力がありますので、みなさん気をつけましょう。頭の芯までハッピーにして大丈夫な時に聴いてください。
後半にはコーサカさんによる掛け合いのパートもあります。ライブで演奏したら盛り上がること間違いなしの1曲。私はタオルを振り回すタイプのライブに行ったことはないですし、どちらかといえば今までそういうライブを軽蔑していたタイプの陰キャですが、「トロピカ」は全力でタオルを振り回したいなと思います。
デモ曲を聴く回も、夏特有の浮かれた雰囲気が最高ですのでぜひご覧ください。
3. 「ペトリコール」
MZMのチャンネルでは初投稿の曲、かつコーサカさんのソロ曲第1弾。梅雨らしい1曲です。雨の降る空に晴れ間がのぞくような、色々あるけど頑張ろうと上を向ける曲です。落ち込んでいる日もそうでもない日もずっと隣にいてくれます。曇りとか雨の日に聴いた方が立体的かもしれませんね。
身近にペトリコールが大好きという方がいるのですが、「本当嫌だなぁ、で感情を爆発させるところが好き」とおっしゃっていて、それを聞いた私は首がちぎれんばかりに首を縦に振るのでした。上に書いた通り、コーサカさんの表現力が炸裂している一曲だと思います。
そしてなにより、このMVが大好きです。daydreamと一、二を争うお気に入り具合。梅雨の湿っぽい空気感が画面越しに伝わってくるところと、サムネイルの「いる」感がたまらなく好きです。
外の雨の音が響く部屋の中、リリックを作っていくコーサカさん。生活感満載で最高です。
4. 「狼狽」
ファンが待ちに待ったアンジョーさんのソロ曲その1。アンジョーさんの歌声がかっこよくセクシーな曲です。公開後「アンジョーの女」(男性含む) があちこちで観測されました。MVの大きな満月を背に歌うアンジョーさんの姿はまさしく狼男ですね。かっこいい。そして歌詞はけっこう過激……。
私はMZMの曲をメッセージ性とストーリー性という軸で勝手に整理しているのですが、この曲に関してはストーリー性がかなり強いと感じます。そのためか、深読みオタクの考察がたいへんはかどりました。主にタイトルになっている狼狽の語源や歌詞の中身についての考察です。ところがどっこい「君の全てよ僕になれ」という歌詞を見て、理性的な思考のいっさいが消し飛びました。
正直なところ、公開されてあまり日も経っていないのでうまく説明する語彙が今の私の中にはありません。狼狽はいいぞ、としか言えない。(レビューとして成り立っているのか甚だ疑問ですね。) 私は何回もリピート再生して、ようやく正気のまま聴けるようになってきたところです。聴いたら絶対塵になるので覚悟して聴いてくださいね。本当に。今書ける精一杯はこんなものです。
公開前にアップロードされたアンジョーさんのまとめ動画。このギャップにやられた方もたくさんいるのではないでしょうか。
5. 「love letter.」
コーサカさんのソロ曲第2弾。まだ2曲未発表のものが残っているので何ともいえませんが、4曲目の「狼狽」がストーリー性の極致であるとするなら、この「love letter.」はメッセージ性の極致といえると思います。リリックには吸血鬼をモチーフにしている部分もあるので、ストーリー性もあると言えるかもしれませんね。
四の五の言わず、まずは聴いてください。私がレビューするよりもはるかに雄弁です。
「尖ってる」みたいな安易な日本語はあまり使いたくないのですが、なんというか、弾丸めいているなあというのが第一印象でした。正直「love letter.」の中身に関しては語れば語るほどくすんでしまう気がするのでレビューらしいことはあまりできません。「狼狽」に引き続き、私の言葉の無力さが目立ちますがご了承ください。
そんなこの曲の推しポイントはやっぱりコーサカさんの表現力です。声色の使い分けが素晴らしくて、初めて聴いたときは「人間の声ってすごい!」と本当にびっくりしました。コーサカさんは人間ではなく吸血鬼なんですけどね。
6. 「Up-to-date feat.かしこまり」
「ちゃんまり」ことかしこまりさん、パンディさん、そして作曲にバーチャルねこさんを迎えてのコラボ楽曲です。全員upd8に参加していらっしゃいます。
ねこさんについては、以前私が書いたnoteにまとめてあります。よければお読みください。ねこさんはいいぞ。
良い曲すぎて毎日聴いています。もはや日課と言っても過言ではないです。ねこさんの作った曲も、ちゃんまりの歌声も、パンディさんのコーラスも、コーサカさんのラップも、MVも、全部全部大好きで、なにひとつ欠けても成り立たない作品だと思います。
また、Vtuberという新しい文化が生まれ育っていくのを見る気持ちをそのまま曲にしたように眩しい。「Up-to-date」(今日までの、最新の、という意味) の名前にふさわしく、これまでを知りこれからを見据えた人たちが作った曲なんだと思います。この曲にリアルタイムで触れることのできた幸せを噛みしめます。
「Up-to-date」が公開された時期にちょうど私が人生の先行きに思い悩んでいたこともあり、その足元を照らしてくれるような宝物の一曲になりました。絶望に効きます。それはさておきふわふわとお酒を飲みながら踊りたいなとも思う、不思議な重量感のある曲です。
【追記】2019.05.08
1stメジャーデビューアルバム『MZM』が発売されました。おめでとうございます。
noteのApple MusicとSpotifyの埋め込み機能を使ってMZMの曲を紹介できるなんて……本当におめでとうございます。
まずは通しで聴くのをお勧めします。「Live your life!!」で駆け出すように始まって、「トロピカ☆ナツオーレ」でぶち上がったあと、それぞれのソロ曲パートに入っていきます。「ペトリコール」、「狼狽」、「love letter.」とグラデーションをつけてダークな雰囲気になり、「up-to-date」によってそこに一条の光が差し込む感じがしました。構成が素晴らしいです。
人間は一度終わったように感じた曲がもう一度始まると気持ちが盛り上がる、と聞いたことがあるのですが、「love letter.」からの「Up-to-date」はまさしくそんな感じで最高の曲順だなぁと思いました。そして2曲ともがV界隈に向けた歌である、というのもアツい。
全12曲のうち、前半6曲のレビュー(感想文)をお送りしました。後編もまた、このふんわり主観的な調子でお届けしたいと思います。
ということで前編で取り上げた楽曲の曲順の感想でこの記事を終わりにしたいと思います。お読みくださりありがとうございました。
後編はこちらから
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