結婚式ロス
40才を過ぎたあたりから、すっかり結婚式からご無沙汰になってしまった。
20代後半から30代にかけて、平均で年に1~2回、多いと3~4回ほど誰かの結婚式に参列する機会があり、嬉しいし有難いことだったが、いわゆるご祝儀貧乏みたいになっていた時期があった。
大学のサークル仲間や先輩、新卒で就職した同期、会社の同僚、親族の結婚式などに幾度となく参列し、新郎新婦に向けて「おめでとう」と笑顔を向ける。自分自身の結婚式で呼んだ相手からも大抵は招待状が届く。結婚式自体は恐らくプランナーが工夫を凝らし、コンセプトが少しずつ違ったものの、主賓のスピーチ、ケーキ入刀、お色直し、両親への手紙など、お決まりの演出のオンパレード。それでも2人の新たな門出に立ち会えることは貴重な経験であり、何のためらいもなく祝福の言葉を贈ることができることは、自分にとっても嬉しい出来事だった。
最後に出席したのは大学のサークル同期の結婚式で、新郎にとっては2回目の結婚だった。1回目の時はいつの間にか結婚していた(苦笑)が、今回は当時の仲間を含め呼んでくれた。余興でドラムセットやアンプをレンタルしてバンド演奏をしたことを鮮明に覚えている。久々のバンド演奏も楽しかったし、結婚式自体も立派な良い式だった。
それ以降、正装する機会と言えば、親族が亡くなった時や法事の機会のみになってしまった。微妙にサイズ感の合わない礼服に染み付いた焼香の香りが、その転換期を象徴している。お気に入りのスーツは出動機会が得られないまま、クローゼットの中で沈黙している。
自分の周囲に結婚式をするような年齢の人がいなくなってしまった。正確には仕事関係でその機会がある人はいたけれど、あくまでもそれは仕事上の付き合い。自分が呼ばれる機会はよっぽどのことがない限り訪れない。
自分自身も40代になってから2回目の結婚をしたけれど、いわゆるナシ婚、フォト婚に留まり、結婚式や披露宴などは用意しなかった。
それにしても、誰かの結婚式を祝える機会というのが、こうも減るものだとは若い頃は認識していなかった。考えてみれば当然なのだが、周り(同世代)の結婚人口は減っていく。僕の妻もそうだが、40を過ぎて今更煌びやかな式を挙げ、主役になるというシチュエーションに耐えられないという意見も多そうだ。それに年を重ねると、そもそも親しい友人自体が減っていく。SNSで今でも薄く長く繋がっている人はいたとしても、結婚式に呼ぶというのは極めて特別なことなのだ。
わざわざ言うのもおかしなことだが、誰かの結婚式に出席したいのに機会がないという、結婚式ロスとも言える寂寥感が心の底にある。今どきは結婚式を盛大にやるというカップル自体が少ないかもしれないが、誰かに笑顔で「おめでとう、お幸せに」が言いたい。自分もナシ婚だったくせに身勝手かもしれないが、あの祝福と喜びに溢れる空間をどこかで欲している。
今、縁あってZ世代を中心とするベンチャー企業で仕事をさせてもらっている。結婚をするかもしれないし、もしかしたらしないのかもしれないが、その可能性が少なからずある世代のキラキラした姿を見るにつけ、自分にとってのあの頃、友人の結婚式でバタバタしていた頃のことを懐かしく思い出すのだ。
勿論、結婚するかどうかなんて、結局は本人(たち)次第だし、結婚式を挙げるかどうかも他人がとやかく言うことではない。
ただ、もし機会に恵まれるとしたら、誰かの結婚式であの特別で非日常な空気をまた味わってもいいなと思っている。
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