「ミス・シャーロック」 - 賢く気高く美しく。願わくばふたたび観たいシャーロック・ホームズ
★★★★★+
シャーロック・ホームズとその相棒ワトソンが「もし現代の東京にいたら」「もし2人とも日本人女性だったら」という設定で繰り広げられる作品。Hulu JapanとHBOアジアによって共同製作された一本です。長らく観たかったドラマのひとつでしたが、Hulu再入会を機にようやく観ました。なるほど、この竹内結子は本当に絶妙なキャスティングだと思います。膨大な知識と天才的な頭脳、壊滅的な社会性、大切な相手にだけ示す子供のような愛情。国も性別も違えどホームズに対して抱いていたイメージをそのまま宿した生身の人間として彼女がそこにいる気がしました。そしてワトソンとしての貫地谷しほり。ホームズと対照的に母性と人間味のかたまりのような存在に彼女の柔和な雰囲気がよく合います。このふたりが女性であることがこんなにもしっくりくるとは想像しませんでした。匂い立つ世界観だけでも心を掴まれる冒頭。
外科医師の橘和都(貫地谷しほり)は、医療ボランティア先のシリアから帰国した日の空港で恩師の衝撃的な死を目の当たりにします。そして恩師の妻とともに受けた事情聴取にやってきた一人の女性と出会うことに。彼女の名前はシャーロック(竹内結子)。通称なのか本名なのかも分からず得体の知れないシャーロックですが、彼女は「捜査コンサルタント」として難解な事件が起こると呼ばれ、警視庁捜査一課の礼紋警部(滝藤賢一)、柴田巡査部長(中村倫也)に手を貸しているのでした。彼女の傍若無人な言動に抵抗を感じる和都でしたが、その人並み外れた推理力には心から感服します。シリアからの帰国で宿なし職なし状態だった和都は、シャーロックの兄で内閣情報調査室の内閣情報分析官である双葉健人(小澤征悦)の提案でなぜかシャーロックとルームシェアを始めることに。やがてシャーロックと和都のふたりはコンビとして様々な事件に関わるようになっていくのです。
物語はまさにシャーロック・ホームズ。しかし「現代日本」と「日本人女性」という斬新な解釈に上手にはまっており、何より偏屈の代名詞とも言えるシャーロックを違和感なく消化している竹内結子。その脳内で知識と推理が瞬時に結びついていく様子はとにかく痛快です。和都は和都でそんな彼女の能力を心底認め、無礼な振る舞いを心配しつつ、無邪気な子供のようなシャーロックを優しく受け止める友人になっていきます。人並み外れた度量を感じさせる和都に心を許していくシャーロックも愛しい。
事件の数々は適度な反転、巧妙なトリック、そしてもちろん黒幕として裏で糸を引くあの人がいて…変に奇怪になりすぎたり安っぽくなることがなく、上質な推理ドラマを楽しむことができました。重ね重ねキャストとロケーションが良いと実感します。小澤征悦のマイクロフトもまたツボでした。妹同様のシャープな頭脳に妹よりまともな常識を持ち合わせ破天荒な妹を見守る姿。竹内結子と実の兄妹のように見えてきます。
最後の事件を経て、やはり観たかったシャーロックの帰還。ただただ惜しまれるのは竹内結子の不在です。こればかりは彼女のための役だと感じました。続編は想像の中に。
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