「愛しのホロ」 - ポップだけど素朴で飽きないSF
★★★★
映像のクオリティというのもドラマにとって意味が大きいんだなと思った作品。ことさらAIみたいなテーマを扱う場合は、映像に違和感があるだけで物語自体の良し悪しが入ってこなくなります。これは、その違和感がなかった。SFっちゃSFなのですが、SFであることにとらわれず物語に没入できる良作品でした。
全体を通してポップと言うか、程よくライトで気を楽に観られるドラマでもあります。全12話と短めなので、時間の意味でもとてもとっつきやすい。敵だったり過去の因縁だったり、入りはAIとの恋愛(は成立するのか)みたいな部分だったりするので若干は悲しい展開もあるのですが、キャラクターの編成も充実していて、洗練されたつくりなので重苦しくはなく。
それにしても韓国の俳優さんはひとり二役が達者な方が多いイメージです。この作品ではユン・ヒョンミンがひとり二役(冷徹な人間とホスピタリティの塊みたいなAI)。同じ顔なので対比がよく活きています。AIのホロの可愛らしさが抜群に世界観を支えていて、とにかく癒してくれる。こんなAIが実在したら…と思います、ほんとに。
結局は人間の方のユン・ヒョンミンとヒロインのコ・ソンヒとのラブストーリーに帰着してゆくのですが、ホロと融合していくかのようなユン・ヒョンミンの変化が観ていてとても楽しいです。
ユン・ヒョンミン、いろいろなドラマに出ていますが私は初めて彼を観たのがこのドラマだったので、他のドラマだと悪役だったり癖の強いライバルだったりが多くてびっくりしました。「愛しのホロ」にあっては彼はちょっとひねくれてはいるものの、実際は少年のような純粋さを秘めた優しい人です。
コ・ソンヒ演じるヒロインの素朴な可愛らしさも飽きずに観ていられる秘訣。全体に登場人物は人間味のある人が多くて素敵な世界です(ラスボスはどこまでも敵っぽいキャラですが)。
うまく言えませんが、10代の頃に洋楽のヒットソングを聴いたときみたいな、カラフルなアメリカのお菓子みたいな… 不思議な爽やかさとポップな鮮やかさが漂って、観終わって「よかった」と思えるドラマでした。