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「夜を歩く士〈ソンビ〉」 - 時代劇の世界に映える美しい吸血鬼たち

★★★
高まるイ・ジュンギ熱の流れで観ました。韓国の歴史モノはとかく画面が艶やかで見飽きません。この作品は「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」に感じた「これは現代のものでは…」みたいな細部の違和感がなく、比較的気軽な時代劇として楽しめました。

かつて仕える主君を殺した吸血鬼クィを仕留めるべく、自らも吸血鬼となりながら120年の時を生き続けるキム・ソンヨルを演じるのがイ・ジュンギ。本当にどんな役でも大昔からその人であったように自然に自分のものにしている役者さんだなあと思います。似たような装いでも麗のソ王子とはまた違い、大人(というか100歳超え)の落ち着きと、人外の強さを持つゆえの安定感が素敵です。恋人のことは優しく慈しみ、ピンチには抜群のスピード感で駆けつけますが、ひとたび吸血鬼としての能力を発揮する場面になれば、牙を剥いてバイオハザードな形相に。それがまた通常モードの涼やかな色男ぶりを引き立てて、イ・ジュンギの魅力をたっぷり味わえるつくりの作品だと思います。

軸はあくまでラブロマンス。序盤こそ、キム・ソンヨルは120年前に血を吸うことで自ら殺めてしまったかつての恋人を思い続けているのですが、現代で出逢った男装の本売り、ヤンソンの無邪気な可愛らしさと一途さに新たな愛をおぼえ、もう戻れない人としての暮らしに思いを馳せるようになります。

ですが、王を操る存在として君臨するクィを倒さなければ世界に安寧は戻らないわけで、結局はクィとの闘いに身を投じていくことに。クィを倒すための「秘策」として伝えられてきたものもまた鍵となり、王の跡継ぎである世孫(チャンミン)との関わりも生まれながら物語は進んでゆきます。

全体としてはSF時代劇なので、お伽噺のような漫画のような世界観の中を展開していき、敵味方も入れ替わりながら最後までスピード感ある流れ。直近の韓国ドラマに比べると多少惜しい映像表現もある気がしますが、ロマンティックなシーンもあればアクションも多くて一気に観れます。世孫のキャラクターが一見は準ヒーローなのになんだかんだ情けなさを拭いきれず終わるのはモヤっとしなくもありませんでしたが。

一方で観るほどに惹かれたのが吸血鬼のクィ。演じるのはイ・スヒョクなのですが、低い声と綺麗な顔立ちが孤高の吸血鬼にぴったりで、基本はラフな格好なのですがたまにきちんと髪をあげて整った装いになるとまた美しい。クィは単に人の感情を理解しない冷酷非道な獣のように描かれていくのですが、終盤ではその複雑な心中も少し覗かせるようになり、クィの物語ももっと観てみたい気分になりました。

ラストシーンは解釈の分かれるところのようなので、個人的にはハッピーエンドとして受け取っています。最後のヤンソンがまた可愛らしかった。

話数も多いのでそれぞれのキャラクターの移ろいも面白いものです。非日常感を楽しみたいときにおすすめの作品です。

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