「バッドガイズ〜悪い奴ら〜」 - 人を信じるときの根拠は
★★★★
パク・へジン出演作品をあれこれと遡っていた中で出会った一作。ノワールと言うんでしょうか。ダークで血の気の多くて、裏切りと人間味がせめぎ合う男くさい世界。韓国映画でよく見る雰囲気ですが、これは全11話(比較的短め)のドラマです。
一応主演がパク・へジンになるのでしょうか。とは言え、メインはマ・ドンソク、チョ・ドンヒョク、キム・サンジュンをあわせた4人で、とにかく戦闘に強そうな豪華なメンツ。乱闘シーンなどは見応えがあります。
パク・へジンは連続殺人で服役中のイ・ジョンムンと言うサイコパス、マ・ドンソク、チョ・ドンヒョクもそれぞれ服役囚、キム・サンジュンは娘をパク・へジンに殺された(となっている)刑事で、観る側は全編通して「本当にイ・ジョンムンが連続殺人を犯したのか」と言う疑問と向き合うことになります。
マ・ドンソクとチョ・ドンヒョクは犯罪者ですが人間味があり、視聴者も安心して信用できるキャラクターですが、一方でキム・サンジュンとパク・へジンが何を考えているのかは全く読めない。キム・サンジュンは悲劇の復讐のために間違いなく何かを企んでいるし、パク・へジンは殺人を犯しているいないに関わらずサイコパスと言う役柄なので、そもそも普通の人と同じ法則で感情を持って行動するわけではなく、時折見せる気を許した素振りも本当なのか分からないのです。
信じていいと思える場面、やっぱり信じてはいけないかもしれないという場面が振り子のように訪れ、気持ちが落ち着かなくなり、イ・ジョンムンの真実を早く知りたいと一気に最後まで観てしまうドラマでした。身近にそうそうイ・ジョンムンのような人はいませんが、「人を信じる根拠ってなんだろう」と、そんなことを考えてしまいます。結局は、時間の積み重ねの中で、相手を信じたいと感じる瞬間がどのくらいあるかなのかもしれません。
パク・へジンは不思議なほどサイコパスの役がハマります。存在感はあるけれど奥が見えないような、独特の目。ですが時に自分自身のことが分からず動揺したり、ほんの少し周囲に心を開いたり、傷ついたりするふとした揺らぎの表現が絶妙な気がします。「チーズ・イン・ザ・トラップ」のユ・ジョン先輩もそうでしたが、心のシャッターをスッと降ろせてしまう、そんな感じです。ですが「星から来たあなた」のように純粋にヒロインを追いかけるような役のときは、同じ目なのに感情が丸出しになっていて、面白い役者さんだなと。このドラマでは、そんなパク・へジンの目に振り回されました。
同じ"読めない"タイプでも、キム・サンジュンは感情が極まってのことなので、根本的には娘のために動いているはず、と言う信頼があります。観ている側はどちらかと言えばキム・サンジュンの目線に近くなっていくのでしょうか。傍らで、マ・ドンソクとチョ・ドンヒョクのストーリーは非常に人情があって、そのコントラストもまた楽しめます。
長いトンネルを走り抜けたような後味が好きな作品です。
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