「恋するアプリ Love Alarm Season1」 - 思春期の毒と無邪気
★★★★+
高校生が主人公の恋愛ドラマを観て楽しめるのか、とも思いましたが、これは面白かったです。と言ってもまだシーズン1。間も無くシーズン2が始まると思いますが、完全に2の存在が前提になっており1だけでは話が片付きませんでした(ちなみにシーズン1は全8話)。
自分のことを好きな人が半径10メートル以内にいるとアラームが鳴るアプリ「Love Alarm」の登場で、若者たちの恋愛や人間関係に大きな変化と歪みがもたらされます。その中で出会う女子高生のキム・ジョジョ(キム・ソヒョン)とモデルもやっているイケメン転校生のファン・ソノ(ソン・ガン)。ふたりの周囲の人々も巻き込んで広がる恋愛の渦とLove Alarmの弊害に、若いふたりは苦しむことになります。
相手の恋心が分かってしまうという極めてファンタジーだけど現実化しそうなアプリの設定。それに振り回されていく若者たち。恋愛ってそんな機械に判別してもらわないといけないものだっけ?というむず痒さの中で、主人公たちが初々しい恋を育んで傷を負って、少しだけ成長する…必ずしも正解を教えてくれない青春小説のような物語は、ちょっぴり苦味があるけど心に養分を与えられる温かい飲み物のようでなかなかやみつきになります。
無邪気にアプリが教えてくれる「自分を好きな人」にはしゃぐ少年少女たちの姿は、思春期特有の毒みたいなものを感じさせます。中盤に主役のソノとジョジョのカップルが修学旅行で訪れる済州島の、咲き乱れる花の色鮮やかさがそれを表してるように見えました。まだ自分の欲求に素直で、瞬間の花火のような恋愛の風景。
シーズン2へと続く終わりでは主人公たちが少し大人になって再会するので、ここから彼らの恋愛がどんな風に色合いを変えていくのかが楽しみです。
ソノ役のソン・ガンは一見すると顔立ちふくめアイドルのようですが、拒絶されてもジョジョを諦めきれず健気に待って涙を流すシーンはただただ美しかった。少年と大人の間の危なっかしさをよく表現できる役者さんな気がします。逆にジョジョはまだ少女なのに大人にならざるをえない環境で精神がひと足先に成長してしまっている雰囲気をうまく醸し出しています。
そんなふたりのバランスを上手に見せてくれるシーンがありました。自分がジョジョのために良かれと思ってしたことが、彼に横恋慕する女子にバラされてしまい、ジョジョを傷つけたと落ち込むソノ。よくある展開だと、ジョジョが怒ってしまうのでは…とハラハラするのですが、しょんぼりするソノの頭を「ソノはいい子だね」と撫でるジョジョ。
ふと穏やかな気持ちになって、10代のふたりが、このふたりなりに必死で紡ぐ恋愛をずっと眺めていたいと思わされるシーンでした。
問題のアプリを開発した人物も重要なキャラクターとして存在しており、シーズン2は果たしてどんな形に広がっていくのかあまり予想もつかないですが、ラブ・アラームの呪縛から抜け出してあるべきところに落ち着いてくれたらと配信を待ち望むばかりです。
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