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「ライフ・オン・マーズ」 - 媚びずに真面目に紐解かれる良質リメイク

★★★★

イギリスのドラマの韓国リメイク版を観ました。

オリジナル版は未見なのと、うっすらあらすじだけ見た時点ではもっとアップテンポな作品かと思いきや、非常に"真面目"なドラマ!という印象の作品です。SF要素もありますが、基本は良質で骨太めなサスペンスが軸になっていて飽きずに最後まで一気に観れてしまいました。

チョン・ギョンホ演じる現代の刑事、ハン・テジュが1988年にタイムスリップしてしまうという入り方ですが、それが本当にタイムスリップなのか夢の中にいるのか、状況は分からないまま話は進んでいきます。

舞台は警察。よくあるどんでん返し的な派手な推理モノとも違って、いくつかの殺人事件が、点だったり線だったり、繋がって複雑により合わさって、ひとつの大きなストーリーを成してゆく感じです。登場人物も多いですが変に飛躍することなく、地に足つけて進行していると感じました。それが面白さの地力になっています。

ハン・テジュと同僚の女性巡査ミス・ユンとの間に淡い恋愛の気配も漂いますが、メインに描かれるのはテジュとパク・ソンウン演じるカン課長とのバディ。パク・ソンウンはどう転んでもいい役者さんだなと思わされます。豪快で人情味あふれるカン課長が滲ませるテジュへの信頼と、そんな課長に心を許すテジュは、互いにないものを補い合って味わいのあるコンビへと熟成されてゆきます。

紅一点のユン巡査が華を加えつつ、男だらけのチームの硬派な世界観に80年代の風合いを交えたスタイリッシュな映像には、近年の韓国ドラマのクオリティの高さを再認識しました。折々で登場するレトロな飲み屋のシーンが、非現実を象徴しているのか、どこか異世界感があって好きです。

チョン・ギョンホは他の作品で見てきた軽やかな色男風味とはまた違って、優秀で実直な刑事をうまく演じています。ほとんど冗談なんて言わなそうだけど根は優しい…そんなテジュを生来の性格みたいに表現していて、先日まで観ていた「刑務所のルールブック」とは別の俳優さんのようでなんだか面白かったです。

比較的オープンなエンディングを迎えるというのは知って観ていましたが、なるほどそうなるのか!といった感じ。もう少し根拠(?)があってもよかったかもしれませんが、私としては結構お気に入りのラストになりました。このドラマではチームのみんなで乾杯する光景がとても好きなので、ストーリーとしての着地というよりも、幸せな気分で終われた…といったところでしょうか。

変な媚がなくて、鑑賞後は丁寧に丁寧に煮込まれたシチューをお腹いっぱい食べたような満足感。展開の派手なドラマやキラキラしたドラマにくたびれてきたら、ぜひまた戻ってきたい一作です。


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