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「トッケビ」 - 圧倒的パワーを感じさせる"最後まで作りきった"ドラマ
★★★★★
そもそも、韓国のドラマをそれと意識して初めてちゃんと観たのがこの「トッケビ」でした。それ以前の私は、たぶん世間の多くの人と同じで「冬ソナ」からアップデートできていないタイプだったのですが、ふと知り合いに「トッケビにハマっている」「なんでもいいからとにかく観てみろ」と言われたのです。
あらすじを聞いてみると、不滅の命を与えられてしまい高麗の時代から何百年も孤独の中を生きながら、自分をそんな永遠の生から解放してくれるという「トッケビの花嫁」を探している男キム・シンと、その「花嫁」なのではないかと思われる、不遇な環境に育ちながらも屈託のない女子高生・ウンタクによる恋愛モノで、輪廻転生の世界観でイケメンの死神も出てくる、と。なるほど、韓国ドラマを全く知らなかった私としては特に名前を知っている俳優が出てくるわけではないけれど、そういう突拍子なくて壮大なストーリーは意外と好きかもと思い、ものは試しに観始めました。全16話、3日で完走してしまいました。今思えば、これがすべての沼の始まりでした。
これはちょっと今までに観たことのないものを観たな、と感じたのを憶えています。
まず舞台がでかい。ところどころに挟まるカナダのシーンはまるで西洋のドラマのよう。ところどころに挟まるトッケビの過去(何百年単位の過去)のシーンは大河ドラマのよう。死神ふくめファンタジー設定を表現するシーンのCGクオリティも高く、4次元に広がる舞台の圧倒的な大きさはちょっと日本のドラマでは考えられないなと思いました。
そして笑いも涙も振り切って表現する独特のテンポ。シリアスな展開をあえて挫くように差し込まれる笑いが普通に笑えてしまい、この壮大なコンセプトの中にあってリアルな日常との遠近感を巧みに表現しているのです。これはあまり体験したことのない緩急でした。さっきまで笑えたのに、もう涙が止まらない…!みたいな事態に陥るのです。
そしてキム・ウンスクという作家の得意技なのかもしれませんが、とにかく俳優をカッコよく見せる場面づくり。トッケビと死神がヒロインを救いにやってくる有名なウォーキングシーンは、予備知識のなかった私ですら「これは半端じゃない」と思いました。俳優2人のずば抜けたスタイルあってのものではあるのですが、ひとつひとつの絵が本当に緻密で美しい。
もちろん、最もパワーがあるのは物語で、いろいろな問題を乗り越えてようやく心が通ったところで訪れる悲劇からのハッピーエンド…と思いきや…というこれでもかと言わんばかりに続くどんでん返しに、自分が沼に落ちていく音が聞こえるかのようでした。何より、最終的に迎える結末のあまりに見事な着地に思わず拍手喝采したくなるほどでした。
16話を観終えて感じたのは、これを作りきるのにどれほどのエネルギーが、胆力が必要だったのだろうということ。もし何かを途中で諦めたら、こんな風には終われなかったのではと思いました。私同様に韓国ドラマの入り口を探している方がいたら、「トッケビ」は最強かもしれません。
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