こっちの人も、やさしいから
もう10年くらい前になるだろうか。いや、結婚してなかったからもう少し前か。埼玉に暮らして数年ほどのときに、彼氏(現在の夫)が高熱で意識朦朧になったときがあった。狼狽しながら救急車を呼んだ。すでに真夜中。アパートの廊下に出て、近所の灯りが消えた病院を見つつ、電話を何度もかける。幸いにも搬送先が見つかり、救急車が来てくれた。
赤信号を振り切り駆け抜ける救急車。道中、救急隊員の方が「こっちは、人が冷たいでしょう」と言ったのを覚えている。今もそうだが、私はずっと故郷の訛りが抜けておらず、おまけに喋り方もたどたどしい。田舎から出て間もないのに大変だなと感じて、救急隊員の方はそのように言ったのだと思った。
当時はなんと返したのだろう。ずっと喋りかけてくださっていたのに、申し訳ないけどだいたい忘れてしまった。
最近、10年以上住んだ埼玉を出るにあたって、寂しいなって思うんだ。あんまり上手く話せなくて物覚えも悪い私だけど、それでも人づきあいは増えた。子ども関連のつながりとかね。ご近所さんとも、庭いじりの話や、ジョギングの話とかする。ママ友が、友達って言ってくれたのが嬉しかったな。
今の家は売らないから、そのうち戻ってくるかもしれない。だけどご近所さんは結構なお年の方もいるから、どうなんだろうなって思ったり。
そのようなことを日中は考えないようにして、精一杯働いて、走って、ダイエットして、引越しの準備終わらない。キーっ!!っと言っているけど、やはり寂しいのだ。こっちの人もやさしいからさ。
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