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「一口ちょうだい(一口あげるジィッ……)」にまつわるつらつら

魂の猫ミーム動画

 「猫ミーム」動画が流行っていた。

 流行ってい"る"ときに記事へ着手していたが、すっかりブームは過ぎ去った。文章を書く気力を継続させるのはときに難しい。
 けど、また今日、くだんのことをされて、やっぱりやっぱり許せないので、再度筆をとり、書き上げることにした。

 印象的な音楽に乗せてチャーミングに動く猫(やその他動物)を、フリー背景画像に合わせてシーンを演出させる。少し前には、そんなイカした新領域がまたたく間にXを席巻し、留学体験、推し活、社会人一人暮らしの休日等々、さまざまな領域の個人が動物の愉快な動きを通じて自身のワールドを表現していた。
 流行りに乗っかって「一口ちょうだい」がマジで無理である件を1分13秒にしたためたら、賛否両論はあれど、思いのほかウケて、なかなか楽しかった。

 と、この動画で発散したと思いたいが、日頃の鬱憤はこの程度では晴らされず、また例によってNoteにつらつら書きつらねる陰キャっぷりを発揮するというのが、この記事の概略である。
 陰キャというか、考えている量に対して表出しない言葉が多い。月に一度、デトックスで通う整体師さんは、私の肩や首まわり、頭皮を触るにつけ「今月も考えに考えましたね」とコメントしてくれる。

 自分の感覚に正直に生きるようになると、私自身、いろいろなところで我慢をしてきたのだと気が付く今日この頃である。
 そりゃあ「一口ちょうだい」のノリが、正しいと信じて疑わなかったこともあった。
 一緒にいる人に、不快な思いをさせてはならない。このビッグウェーブに乗ってこその友達だと。人間も動物である。食事を囲むことで親密度が高まることは証明されている。
 持ってけドロボー状態。どうぞどうぞ! 食べて食べて! と振る舞えば、周りに笑顔が溢れ、楽しい雰囲気がはじける喜びに迷いを感じていなかった時代もあった。
 「優しいね」と言われ、仲間に入れてもらえた気がして、誇らしかった私へ。
 あのねえ、あんた、本当に心から楽しんでいる? その行為は自分のものさしでは許せないに位置するでしょう?
 嫌なことを嫌だと自覚して、嫌なことを嫌だと思う自分をそれでいいと許せて、嫌なことを嫌と社会に向けて自分の言葉で伝えられるようになったら、人間ひとつ先に進む。

 たぶん。

なぜ「一口ちょうだい」が嫌なのか

 私は、どんな何を食べるにしても、断じて「一口ちょうだい」が許せない。その理由を掘り下げられるまで帰れま10。天下のトヨタさんのなぜなぜ分析でもしたらどうか。
 いや、あれは根本原因の解決をめざすためのものであって、私は解決するつもりがないので、やっても意味がない。
 が、あえてやった。
 結論、私が作成した猫ミーム動画では、端的に「汚い」と表現したが、深く考えるとそうではない感情のほうが大きいことが判明した。
 もちろん「汚い」も間違いではない。ただ、それであれば、新品のカトラリーを用いて自分の料理を持って行かれるシチュエーションであれば許されるではないかといった解決策が生じる。
 さすが、トヨタさんのなぜなぜ分析……って、いやいや。

 ともかく根幹である。
 私は、いくつも選択肢がある中で、体調や気分等と相談しながら、今日はこれにする! を、自ら選び取るのが飲食店の注文だと考えている。
 言い換えると、自分の注文に責任(こだわり)を持っている。
 自分の注文に責任を持つとは、あれも食べたかったし、これも食べたかったけれど、今日はこれを芯から味わうのだと腹を括ることである。
 注文を決めた瞬間に、私は、これから食べる料理に思いを馳せる。
 つまり、一口のお返しに、トレードで相手の注文をもらっても、たとえそれが何であろうがまったくフェアではない。 なぜならば、相手からの”一口”は、私が選び取らなかったものだ。 物議を醸しそうな少々強い言葉を用いると、いらないものを押し付けられたのと同じ感覚なのである。
 さらに私は、とくに外食においては、メニューを選ぶ段階で、一連の食事後、口の中がどういう状態で終わっていたいかを思い描いている。そのために、どんなタイミングでどこを、どのくらいどんな風に食べたら理想の「ごちそうさまでした」ができるのかを考えながら、つまり、ストーリーをつけながら食べている。相手からの「一口ちょうだい」はストーリー崩壊の横槍でしかなく、許されるものではない。
 少しでもシェアする可能性があるなら頼む段階で話をしてほしい。贅沢を言うと、一口シェアする時にどの部分・なんの具材を持っていきたいかレベルで相談してほしい。
 むろん、シェアは一切しないのが一番よい。したくない。
 あ、それ頼むんだ。じゃあ私はこっちを頼もう! と、被らないように別のものを頼む人間もムカつく。注文の最中に、被らないようにされることもある。もはや確信犯である。
 私は私がお金を出して選びとるものに責任を持つ。だからあなたも、あなたのお金で行う、あなたのチョイスに責任を持ちなさい。頼むから。
 いろいろ書いたが、もっと簡単に言うと、自他の境界をしっかりしろ。あなたのものはあなたのもので、私のものは私のものという当たり前の原則を、やすやす飛び越えてこようとするマインドが信じられない。

これまでに経験した一口クレクレ魔の技法まとめ

・ストレートに要求する

 言えば許されると思うな。これをする人間の中には、一定数、要求の言葉とともに、カトラリーを持つ手をこちらへ迫らせてきていることもある。何かしらの返事をする前に私の食事へ手をつけられたら、即刻食事中止である。

・「私の、一口食べる?」と、先に恩を売ってくる

 「いらない」というと「えーなんで! 美味しいよ?!」と返されることもある。美味しかろうと何だろうと、なぜって、私が選んだものではないからいらないに決まっているのである。

・「美味しそう……」と、こちらの「一口食べる?」を遠回しに要求してくる

 「美味しいよ。ところで……」と、別の話題に移ろうとすると「え?!(訳:「いいよ〜」「一口あげる」って言ってくれないの?!)」と返された経験がある。
 いやいや。こっちが「なんで!」である。

とはいえ断りにくいのはなぜか

・「ケチ」と言われるのが腹立たしい

 こう言われた場合、私は私のお金で好きなものを選んで食べているのに、ケチなわけがあるか! と言い返す必要が出てくる。その労力を割くのが本当にアホらしいし、そもそも「ケチ」だなんて言われなければならない筋合いもないので腹立たしくって仕方がない。

・相手も私の嫌な部分に多少目をつむってくれていると考えると、そこに対するトレード意識を持つ必要があるのではないかと考える。

 万人に好かれることは不可能である。
 私は私で、自分の嫌なところを自覚している。また、人によっては、私自身は長所であると考えている部分に対して批判的な眼差しをお持ちの場合もあるだろう。
 と思った時、相手の「一口ちょうだい」は、相手の悪いところなので、ほかの良いところのために我慢しなければならないのではないかと考えてしまう。
 だが断る。最終的には断っていく。

マジで無理すぎ歴代「一口ちょうだい」ワースト3

3位 自家製手捏ねハンバーグを大きく一口取られた代わりに、「私もこれあげる!」と、添加物たっぷりな赤ウインナーを押し付けられた「一口ちょうだい」

 それで等価交換になっていると考えておられるのであれば、末恐ろしい。当然、ウインナーは断った。いらん。

2位 許可を出していないのに、舐めるような眼差しでこちらのボロネーゼを見つめ「一口ちょうだい」と言うなり、こちらは怪訝な顔でどう断ろうか考えていた瞬間にスプーンを突っ込んでソースを「味見」された「一口ちょうだい」

 即座に睨みつけ「人のものをなんだと思っているのか」と怒ったら、この会以降、連絡がこなくなった。

1位 「一口ちょうだい」と言うなり、間髪入れずにフォークを突っ込んでいちごまでショートケーキを持って行かれた「一口ちょうだい」

 これは、この記事を書いたときには、ごくごく最近の話であった。この事件でもって、私は猫ミームで「一口ちょうだい」を恨みまくる世界観を表現するに至った。こんな奴は久々だ。モンスターかと思った。境界が狂ってやがる。Xでも騒ぎ散らした。頭がおかしい。
 夜ご飯のあと、カフェをハシゴしたのだが、そこで、あの女は、お腹がいっぱいだからと飲み物だけを注文した。だがしかし、いざ私のケーキが運ばれてくると、自分も食べて当然という顔でカトラリーを手に持ち「一口ちょうだい」と言いながら、許可を待たず、ねぶったフォークをケーキにブッ刺したのである。
 もちろん激怒した。
 その夜は、あまりに頭にきたので、アドレナリン全開でなかなか寝られず、睡眠薬をキメて強制的に寝た。食べ物の恨みである。
 激怒したあと、多少は交流があったが、彼女はその後パートナーができ、みごとに音沙汰なくなった。

[結語]なお私は、一人っ子ではない。

 けど、そういうスタイルでない食べ物を他人とシェアするのは解せない。心から解せない。心底解せない。

 「一口ちょうだい」に対する角の立たない断り方はあるかググッたところ、結局、どう伝えても角はたつと読んだ。
 作成した猫ミームでは、相手に対して反論できない流れにしていたが、実態は、きっぱり伝えている。「一口ちょうだい」ムーヴメントを起こされたときには、まずはそうしてきっぱりと真顔で断り、自分の注文に誇りと責任を持っている私の価値観をとうとうと説くスタイルを今後も続けていきたい。
 たとえあなたの一口をもらっても、埋め合わせは出来ないのだと。

 とは思っているが、万が一超いい言い方や方法があったら教えて欲しい。

 ちなみに今日の「一口ちょうだい」は、言われた瞬間に、こいつもかよ、ありえない、絶対に嫌だの表情が全面に出ていたらしい。
 深呼吸し、言葉を重ねる前に、相手が「あ! あ! ごめんね! 汚いよね! 嫌な人もいるよね!」と、察してくれた。
 決して汚いから嫌なのではないと、私の価値観を丁寧に説明した。そういう考えの人もいるのねと目を丸くしていた。
 彼女にとっては、暑い暑いお盆の終わりに、若干ひんやりな未知との遭遇になったに違いない。まあ、てなわけで、どうぞコンゴトモヨロシク……

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