オーストラリア森林火災・地球温暖化と動物たち
「すーしゅんさん!いてもたってもいられません!」
1月中旬、突然の知人からのLINEの通知に事情を聞くと、オーストラリアで発生していた大規模森林火災の話でした。知人はオーストラリアに思い入れがあり、そこに暮らす人々や動物たちを案じての相談だったのです。
残念ながら僕には話を聞くことぐらいしかできませんでしたが、少しでも知人の力になれればと思い記事を書くことにしました。ニュースでも取り上げられていたのでご存じの方も多いと思いますが、事の概要から入り、オーストラリアの昔を振り返りながら、地球温暖化と対策について考えてみます。
■オーストラリア森林火災
2019年9月以降、オーストラリア東部や南部を中心に森林火災が多発。約半年もの間火災は広がり続けました。火災による焼失面積は日本のほぼ半分に相当する約19万平方km、死者33名、家屋2500棟以上、動物12億5000万匹以上の被害が出ました。犠牲になった動物は爬虫類、ほ乳類、鳥類の数で昆虫などは含まれていません。
火災の原因は、気象当局によると落雷や枯葉の摩擦、火の不始末、放火などの可能性があると考えられています。実はオーストラリアは元々山火事の多い地域で多くの生物が火災でも生き延びられるよう進化を遂げてきました。その代表例がユーカリです。
しかし、そんなオーストラリアでも未曾有の事態となり、ここまで火災を長引かせ、被害を大きくしたのは地球温暖化の影響と言われています。温暖化により、火災の原因となる落雷が増え、高温で乾燥した土地では燃えやすい状態になりました。
■コアラ危うし
今回の火災では特に、オーストラリアの固有種である可愛らしいコアラへの被害が注目されました。手足に火傷を負っている痛々しい姿を目にした方も多いのではないでしょうか。オーストラリアにおいてコアラの生息数は推定10万~20万匹と言われているそうですが、今回の火災により約3万3千匹が犠牲になったと考えられています。全体の割合では約15%~30%となります。(※1)
この火災により、絶滅が危惧されるようになったコアラですが、ディーキン大の研究者によると「一部の地域で絶滅しても、全土では絶滅の恐れはまだない」と指摘されました。しかし、温暖化の影響で万が一毎年このような事態が発生すれば、確実に数を減らしていくことは僕のような素人でも予測できることです。
オーストラリア大陸において、人間の手により再び大量絶滅を起こさないようにするためにはどうしたら良いのでしょうか。
この子たちがいなくなる前に…
■コアラと消えた大型動物の数奇な運命
約4万5千年前のオーストラリアには、現在には見ることができない大型の動物たちが棲んでいました。人類がオーストラリアに到達し、期間については諸説あるものの、その後姿を消してしまいました。
この絶滅には人間が関与していないと主張する学者もいるそうですが、歴史学者のハラリ氏は関与を示す証拠を3つ挙げています。一つ目は、150万年という期間のあいだ何回も氷河期があったが大型動物は生き延びてきたこと。2つ目は、気候変動の場合陸上だけでなく海洋生物にも大きな影響が出るがその証拠は見られないこと。3つ目は、その後人間が住んだ先々で繰り返された絶滅。
そこで疑問に上がるのが、石器時代の人間がどうやって絶滅に追いやったのかということですが、これにもハラリ氏は次のように述べています。①絶滅した大型動物は繁殖に時間がかかり、人間に対する恐れをもつ前に消えた。②その頃の人間は焼き畑農業を会得しており、狩りに有利な環境に作り変えた。③狩猟と焼き畑が主な原因だが気候変動も無視できないことから、気候変動により生態系が弱っていたところ人間がやってきた。
こうして考えると人間が動物にしたであろうことに落胆してしまいますが、焼き畑をしたことにより火に強いユーカリの木が生育範囲を拡大し、そのユーカリの葉を食べて生きるコアラも生息範囲を広げたというのは運命の巡り合わせと言えば良いのでしょうか。
しかし、今度はそのコアラたちが危機に立たされようとしています。しかも、温暖化という今度こそ言い逃れのできない人間の所業により。
■僕たちにできそうなこと
オーストラリアだけでなく、世界中で森林火災は多発し、森林火災以外にも多方面に渡り温暖化の影響が出ています。温暖化が関係している以上CO2をはじめとする温室効果ガスを減らす必要がありますが、ここでは個人レベルでの具体策を考えてみたいと思います。大それたことを書いても仕方ないので、主観的で申し訳ないですが僕にもできそうなことを挙げてみます。
◯近場への車移動を徒歩、自転車にする
◯車のアイドリングを減らす
◯無駄な電気を消す
◯外出時の冷暖房消し忘れをなくす
◯周囲の人に温暖化について話してみる
◯信頼できる環境・動物保護団体に募金する
◯選挙の際、政党や政治家を選ぶ基準に環境保全の視点を加えてみる
※電気についてふれているのは、日本は電力供給の約8割を火力発電に頼っているためです。火力発電時にCO2などが排出されます。
また、オーストラリアでは森林伐採も行われています。これは紙の原料(パルプ)を作るためですが、日本はオーストラリアから原料であるパルプを針葉樹で33.5%、広葉樹で18.5%輸入しています。輸入材の多くは植林された人工林を使用しているようですが、オーストラリアでは主としてユーカリ類の木です。その植林地にコアラが引き寄せられ、伐採時に犠牲になる懸念から保護をしているとのこと。その点から積極的に古紙回収に協力したり、紙の無駄遣いを控えることはプラスになると言えます。
本当はもっと色々な策があると思いますが、長くなってしまうので別の機会に温暖化について記事にさせていただきます。
最後に、僕のような無教養で何の影響力もないただの一般人がこんなことを言って何になるかなんて全くわかりません。しかし、知人の思いに応えたかったのと、地球が好きなのでここまで書かせていただきました。奥手な知人の代わりにメッセージを伝えさせていただき、終えたいと思います。
■知人からのメッセージ
私が今回の火災を知って、いてもたってもいられなくなったのは去年新婚旅行でオーストラリアへ訪れたからです。
新婚旅行だったので思い出深いこともありますが、それだけではなくオーストラリアの風土にも感銘を受けました。自然と人間が上手に共存しており、生きとし生けるものを大切にする習慣がそこにはありました。それは街の至る所で感じることができ、本当に現地の人々を尊敬しました。
それからオーストラリア観光の定番であるコアラとのふれあい。コアラを抱っこした時は可愛くて感動して、とても幸せな気持ちになりました。
そんなオーストラリアで大規模な森林火災が発生。優しい現地の人たちや可愛いコアラたちが苦しんでいると思うと辛くていたたまれない気持ちになりました。
私の感覚では日本のメディアで大きく報道されていないように感じてショックを受けました。「今自分に出来る事って何だろう…何かしたい!」と気持ちが更に強く湧き上がりました。
私は自分から動くタイプの人間じゃないし、SNSもそんなに得意じゃなかったけど、森林火災のニュースをシェアしてみたり、読めない英語のホームページを開いてドキドキしながら募金してみたりしました。
私はオーストラリアだけの問題ではなく、世界的規模で守っていくべきものだと思っています。見下ろす夜景は綺麗だけど、見上げる星空はもっと美しい!
「やっぱり自然は素晴らしい」
「そんな自然を守りたい」
オーストラリアに行った方は皆そう思うんじゃないかなと思います。
そんな人がもっと増えたらいいなぁと願いつつ、コアラは今日も抱っこされているのかなと思うと、悲しい出来事があった中にも小さな希望が見出せて口元が緩みます。
最後まで長文にも関わらずお読みくださりありがとうございました。
■参考資料・注
▶︎読売新聞1月26日付(3面)
▶︎東京新聞3月1日付(1面)
▶︎産経新聞2月21日付(7面)
▶︎BBC News JAPANデジタル(1月16日)
▶︎岩波書店『世界 2020年3月号』P173
▶︎『サピエンス全史 上』P86~94 ユヴァル・ノア・ハラリ
▶︎熱帯林行動ネットワークJATANホームページ
▶︎日本製紙連合会ホームページ
▶︎AJWCEF(オーストラリア日本野生動物保護教育財団)ホームページ
※1:約15〜30%は個人的に計算し、イメージが伝わりやすいように出した数字なので正確ではありません。コアラの生息数や犠牲数は新聞より引用した数字です。