いま、絶望の淵に立っている自分に言ってあげたい


朝四時。黄金色の光がカーテンの隙間から漏れている。本当にもう、どうしたらいいかわからなくて、いてもたってもいられなくなって。ここではないどこかに行きたいのに、こわくて家からは一歩も出られない。スマートフォンのバックグラウンドにあるSeabed Edenを低くかける。一曲をずっとリピートしながら、誰かの言葉を確かに目で追い続けていた。窓から始発の電車の音がする。今、考えられる自分を保っていれる方法って本当にそれだけだった。一昨日、岡奈なな子の冷やし中華をまねして作って食べたこと。昨日、母と弟と、5年前くらいに話していた人がラインをくれたこと。親が寿司とケーキを冷蔵庫に入れておいてくれたこと。それから、家から一歩も出ずに一日中、布団の上かキッチンで過ごしていたこと。眠る前、玄関先から今日は星が見えるかな、とそこに存在する確かなものが見えているかを確認するように、果てしなく広がる濃紺の空を眺めること。そういうことで自分を守っていたかった。さっき一瞬、通り雨の音がした。カーテンから漏れていた光は見えなくなって、部屋は急に暗くなった。私は雨音に必死に聴き耳を立てていた。不安になるから部屋には光がほしかったけど、雨音は聴いておきたかった。朝六時。徐々に車が走り始めた通りの路面で、水溜まりを跳ねている音がする。昨日、知らない人ふたりと話をした。ニ番目に話した少し年下の躁鬱の人に、わたしは私の話しかしていないのに。こんな風に最後に誰かと話したかったんだ、ありがとう。ありがとう、と言われたことをふと思い返していた。

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