推しが死んだ話 最終回
前回までのお話
推しの死によって私は平安貴族となった。あはれあはれと、ひねもす我が身の辛さを嘆き、よもすがら枕を涙で濡らしていた。
この悲しみと無気力をどうしたらいいのだろうか。執着を捨て悟りを開くしかないのかもしれない。私は解脱できるのか……?
*推しは週刊漫画のキャラクターです。
*この記事を書いている人は、男性同士の間の情愛とか性愛を好み趣味で二次小説を書きます。
本当のきもち
新しいものに向き合う気力もなく、かといって現行ジャンルを咀嚼することもできず、ただただ鬱々としていたのだが、根幹にあったのは実は「悲しみ」ではなく「怒り」だった。
推しの死に対する怒りではなく、作品に対する憤りである。
(今、振り返って整理できただけで、当時は混沌とした荒波の中で溺れているだけでした)
ずっと好きでいて欲しかった。
立ち直って欲しくなかった。
自分の憤りをストレートに書くと、この二言に尽きる。
ふんわり話しているのでなんのこっちゃって感じだと思いますが、登場人物(推しだけではない)の扱いの軽さに耐えきれなかった、とでも言いましょうか。
ちょっと主語デカくして話しますが、程度の差はあっても人は誰しも、
『かけがえのない存在でありたい。替えの効かないものでいたい』って気持ちがあると思うんです。
『私たちは皆、かけがえのない人間』って言われて育ったし、小さな頃はそこに疑問をたなかった。
でも現実にはそうじゃない。人は成長する過程でそれ理解する。
本当に替えの効かない人間なんて滅多にいるもんじゃないし、もしかしたら存在しないのかもしれない。
でも、だからこそ。
フィックションの中だけでも貫いてほしいという気持ちがある。
そんなの無理だってわかっているけれど、無謀にも永遠を望んで欲しい・信じて欲しいと願ってしまう。
私が辛かったのは、ここだった。
失われた存在たちの、あまりの扱いの軽さに怒りを覚えた。
何も解決していないし、失ったものは戻らないはずなのに、そのあたり全部目を瞑って、間違えたら何度でもやり直せば良いさ!的な結末がどうしても嫌だった。
当時はこの憤りと悲しみが混ざった気持ちを言語化することができず、ただ唸っていただけなんですが。
心に穴が開いたので……
どうしようもない気持ちを抱えた私は、ピアスを開け始めた。
はぁ?なんで???誰だってそう思う。私だってそう思う。
でも同世代の人なら、ちょっとわかってもらえるのでは。
思い切り開けた左耳のピアスには笑えないエピソードがあるものだ。失恋して髪切るのと心情としては近いかもしれない。
心の穴は見えないから、現実に耳に穴を開けて痛みを感じる……的な意図はないです。でも何でピアスだったのかは、本当にわからない。3個だったピアスが軟骨中心に、11個に増えた。
ピアスは自傷の代償行為説もネットではよく見かけるけど、それもどうなんだろう。別に痛みを求めていたわけではないから、自分で開けていない。
スタジオで開けてもらった。耳のコーディネイトをインスタで見たり、次開ける場所を考えたり……ピアスは開けて終わりじゃないからホールのケアとか、そんなことばかりしていた。
今まで創作につかっていた有り余る力を耳にぶつけていた感はある。
頭を使わずに基本受け身でできることだったし、耳がキラキラになっていく様子は単純に楽しかった。
そこから頭を使わないことが良いのかも……と気づき、ひたすら散歩したりただ燃やすだけの焚火をしたりした。
結局ピアスだった理由はわからない。ピアスじゃなくても良かったんだと思う。だが、意味のわからない行動をすることが、心の再生に役だったのは事実だ。
あなたの周囲の人が不可解な行動をしている時、その人は推しを失ったのかもしれない。暖かく見守ってあげてほしい。
日はまた昇る
推しの死から2ヶ月……。私は立ち直った……!!
やはり、ピアス……ピアスが良かったのか?結局は時間薬なのか?
それとも、まさか悟りを開けたのか……。
正解は別ジャンルに新推しが爆誕した……でした。
解脱できてません。ぞ、俗~~~!自分でもビックリした。なんて欲深く現金な人間なんだ……!
ずっと忘れないでいてほしい。永遠を望んで欲しい……とか思っていながら、これかよ!!まさにダブルスタンダード。人間って(自分だけかもしれないが)愚かで哀れな生き物だよね。
でも、でもさ?自分ができないことだからこそ、憧れて求めてしまうのかもしれない。
推しの死を通して、愚かな私も学んだ。同じ轍は踏まない。
新推しは、亡くなった推しとは、ひと味違うのだ。
このたび出会った推しは……なんと……既に死んでいる。
そう。お前は既に死んでいるってヤツですよ。もう死んでいるから、もう一度死ぬことはない!!一休さんみたいな解決策である。
しかも、カプ的救済のある死に方だった!!これはもう永遠!!
こうしては私は推しの死を乗り越えるどころか、感謝するようになった。
ありがとう……本当にありがとう……推しの死。
行きついたのは、ジョースター卿的逆転の発想でした。
推しの死が怖い?逆に考えるんだ『死んじゃっているから良いんだよ』って。
まとめ
限界オタクのとりとめのない話に長々付き合っていただき、ありがとうございました。感謝申し上げます。
ここで言っても信憑性がないと思いますが、推しの死はかなり苦しかったです。物語の結末もまだ飲みこめていません……。
以下が私の得た教訓です。同じような境遇の方の力になれたら幸いです。
何をやっても駄目なときは駄目
ハマろうとして新ジャンルを探しても無理なときは無理
頭を使うことは控えた方がいい
訳の分からないことをやることも必要
新推しは歩いてこない。ある日、突然ぶつかってくる
またね。ちゃお!