Vol.7 Amazonが始めたBOPISサービス”Local Selling”について
今日のテーマは、Amazonが始めたBOPISサービス”Local Selling”を取り上げます。
BOPISはBuy-online-pickup-in-storeの略で、要はオンラインで注文して店舗で受け取るサービスを指します。小売業に従事されている方は、古くはclick-and-correctでも同じような構想があったのを覚えてらっしゃるかと思います。ユーザーの利用するデバイスがPCからスマートフォンに移行したことでこのトレンドは一層強くなりました。
※「Amazon Local Selling(ローカルセリング)」に関するWebサイトも用意している。画像はAmazonのWebサイトからキャプチャし引用。
Amazonは日本でも多くの方が利用している世界最大のEC事業者です。
日本に先駆けて、本国のアメリカでは”Local Selling”というBOPISサービスをマーケットプレイスの販売者に提供を開始しました。Amazonに出店している販売者は、自社の店舗や地域の倉庫から配送を行うことに加え、自社の実店舗を利用して商品を消費者に渡すことができます。つまりAmazonが送客と決済を行い、フルフィルメントは販売者が直接行うBOPISです。
利用者はBOPISの一般的な価値である商品の即日受け取りをすることができますし、販売店は店舗などのコミュニケーションセンターが消費者と接触を持つことにより、ファンの育成や追加購買が期待できます。
一方、アメリカのBOPIS市場のシェアは、先行者であるWalmart1社に25%占められていると前号でお伝えしました。Amazon Local Sellingはまだ挑戦者に過ぎません。
ECがBOPISに取り組むいくつかの課題も見えてきます。例えば、ECサービス上でBOPISが選択できるのはかなり限られたケースになります。EC上で欲しい物を選択し、たまたま取りにいける距離に販売店があり、かつその販売店に商品があった場合です。もちろん、EC上にはBOPIS対応していない販売店、商品の方が大量に表示されます。また、EC事業者は基本的に、ユーザーをサイト外に逃がすことにネガティブです。通常のEC配送のまま購入させようとするデザインは変わりません。
このようなユーザー体験の観点から、消費者が買い物に出ようとする際に手間の削減でBOPISを使い、その需要をECが埋めるのが結果的に難しくなっています。これが全世界的にECとローカル販売専業アプリケーションが分かれて発展した理由になっています。
次号はBOPISを軸に高い成長性を維持するTarget Corporationの戦略について取り上げます。