2人のベンチャー企業家が語る「中国ビジネスの今後」
2019年3月15日(金)にEDGEof 渋谷にてスタイラーと日本美食が共同開催するトークイベント「China Conference -検索しても出てこない、中国ユニコーン企業解説 フードビジネス編-」では、タイトルの通り検索ではたどり着けない中国ユニコーン企業の戦略や特徴を語ります。
イベント本番ではプラットフォームからリテールまで、中国市場を沸かせている4社の事例をもとに中国での成功例をお話しする予定ですが、本記事ではよりイベントを楽しんでいただくため、登壇者二名の経歴から事業内容、そしてイベントのさわり部分までを対談形式でお届けします。
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「ネットビジネス×金融」が背景にある2人の起業家
小関 翼(以下 小関):私はFACY(フェイシー)というアパレル向けのニューリテールプラットフォームを運営していて、具体的にはアプリを通じてショップ店員に直接相談ができ、洋服が買えるサービスを提供しています。もともとは大学院でインターネットテクノロジーと法規制の研究をしていて、その観点から金融機関だけではなく、Amazonでも働いていました。90年代から00年代は、特にアメリカのインターネット企業が業界をリードしていましたから。
スマートフォン以降はアジアのインターネットビジネスが興隆しますので、、僕も日本だけではなく、上海や台湾をベースに活動しており、今回のイベントでは、特に中国のテクノロジーカンパニーの動向を共有する予定です。
董 路(以下 董):私は北京出身で93年に来日し、大学を経てゴールドマン・サックスに入りました。10年日本にいたのち、アメリカのスタンフォード大学でMBAを取得。中国に戻りコンサルとして働いた他、アパレルECを2社の立ち上げて、今は日本で飲食店向けインバウンド決済・集客サービスを提供する日本美食を経営しています。
飲食に関して、外国人観光客の旅中でのペインポイントは「探せない、通じない、払えない」という3点があります。特に解決しなければいけないのが「払えない」という部分。中国人が日常で使う微信支付(ウィーチャットペイ)や支付宝(アリペイ)などのスマホ決済が日本ではほとんど使えないという悩みを解決するため、スマホ決済のゲートウェイを作りました。お客さんは日本美食が用意した店舗専用のQRコードを読み取り支払い金額を入力するだけで、14の決済手段で決済をすることができます。観光客としては自国で使っている決済システムを日本でも使え、店舗としては様々な決済方法を一つに集約して受けられるので、支払えない/受けられないという問題を解決することができます。
日本では「スマホシフト」、中国は「スマホからスタート」
小関:イベント当日も詳しくお話しますが、インターネットの体験で日中の決定的な違いは、中国は「全てがスマホベース」というところにあると思います。日本もアメリカもインターネットビジネスが商業化され消費者が楽しむようになったのは90年代からなんですよね。すでに20年以上の歴史があり、今もPCベースのサービスが普及している。でも中国は全く違っていて、マスがインターネットに触れるようになってきた時にはスマートフォンが登場していた。
董:まさにそうだと思います。例えば中国のO2O、OMO(Online Merged Offline)分野で最も成功している企業はMeituan(美団)です。
Meituan(美団)は2018年9月に香港で上場し、上場当初の時価総額は5〜6兆円にも昇った巨大企業。アメリカのビジネス誌『Fast Company』が選ぶ「2019年最もイノベーティブな企業」の1位にも選ばれています。
「メディア」ではなく「コマース」というポジション
董:Meituanは日本でいう口コミグルメサイトに予約や出前、配車などが合わさったサービスなんですが、なぜMeituanがイノベーティブなのかというと、スマホベースで推移したO2O企業だから。ここが日本企業と決定的に違う。日本のグルメサイトはO2Oではなくメディアの側面が強い。メディアは消費者に情報提供のみを行うのに対して、O2Oプラットフォームはコマースそのものを提供する。必然的に決済サービスも紐づきます。
小関:つまり、提供するバリューチェーンがメディアと比べて長いんですよね。情報を教えるだけではなく購買・予約、その後のシェア、レビューするところまでをワンストップで担っている。
さらにスマホベースなので、位置情報をトラッキングしているのも特徴です。彼らから提案される飲食店って、日本のグルメサイトよりもかなりパーソナライズされている。今実際にアプリで二人の位置情報を上海にしてから見比べると、オススメされる店舗が全然違う並びになっています。インターフェースも単純な検索結果というよりかはよりスマホベースに向いているSNSのような構造になっています。
「バーティカル → ホリゾンタル」という、日本にはない戦略
董:もう一つ付け加えると、日本のサービスとの決定的な違いはMeituanの中で提供しているサービスジャンルの多さ。MeituanはOTA(Online Travel Agent)としても機能していて、飲食店を探したり予約をするだけではなく配車もできる。上海だけでいうと今ではDiDiと1,2位を争うくらい利用されています。
小関:これは、中国のウェブサービスの特徴の一つだと思うんですけど、一つのサービス・カテゴリーで成功すると、そのプラットフォームを使って、事業を水平展開していきますよね。Meituanもフードレビューから始まって、今では配車やホテルレビューも楽しむことができる。
1つのカテゴリーのみで事業展開をすると、1ユーザーあたりの利益が限定的なので、横展開してユーザー課金額をあげているのかなと。
董:Meituanが成功した理由の一つは、”メディアではなくコマースだったから”だと考えています。メディアではなく、ペイメント、つまりユーザーの”財布”とつながっているコマースは、ひとつのアカウントを獲得すれば、それを様々な分野に応用しやすい。
小関:支払い手段をすでにサービスに入れているから、他分野のサービスでも買いやすいと。さらにいうとユーザーとの関係もメディアとは違いますよね。
メディアという立場だと、どれだけバーティカルに情報を掘り下げらるかが勝負になるので、ホリゾンタルに事業を展開すると情報が薄くなってしまい、ユーザーからの魅力が下がってしまう。
一方、コマースであれば、どんなジャンルにおいても情報が充実していること、情報が信用できること、決済のスムーズさなどをフックにコマースサービスそのものを信用して買うので、一度信用されると横に広げやすいのではないかと。
実は爆買いは “始まってもいない”!?
小関:日本の飲食店や小売店のマーケティングって中国人の期待しているところと少しずれてないですか?例えば日本人が中国で何かを展開する時ってウェブページをつくりがちだけど、中国の人は別にウェブページは見ないですよね。
董:中国は基本全てがSNS化しているので、まずはSNSが大切だと思います。ウェブページを作るのは砂漠に家を建てるようなもの(笑)SNSは常に目の前に消費者が通るので、情報は常にそこに出しておかないとダメ。旅前旅中の手厚いプロモーション、SNSマーケは中国展開や集客にとても大切です。
小関:訪日中国人に数あるお店の中から選んでもらうのはとても大変ですが、日本のものを売ることが不可能ということはないですよね?
董:実はタオバオで一番売れているのは日本のファッションアイテム。さらに、いま中国の若者が第二言語で選ぶのは日本語で、日本語を学ぶ人口は増え続けています。理由は、言語を習得すれば、日本のファッションや化粧品の最新情報を手に入れることができるから。
小関:確かに、中国で最も視聴されている動画プラットフォームのビリビリ動画でも、一番人気のジャンルはアニメやゲーム、ドラマなどの日本のコンテンツですよね。
一方で、他のアジアの国と比べてひとつ違うなと思うのが、香港や台湾の人ってたくさん日本に来ているけど、中国の人はまだそんなに来ていないですよね。日本に対する一般的なイメージは良いけど、詳しくはまだまだ知られていないという印象。なので、実はこれからがチャンスなんじゃないかと思います。
董:数字で見ると、中国国内でパスポート保有者は人口の5%の7000万人。その他は持っていないので国を出ることすらできないんです。中国人は年間で1億4000万回渡航しているので、一人2回は行っているはずなのに、日本には800万人しか来ていません。もしかしたら、爆買いはまだ始まってすらいないのでは...?と思います。中国は海外旅行者数の推移とGDPの推移がある程度同じなので、これからどんどん海外旅行に行ける中国の人口が増えて行くはず。まだまだインバウンドのポテンシャルはありますよ。
その来日観光客を掴むためには、SNSなどを通して旅前でいかに自分のサービスやお店を知ってもらうかが重要です。来店してもらう可能性を上げるためのストーリーを持った販促活動をしっかりすれば、どんどんお客さんが増える。これは我々
のサービスでも実証済みです。
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今回の対談のメイントピックであった、美団(Meituan)は中国でも有数のプラットフォーマーです。3月15日のChinaConference(無料)では、美団(Meituan)以外にも、飲食リテールとして勢いのある「瑞幸咖啡(luckin coffee)」「喜茶(HeyTea)」などについて掘り下げます。先着40名限定なので、お申し込みはお早めに。
===イベント概要===
China Conference
-検索しても出てこない、中国ユニコーン企業解説 フードビジネス編-
日時:2019年3月15日 18:00〜21:00
定員:先着40名様
場所:EDGEof 渋谷
〒150-0041 東京都渋谷区神南1-11-3
https://edgeof.co/
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▼メディア関係者の方はこちら
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===タイムテーブル===
・18:00〜 :受付開始(当日は名刺を3枚ご持参ください)
・18:30〜18:45 :講演「中国市場・フードビジネスの特殊性」
登壇者:日本美食株式会社 CEO 董 路
・18:45〜19:30:パネルディスカッション「フードビジネスのスタートアップ企業例と戦略」
登壇者:日本美食株式会社 CEO 董 路、スタイラー株式会社 代表取締役 小関 翼
・19:30〜19:45:質疑応答
・20:00〜21:00:懇親会(軽食あり)
===登壇者プロフィール===
董 路 (日本美食株式会社 CEO)
1972年生まれ、中国・北京出身。20歳で日本に留学し、1994年に埼玉大学経済学部に入学。同大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。その後、スタンフォード大学にてMBAを取得し、2004年に中国に帰国。
外資系コンサル、ベンチャーキャピタルを経て、2社のベンチャーを立ち上げる。2014年に事業を売却し、日本に拠点を移す。2015年12月、日本美食株式会社を設立し、スマホ決済サービス及びインバウンド集客サービスを展開中。
日本美食 https://www.japanfoodie.jp/
小関 翼(スタイラー株式会社 代表取締役)
Amazonにて事業開発を担当。ライフスタイル分野にマーケットデザインの問題が大きいこと に着目し、2015年3月にスタイラー株式会社を設立する。 未来の購買体験をアジアから作っていくことを目指す。Fintech、FashionTechを国内外に紹介。東京大学大学院修了。日英のメガバンクに勤務経験あり。
スタイラー株式会社 https://styler.link/
FACY https://facy.jp/
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