これまでの家づくりのメリット・デメリットと アフターコロナの注文住宅の考え方(6)
新しい家づくり「躯体と内装を分ける」とは?
アフターコロナで家づくりの方法が大きく変わるなか、長いスパンで自分の家を安心して任せられるリフォーム会社に注文住宅の新築を頼んでみませんか?というのがここまでの流れでした。
しかし、本書のタイトルは「アフターコロナのローコストな注文住宅の作り方」です。
肝心なのはリフォーム会社に家を建ててもらうことそのものではなく、ローコストでも納得のいく注文住宅を建てるにはどうした良いか?ということ。そしてさらに言えば、リフォーム会社に注文住宅を建ててもらう=ローコスト、というわけでもありません。
では、アフターコロナのローコストな注文住宅の作り方とはどういったものなのか。
それが、「躯体と内装を分ける」という新しい家づくりの方法です。
この躯体と内装を分ける家づくりのポイントは、2つあります。
1. 躯体と内装を分けて考えることで、予算の配分決定を自分で行える
2. 躯体と内装工事を手がける業者を分けることによって、ローコストを実現させる
ではまず、予算面のことを考えてみましょう。
予算の配分を考える
第二章で考えたように、大規模なリノベーションを手掛けられるようなリフォーム会社であれば、新築住宅を建てるだけでのしっかりとした技術を持っています。
問題なのが、躯体。
リフォーム会社でも家の基礎となる躯体部分をつくろうと思えばできるのですが、ノウハウが無いためにどうしても余計なコストがかかってしまう恐れがある。
それならば、躯体と内装を分けて建てませんか?ということです。
家は基礎や土台、柱、梁、いった「躯体部分」に、キッチンやお風呂、トイレ、床、壁などの「内装部分」を組み合わせることによって出来上がります。
<基本的な家の構成>
この図にあるように、家は基礎や構造・躯体、サッシ・玄関、外壁、屋根、配管・配線などの躯体部分(A)と、設備・照明、床、壁、ドア、造作といった内装部分(B)の組み合わせでできています。
一般的な家の建て方というのは、この躯体と内装をセットにして提供するわけですが、必ずしも一緒くたに考える必要はないのです。
どういうことでしょうか?
例えば、あなたが「自分らしい家を建てたい」と願うときに、思い浮かべるのは基礎や構造といった躯体部分でしょうか?
恐らく、そうではないでしょう。建築に関しては素人で、躯体という言葉自体を知らなかったという人の方が大多数なのですから。
むしろどんなキッチンにするか、壁紙はどうするか、トイレやお風呂は?といった内装部分にこだわるのではないでしょうか。
しかし実際のローコストな家づくりの現場では、この図にあるように内装部分のBよりも躯体のA部分に多くのコストとリソースが注がれます。
ローコストで注文住宅を建てたいのであれば、このバランスを考える必要があるのです。
例えば、総予算1,500万円で家を建てるとしましょう。そしてこの場合、A工事にかける予算は1,000万円、B工事に必要な予算が500万円とします。
B工事のうち、キッチンの設備費が50万円と見積もりが出されました。しかし、あなたがこの家で一番こだわりたいポイントがキッチンで、その50万円のキッチンでは満足できない場合はどうするでしょうか?
キッチンもそれこそピンキリで、200万円のものもあれば1,000万円を超えるようなものもあります。あなたはどうしても50万円ではなく、200万円のキッチンにしたい!
しかし、予算は1,500万円が限界。ではこの場合、どうするか?
不足分の150万円をA工事から削るとすると、躯体にかけられるお金が850万円ということになります。そうすると、柱や外壁、断熱のグレードを落とさなければならない。内装と違って躯体は後から変更できないので、躯体の性能は長期的な視点で費用対効果を考える必要があります。
躯体も内装もセットで提供するハウスメーカーの場合は、このA工事とB工事のバランスを自身で決めることが難しい。50万円のキッチンを200万円のものにしたいなら、単純に150万円予算を追加してください、ということになるでしょう。
しかし躯体と内装を分けた家づくりなら、自分でそのバランスを考えることができるのです。
とりあえずキッチンは50万円のものにして、お金に余裕ができたときに取り替えようとか、家のデザインをもっとシンプルな形にしてA工事にかかる予算を抑えようとか。ローコストでも可能性が広がってくるのです。
そのことを、一つの例えで考えてみましょう。
パソコンを購入する時には組み立てられた市販のものを選ぶほかに、自分で組み立てるという方法があります。
まず自分が必要としているパソコンのスペックを洗い出し、それに見合ったCPUやメモリ、グラフィックボードといったパーツを吟味します。
次に、そうしたパーツを収められるだけの本体ケースを選び、組み上げるわけです。
そうすることによって、市販のパソコンよりも安価でありながら、自分の用途にピッタリの「自分らしいパソコン」を手にすることができるわけです。
パソコンに詳しい人ほど、自作パソコンの本体ケースの形状にはあまりこだわりません。本体ケースにかけるだけのお金があれば、その分パーツにこだわる。パソコンの性能を左右するのは本体ケースではなく、中身のパーツだということを知っているからです。
つまり決められた予算をどこに注ぎ込むか、それを自分で決めることができるということ。
市販のパソコンでは無理ですよね。
高スペックのパソコンが欲しいなら、より高いお金を払うしかない。でも自作パソコンなら、自分が本当に必要としているスペックを満たすパーツにお金をかけて、そうではない本体ケースなどの予算を抑えて全体の収支のバランスを整えるというようなことができるわけです。
躯体と内装を分けるという家づくりも、これと全く同じ。
自分が思い浮かべる理想の家を実現するための「パーツ」、つまり内装部分や家の性能など、自分がこだわりたいポイントは思いっきりこだわってください。そのかわり、躯体部分はできるだけシンプルなデザインにする。
躯体と内装を分けて考えることによってそのような予算配分ができるようになり、結果としてローコストでも「自分らしい注文住宅」を建てることができるというわけです。
では、躯体をシンプルにするとはどういう意味でしょうか?
次回につづく