にんじん

いい音が出る野菜番付

最近、無心でお料理をしています。

残念なのは、お料理が得意!とか、吾輩の趣味である!とか、美味しいものが作れるぜ!とかではなく、成果物がわかる地味な作業を黙々とするのが好きなだけなところです。

そのような楽しい作業として捉えているお料理ですが、それでも自分好みの味になったときは嬉しくて、家族に写真を送ってしまったりしています。美味しいものを食べるのは大好きだし、上手くお料理が出来た時は家族に食べてもらいたいなあと思うのです。でもやっぱり私のいう「料理が好き」は、完全にものづくりとしての「好き」です。人の好みというのは千差万別なものですねえ。

ものづくりの中の「料理」という分野で特に好きなのは、野菜たちを扱うときの音です。これはお料理にしかない魅力で、非常に尊い瞬間です。お料理というものには色々な作業工程があり、それに伴って音が出るのですが、野菜は特に爽快な音が出るのです。

ここで佐藤の独断と偏見で、いい音が出る野菜番付。



第3位:キュウリ・大根


さっそくの同率3位です。どちらもいい勝負で、決められなかったのです。その結果、キュウリにも大根にもいい顔をしてしまいました。私は本当にこういうお人好しなところがあります。

そして、ここで多くの人が予想したであろうキュウリがいとも簡単に登場してしまいました。多分「キュウリ=いい音」というのは、バーニャカウダなどでポリポリ食べるイメージから潜在意識に刷り込まれているのではないでしょうか。恥ずかしながら私もその1人です。イメージが大きく順位に影響しました。
しかしキュウリは食べるときだけではなく、切るときも非常にシンプルで「これぞ王道!」というようないい音が鳴り響きます。あえて手で折るのもまた一興。

そして同率3位になった大根選手。こちらも切る際はキュウリと似たような王道な音がしますが、根菜ならではの、キュウリよりもちょっと厚みを感じる音がします。イイネ!
そしてぜひおすすめしたいのが、「なた漬け」をするときの切り方。なた漬けというのは秋田の漬けものの一種なのですが、ナタで切ったような感じにするときに、包丁を使って少しだけ大根を折るような作業があるのです。フレッシュな生の大根を折るときの音は癖になるものがあります。是非聞いてほしいです。


第2位:ピーマン・パプリカ


意外に感じるでしょうか。そうなのです。彼らには失礼ですが、見た目はちっともオモチロくなさそうな野菜なのです。ですがここで注目したいのは、彼らがもつそのフォルム。言わずもがな、中の空洞です。

上のヘタの部分をカサのように切るときにまず「サクッ」という音が出ます。そして縦に半分に割る。聞き逃してはいけないのは、中のタネをとるときの音。包丁で綺麗に取りのぞいてもよいのですが、個人的には手でとるときのちぎれるような音が好きです。

語るべき特別なポイントとしては以上なのですが、すべての工程において、あの空洞をつくるためのカーブとみずみずしい水分が加担して、いい音に仕上げてくれています。これには佐藤審査委員長も「エクセレント」と唸ります。素晴らしい。そして「ピーマン」「パプリカ」という破裂音をつけたネーミングセンスにも脱帽です。加点。


第1位:たまねぎ

堂々の第1位です。完璧としかいいようがありません。

まず彼らにおいては、包丁に入る前から評価してあげなくてはいけません。そうなのです。勝敗を大きく左右したのは、ズバリ皮なのです。皮をむくところから勝負は決まったようなもの。

まず茶色の皮たちが、爽やかにパリパリと剥がれる。そのすぐ下の薄皮をむく作業においてはシールを剥ぐときのように、めくれるに従って高音になりながら「スウィーッ」と剥けてゆきます。擬音語は果たして「スウィーッ」で合っているのかわからないですが。これが、もう、本当にたまらんのです。漢字1文字で表すとすれば、その音はまさに「粋」。

そして皮で圧倒的に差をつけたところで、フィニッシュはやっぱり包丁。つやつやと光る球体を切るときに、繊維を感じるジャキジャキという音。あえて縦に切らず輪切りの方向で横に切ると、その繊維の層を分断している音が感じられます。

そして縦方向にも包丁を入れてみじん切り。そこから先は言わずもがな。繊維たちの大合唱です。第1位にふさわしい、威風堂々なハーモニー。包丁が、まな板が、耳が喜んでいます。本当にありがとうございました。






白熱した番付となりましたが、葉物が出てきていないです。かなり偏りのある結果となりました。しかし、私が一番好きな野菜はレンコンですが、そこに引っ張られずに審査を出来たのは我ながら真摯に任務を遂行できたといえるのではないでしょうか。あっぱれ。
なお、この番付は2019年1月30日現在のものでして、簡単に更新されてしまいます。ご了承ください。


おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?