中国のやりたいことが、いまいちわからない件
福島第一原発の処理水が放出開始され、中国ではさまざまな反応が起きていることは先日もお伝えしました。その反応は、週をまたいでも続いています。
中国が激烈な反応を見せるのは、科学的なものではなく政治的な動機によるもの、という説明がさまざまなところで語られています。しかし、じゃあその「政治的な動機」とは具体的に何なのか、ということを考え始めると、考えるほどよくわからなくなってくるのです。
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たとえば海産物の禁輸に関しては、前回のマガジンでも書きましたが、両国にとってのインパクトはそれほど大きくありません。
さらに、ふと冷静にみてみると、香港やマカオへの輸出規制については全面的な禁止がされていません。
放出直前に香港が「10都県からの」水産物の輸入禁止→放出後に中国(大陸)が日本からの水産物輸入を禁止、と続いたのでごっちゃになってしまいがちですが、香港・マカオへの規制はあくまで10都県に限られており、しかもそれら地域は香港への主な輸出品目をほとんど生産していません。つまり、影響は限定的だと考えられます。
日本の農林水産省のHPも、香港の食品安全センターも確認しましたが、いまのところ全面的な水産物の禁輸を示す文言はありません。マカオはともかく、日本からの水産物輸出のトップ2は中国と香港です。香港への禁輸がなければ、ただでさえ大きくないであろう日本への影響はさらに半分になります。
今後、措置が拡大する可能性はあるし、禁輸とされなくとも出荷のハードルが上がることは十分考えられますが、少なくともまだこの後に及んで中国のやることは中途半端に見えます。
たぶんですが、本気で両国に決定的な影響を与えることは中国も良しとしておらず、単なる嫌がらせレベルでしかないようなことがわかります。
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しかし「嫌がらせレベル」にしては、今回の件に対する国内世論の煽り方は、正直に言って常軌を逸したもののようにも見えます。
いまは毎日(毎日のようにではなくて、毎日)処理水放出関連の報道がどのニュースサイトでも真っ先に出てきます。その内容はもちろん、日本を非難するものであり、彼らのいうところの「核廃水」の恐怖をおどろおどろしく語るものです。
過熱する報道に引きずられるように、人々のこの問題への関心と熱も盛り上がっているように見えます。リアルではともかく、インターネット上ではこの件に関する話題ばかりでウンザリします。SNSのトレンドにもずっといますし、動画サイトなどではこの件に絡んでPVを稼ぎたい人々があの手この手で注目を集めようとしています。
日本でも報道されている通り、中には福島の飲食店業者に国際電話を使ってまでイタズラ電話をかけるなど、品性を疑うような行為も出てきています。
個人的には、中国でもそういうことをするような層の人々が、日本の電話番号を調べるだけのリテラシーと国際電話をかけるだけの小銭を得るようになったということに対して、近年の中国の近年の経済発展と貧困撲滅の効果は凄まじいな、と微笑ましくなります。ただ、もちろん国はそんなことのために経済を成長させたわけではないでしょう。
国内にこれだけ苛烈な反応が出るのをわかっていながら、「公式」は民を煽り続けています。
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経済効果としては嫌がらせ程度。いっぽうで、少なくないリソースを割いて国民を煽り続けている。どうも、やっていることがちぐはぐというか、いったいこの方針の意図はなんなんだ? と首をかしげてしまうような違和感を、いまの中国に感じています。
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