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「ウチ」への執着が強い中国人。カナダの外交官追放を巡って

こんなニュースをご存知でしょうか。

カナダにおいて、ある中国人の外交官が追放を言い渡されたというニュースです。対象となったのは、トロントの中国領事館に所属する趙巍Zhao Weiという人物です。同人物はカナダにとって「persona non grata」(好ましからざる人物)として、5日以内の国外退去を命じられました。

そうなった理由は、同人物がある特定の議員をターゲットにした影響力工作を行っていたことだといいます。その「特定の議員」とはマイケル・チョンという、香港にルーツを持つ保守系の議員です。

マイケル・チョン議員は2021年、中国による新疆ウイグル自治区における弾圧を非難する動議を議会に提出し、中国側から入国禁止措置を受けている人物です。

中国側は対抗措置として、上海のカナダ総領事館の外交官について、同じく5日以内の国外退去を命じました。意趣返しのつもりなのでしょうか、カナダが言うのと同じ「不受欢迎的人」(persona non grata)という表現を用いています。

どこがどう「好ましからざる」なのかははっきりしませんが、対抗措置であるというだけで理由は十分だということなのでしょうか。巻き込まれた上海の外交官が不憫でなりません。

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僕個人で追えた範囲の情報で整理すると、この決定がなされた大きなきっかけは、今月の初めにグローブ・アンド・メールという新聞により、カナダの安全情報局(CSIS、Canadian Security Intelligence Service)による報告書の内容が報道されたことのようです。

当該記事は英語で読めるようになっていました。

問題となった中国人外交官について触れた部分はこちらです。

The spy agency said an MSS officer sought information on an unnamed Canadian MP’s relatives “who may be located in the PRC, for further potential sanctions.” This effort, the CSIS report said, “is almost certainly meant to make an example of this MP and deter others from taking anti-PRC positions.”

A national-security source, whom The Globe is not naming because they risk prosecution under the Security of Information Act, said the MP targeted was Conservative MP Michael Chong and that Zhao Wei, a Chinese diplomat in Canada, was working on this matter.

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中国国家安全保障局の職員が、あるカナダ人議員の親族について、さらなる制裁の可能性を求めて、中国にいる可能性のある人物」の情報を求めたという。この取り組みは、「この国会議員を見せしめにし、他の議員が反中国共産党の立場をとることを抑止するためのものであることはほぼ間違いない」とCSISの報告書は述べている。

本紙ではその名前を明かせないが、ある国家安全保障関係者によると、標的となった議員は保守党のマイケル・チョン議員で、カナダの外交官である趙魏がこの件に取り組んでいるという。

上掲記事より、翻訳は筆者による意訳

つまり、香港ないし中華圏いる可能性の高いマイケル・チョン議員の親族の身柄を、何らかの交渉材料に使おうという動きがあったと言うことです。すぐに思い浮かぶのは、中国側がこの親族を不当に拘束、または危害を加えるなどして、チョン議員の動きを牽制しようとする、というようなストーリーです。

この報道があったことと、当のチョン議員が議会に措置を求めたことから、今回の国外追放が決定されたようです。

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この件の一つのポイントは、マイケル・チョン議員が香港にルーツを持つ人物だと言うことでしょう。

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