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中国に「選ばれしもの」と、選ばれなかった僕の話

中国で活動するドキュメンタリー監督・竹内亮さんへのインタビューを読みました。

竹内さんは、賛否両論のある人です。ドキュメンタリー監督として中国で大きな人気を集めるいっぽう、その作品の内容はあまりにも中国の「公式見解」に寄せたものとなっており、「中国のリアルを伝える」と言いながらも、実情はまったくリアルなものになっていないという批判の声もあります。

僕自身は、いろいろと不自由な環境で外国人でありながら映像作品を制作し続ける竹内さんをすごいなあと思うところもありつつ、その作品を見ているとたしかに違和感を感じる部分もあります。

まがりなりにも中国を知っている身からすると、かなり恣意的に中国のよい部分や、プラスの側面ばかりをを切り取っている部分があるのは否めません。

まあ、とにかく「正能量」のメッセージを発する/受け取ることを好み、また「ソト」と「ウチ」としての敵・味方をはっきり線引きしようとする——そして「ウチ」同士での内省的な批判を絶対に許さない中国という国、そして中国人に向けて作品を提示するには、そうした姿勢が必要だということは理解できます。

それを「ドキュメンタリー」と言われてしまうと鼻白んでしまう自分はいますが、数少ない中国で活躍する日本人であることには間違いないので、これからも竹内さんには中国で作品を作り続けてほしいと思います。応援しています。

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先ほど「不自由な環境で外国人で作品を制作し続ける竹内さんをすごいと思う」と書きましたが、上のインタビューを読むと、どうやらご本人にとっては中国はそういう環境ではないようです。

「検閲を受けてから上映するんでしょ?」などと質問されることもありますが、結論から言うと、中国に検閲はありません。というより、コンテンツの数が多すぎてすべて確認することは無理です。

確かに政治に関しては発言に制限があり、抵触した場合は「プラットフォームから削除してください」という依頼が来るそうですが、僕は一度も注意を受けたことはありません。意外に思うかもしれませんが、日本のような言論の自主規制もありません。かなり自由なので、のびのびと仕事をしていますし、人々も自由に生活しています。今、僕は日本にいますが、逆に「日本は窮屈だな、不自由だな」と思うことが多いです。

それは、空気を読まねばならないから。その場の雰囲気に即した言動をしなければならないという、暗黙のルールを感じるからです。これは余談ですが、中国の企業を取材していると、部下が上司の悪口をカメラの前で言うこともしばしば。日本ではそんなこと、絶対にありえませんよね。

ここには、端的にいって違和感があります。中国には間違いなく検閲が存在していますし、言論の自主規制がないということもありえません。それは周知の事実です。

日本では空気を読まなければいけないが中国は違う、というのもおかしな話です。表現の自主規制の例を出すまでもなく、中国には中国の読むべき「空気」が存在しています。その表出の仕方と、従うべき内容が違っているだけです。

ただ、少なくとも竹内さんがご自身の主観において「中国には検閲が存在しない」「中国では空気を読まなくていい」と考える理由も、実はわからないでもありません。

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