あちらを立てればこちらが立たず、「中国台湾」問題
奇しくも昨日のマガジンに引き続き、「中華圏とアイデンティティ」にまつわる話題です。
中国のインディーズロックバンド「回春丹」が、台湾でのフェスの出演予定をキャンセルされてしまったという話です。キャンセルの理由は、SNS(中国のWeibo(微博)と、Instagram)に「中国台湾」という文言を入れていたこと。
Instagramのほうの投稿はすでに消されているっぽいのですが、Weiboにはそのまま残っていました。
たしかに「广西到中国台湾,明天台北开炉见」(広西から中国台湾へ、明日は台北で会おう)とあります。これが一部の台湾の人々に火をつけてしまい、台北での公演には抗議者が訪れる事態に。その後に予定していたフェスも出演をキャンセルになってしまったそうです。
記憶の限りでは、「中国台湾」という表記が台湾側で問題になり、このようなキャンセルにまで発展した事態というのは、これまでになかったのではないかと思います(そもそも中国のアーティストが台湾がらみの発信で「中国台湾」と書いた例がこれまでに存在しないか、僕が知らないだけかもしれませんが)。
台湾アイデンティティや、あるいは中国大陸側への警戒心の強化……と見ることもできるのかもしれませんが、台湾のいまの世論についてはあまり詳しくないので言及は控えておきます。
板挟みのアーティスト
自分にもわかる範囲のことを書くと、このキャンセルされてしまったバンドの人もかわいそうというか、難しい立場に立たされてるよなあと思います。
というのも、中国大陸側の世論においては、逆に、「中国台湾」という表記を採用「しなかった」ことが問題になってしまうケースが存在するからです。
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