マイナスとプラスのどちらにフォーカスするのか? 日本人と中国人、物事の捉え方の差
突然ですが、中国にて製造業まわりで働いている日本人がほぼ100%経験するであろうあるあるを言います。日本人が中国人に発注したとある製品の量産前のサンプルが仕上がってきて、その仕様が間違っていた(色が変だった)という場面を想定してください。
日本人「あの、全体の色が注文したのと全然違いますよね」
中国人「あー……そうですね。でも機能的には問題ないです」
日「いや、それはいいんですけど、色が違うっていう話をしてるんですよ」
中「でも、機能的には問題ないですから。それに、色は量産で修正できるから大丈夫ですよ」
日「(イラッ)いやだから、こっちは色が違う話をしているんです。色が正しいサンプルを出してくれないと、量産の許可は出せないですよ」
中「(めんどくさそうに)でも、色の修正は量産でできます。信じてください。またサンプルを作るとなると時間と費用が無断なので、すぐ量産したいです」
日「あ゛ーーーーーーー(頭を抱える)」
どうでしょうか。心当たりのある人はたくさんいるんじゃないでしょうか。
このような日本人と中国人のすれ違いは様々な角度から語ることのできる、奥の深いテーマなのですが、今日のnoteは「お互いが物事のプラス面とマイナス面、どちらにフォーカスしているのか」という切り口から見てみたいと思います。
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上の会話からわかるのは、日本人は出てきたサンプルの「色が違っている」という問題を修正してほしい、つまりサンプルのマイナス面を打ち消してほしいということをずっと言っているのに対して、それを受けた中国人は徹頭徹尾「機能的には問題ない」「量産を早くかけた方が時間や費用がかからなくて済む」という物事のプラス面の話をしています。
この場合サンプルを作り直すのと、そのまま量産をかけてしまうのとどちらが効率的か? などについては状況によって答えが異なります。そのため、どちらが正しいのかという評価は一概にできません。
ただ、日本人は物事のマイナス面を潰していくことに執心しがちなのに対して、中国人はプラス面にいかにフォーカスして伸ばしていくか、ということを考える傾向があるのではないか、とこれまでの中国生活で感じています。減点法と加点法の違いとでもいうのでしょうか。
このへんを踏まえて中国人とコミュニケーションをすると、変に消耗することが少なくて済むのかな、という気がします。
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「マイナス面とプラス面、どちらにフォーカスするか」ということでもう一つ思い出すのが、日本人の中国人に対する平均としての印象の悪さです。2020年末のある調査では、日本人の調査回答者の9割は中国に対して良くない印象を持っている、という結果が出たそうです。
日本にもどんどん中国のカルチャーが流れ込んでいる昨今、まだまだ中国への印象が良くならないのは(若年層ではもっと違う結果が出たというデータもあるそうなのですが)、おそらく日本においては中国のマイナス面へのイメージが根強く、またそれらマイナスの事実に対して多くの人が強くフォーカスしているためではないか、という仮説が立てられるのではないかと思います。
また個人的な観測の範囲内ですが、このような「日本人から見た中国への悪印象」の話題を中国の人に投げかけてみると、彼らは高い確率で「中国の素晴らしいところがまだ伝わっていない」「日本人は中国のいいところを知らないだけだ」と反応します。ここにも「素晴らしいところ」「いいところ」、つまりプラス面を積極的に打ち出していこうという姿勢が見られます。
実際には日本人の印象を良くするのであれば、プラスを打ち出していくよりマイナスが軽減されていっていることをアピールした方が効果的なのかもしれないんだけどな、と思ったりもします(まあ彼らにとって「日本人の印象を良くする」ことが必要なのかと言われると、そうでもない気はするのですが)。
ともかく、このへんでも両者の意識の差異というか、すれ違いのようなことが起こっているのではないのかな、と思いました。
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繰り返しになりますが、これらの意識の差はどちらが優れているとか正しいとか言った性質のものではありません。どちらのマインドが成果を出すために効果的なのかについても、状況によって異なってくるでしょう。
ただ両者の間には傾向としてこのような違いがあるかもしれない、と知っておくことは双方にとってそれこそ「プラス」になるのでは、と思いこの文章を書いてみました。
身近に中国人がいる人、または日本人と働いたりしたことのある中国の人などの感想が聞きたいです。お待ちしています。