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酢コーラなんてものを買う自分をなんとかしたい

ある日の午前中、僕の手にはとある不穏なものが握られていました。

そう、酢コーラです。

「そう、酢コーラです」と言われても、読者のみなさんは「なんだそれは」「そんなもん知らんがな」と言うしかないでしょう。僕もこれをまじまじと見つめながら、「これはいったい何なんだろう」「なぜこんなものが僕の手中にあるのだろう」と思っていました。

もちろんこの酢コーラは天から降ってきたわけでも、ましてや万引きをしたわけでもありません。僕はスーパーで見かけたこれを、気がついたら会計を済ませて自分のものにしていました。なぜこんなものを買ったのかは後述しますが、ともかく買ってしまったからには責任をもって飲み干さなければなりません。

キャップをひねり開けると、「プシュ」という炭酸飲料の音がします。本当に炭酸なんだなと実感させますが、シュワシュワという音とともに漂ってきたのは濃縮された酢の香りでした。

パッケージに書いてある「老陳醋」とは、中国で一般的に食されている黒酢の一種で、餃子を食べる時などにタレとして使うことが多いものですが、まさにその酢とまったく同じ匂いがします。ジュースを開けただけなのに、餃子屋にいるような感覚に陥りました。

さて、問題は味です。鼻にツンとくる酢そのものの匂いに躊躇しながら、勇気を出して一口目を飲みました。

第一印象は「ただの酢じゃねえか」というものでした。飲んでみると炭酸はあまり強くなく、普通に酢を飲んでいるだけのように思えてきます。むしろこの味を中和するために餃子をくれ、という気持ちになります。

その後、何口か飲んでいると、酢の味の中にジュースっぽい甘みがあることに気がつきました。なるほど、これがコーラとしての成分のようです。この時点で味の印象は、「ただの酢」から、「酢の中に大量の砂糖をぶち込んだもの」に変わりました。

ただ、味は酢そのものながら、あの独特のむせ返るような感覚はなく、飲み物としてまとめ上げられてはいます。さすがにそのまま酢と砂糖をペットボトルに詰めただけのものではなかった、ということはわかります。一応、飲み物として飲めないことはなく、その後も少しずつ飲みました。

グダグダ細かい描写ばっかりしてないで、うまいかマズいかはっきり言え、ですって? そんなもん、わざわざ言う必要ありますか? ちょっと想像力があればわかることでしょう? 察してくださいよ。日本人は空気を読むって言うでしょうが。

そんな悪態をつきたくなるような胸焼けを抱えながら、僕はなんとか酢コーラを飲み干し、空いたボトルをそのへんのゴミ箱に捨てました。

僕は酢コーラを買った時の値段を思い出していました。6元(≒120円)だっけか。モンスターエナジーでも買ってたほうがマシだったな。もういいや。さっさと忘れよう。

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とまあ、そんな酢コーラ体験だったんですが。

なぜ僕は、飲み干した瞬間に忘れたくなるような酢コーラ、買う前から地雷であることがわかりきっている酢コーラをわざわざ手に取り、お金を払ってレジを通し、飲もうとしたのでしょうか?

端的に言うと、たぶん僕は中国生活での刺激に飢えているんだと思います。

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