新疆でのロックダウン措置に感じた「恐ろしさ」の話
少し前のnoteで扱ってから、元CCTVの調査報道員で、現在は日本に在住している中国人ジャーナリストの王志安さんによるYouTubeチャンネルにハマっています。
少し前には、SNSなどでも話題になっていた日本に滞在する中国人留学生がエイズの感染を故意に広げようとしたという週刊現代の記事について、疑義を述べる動画を出していました。ていねいな周辺調査の上、この記事の内容が事実である可能性は低いとしています。
中国語の勉強をしている人には、この王さんのチャンネルを強くおすすめしたいです。
さすがはもともと中央の報道機関にいただけあって、王さんの話す中国語は非常に洗練された普通話だし、語り口も落ち着いているので聞きやすいです。登場する語彙も適度に日常性のあるもので、初〜中級者でも安心して聞けます。
また、過度に政治的な色がついておらず、できるかぎり中立的な観点から時事問題を取り上げる中国語のメディアおよびチャンネルというのは、実はそれほど多くありません。中央寄りのものか、逆に過剰に反体制的なものになってしまう場合が多いです。中国語を学びながら中国のことについて知るためのものとしても、偏りがなく適切でしょう。
字幕のオン・オフができるのも地味にうれしいところです。中国語のコンテンツはほとんどが字幕付きで、逆に字幕のないものを探すほうが難しいところがあります。まずは字幕なしでチャレンジして、あとから字幕で正誤を確認する、といった使い方ができます。ぜひ試してみてください。
新疆ウイグル自治区で起こっていること
さて、そんな王志安さんの最新の動画です。
中国の西方、近年は人権問題でもよく話題になる新疆ウイグル自治区でのコロナ対策が、どうやらかなり大変なことになっている、という内容です。
もともと新疆ウイグル自治区では、これまで深刻な感染の拡大というのはほとんど起こっていません。にもかかわらず、いまの新疆では厳しすぎる封鎖措置が開始・終了の基準すらあいまいなまま行われており、またそれにともなう食糧難、適切な医療を受けられずに亡くなる人など、深刻なことがいくつも起こっていると言います。
王志安さんは動画の中で、これらの措置が新疆ウイグル自治区という土地の「安定」のために援用されているのではないかという可能性について触れています。
新疆は政治的にセンシティブな土地であるためか、他の土地よりもいっそう厳しい措置がとられ、しかもそれらが正当化されてしまっているのではないか、と王さんは述べています。
甚だしきは、あえて封鎖を長引かせて管理を強め、「安定した統治」をやりやすくするためにそれが行われているのではないか、とまで言っています。そこではウイグル族だけでなく、漢民族を含むさまざまな人の権利が犠牲にされている、とも。
印象的なのは、「新疆は中国における人権の「洼地」(くぼ地)」である」としたうえで、「普通の人々が持つ人権を1と置くなら、中国人の持つ人権は0.2か0.3程度だろう。しかし、中国という範囲で見た場合、新疆の人々に与えられた人権は、普通の中国人のそのまた10分の1でしかない」と王さんが述べていたことです。
これらが事実であるとするなら、本当に痛ましい話です。
どこにも出てこない情報
動画を見終えた後、僕はあることを思いました。それは中国に暮らすものとして、すこし恐ろしい気持ちになるようなものでした。
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