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あの日の汚れた水のこと

先日に引き続き、王志安さんの福島第一原発事故をめぐるドキュメンタリーのシリーズから書かせてください。

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この動画は、王さんが福島第一原発と、中国で大きな反応を引き起こしたALPS処理水の処理施設を実際に訪れ、取材したものです。厳しく管理・制限される取材の中で、果敢に情報を取ろうとする王さんの姿が収められています。

これもまた中国人から見た福島、あるいは日本の実像という形で非常に興味深い映像なのですが、僕が特に印象に残ったのはALPS処理水の検査の過程について、その公正性を王さんが問う場面です。

上記動画(22:26)より。サンプリングが恣意的な可能性について質問する王さん

処理施設について説明する東京電力側の職員に対して、 王さんは執拗とも言える質問を繰り返します。 サンプルの採取は適切に行われているのか、東電側が恣意的に選んだサンプルではないことをどうやって保証しているのかなどと、質問を続けます。対応する東電側の職員には、疲弊する様子が見られます。

上記動画(25:23)より。「精神が保たない」とボヤく職員の声

王志安さんは日本に移民する以前、中国の国営放送で編集委員兼解説員を務めていた人物であり、本国でのジャーナリズムの最前線にいました。あらゆる場所に自ら出かけ、当事者に話を聞きに行くことで取材をした経験を持ちます。また、企業・自治体関わらずあらゆる不公正に切り込み、闇を暴いてきた人物でもあります。

王さんの東電に対する問い詰めは、そうした中国での長年の経験から来るものなのではないかと思います。中国においては、何かしらの不正やごまかしのようなことが、残念ながら日常的に行われる場面が非常に多く見受けられます。そうした連中の言葉尻を逃さず、追い詰めるスキルが、日本を取材対象にした時にも発揮されたということなのでしょう。

中国式の密度で追い詰められた東電の職員は気の毒ですが、まあ納得する説明はできていたようなので、よかったのではないでしょうか。

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……と、「中国ではカジュアルに不正をしたりウソをつく人間がいるから、それを問い詰めるのも執拗になるよね」という、日本と中国の違いの話に持っていこうかとも考えたのですが。

でも、日本人だって条件や状況がそろえば似たようなことをするよね、という例を、僕は個人的に経験してしまっています。今日はその話を以下に書いていきたいと思います。以下の内容はシェアなどの際に言及にご注意ください。

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