「中国の不動産バブル、いよいよ崩壊か」に寄せて。どこまで「織り込み済み」なんでしょうか
中国の不動産業界の危機が連日伝えられています。
かねてより危機が伝えられていた恒大集団(エバー・グランデ)のアメリカでの破産申請もそうですが、おなじく不動産の大手デベロッパーである碧桂園(カントリー・ガーデン)にも債務不履行の危機が訪れているということです。
ニュースでの扱いは恒大集団のほうが大きいようですが、在住者としては碧桂園のほうが衝撃が強いです。
サッカーチームだの電気自動車だの、無軌道に事業を広げていた恒大が債務危機に陥るのは納得感があるのですが、これまで安泰と言われていた碧桂園もいよいよ危ないとなると、本当にヤバいのだなということが実感されます。
不動産はこれまで中国の経済を引っ張ってきた存在であり、その凋落の影響は大きなものとなると見られています。
政府がデベロッパーに土地を売り、デベロッパーはその土地にマンションを建てる。デベロッパーは建設中のマンションを売りに出す。政府は土地の売却益で儲かるし、マンション建設には人手がいるのでそこで雇用が生まれて景気が刺激される。もちろんデベロッパーもマンションを売って儲かるので、それを担保にいろんなところに投資ができる。富が庶民に降りてくる。みんな幸せ。
と、ざっくりこういうスキームで中国は景気を回してきたのですが、この前提にあるのは「建てれば建てるだけマンションが売れる」ということです。
現在はマンションが売れなくなってしまったので、このスキームが丸ごと死んでしまう可能性があるのです。そうなれば連鎖的に不景気が広がり、いよいよ中国経済が終わるのでは、と騒がれているわけです。
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じゃあなぜマンションが売れなくなったのかというと、政府による不動産への締め付けが強くなったことが大きな原因としてあります。
政府による不動産業界への締め付けの発端となったのは、2020年8月の不動産関連の融資規制がきっかけです。不動産業者の負債を一定金額に抑えるよう通達を出し、負債が大きすぎる業者には銀行からの融資を打ち切らせました。これにより多くの不動産業者の首が回らなくなり、債務不履行に陥りました。その中にいたのが恒大集団であり、碧桂園なわけです。
そのほかにも不動産税の導入が検討されたりと(そもそも不動産税=固定資産税がない(あるにはあるが、住宅にはほとんどの場合かからない)のがすごい話ですが)、不動産業界にはネガティブとなる動きが数多く見られました。
政府がこうした厳しい締め付けを始めた理由は、行き過ぎた不動産バブルの是正のためです。実態以上の取引が横行し、住宅の値段が上がり続けたことで、住宅は庶民の手の届くものではなくなっていました。
みんな家を「買わない」というよりも、そもそも「買えない」という状況があったのです。これをどうにかするため、政府が動きました。
近年では「房住不炒」(家は住むものであって、投機のためのものではない)という言葉がある種のスローガン・方針となっていました。いまの流れは、そうした方針によってもたらされたものです。
政府のこの動き自体は、納得のいくものではあります。中国では結婚のために家が必要とされますが、その家が買えないために結婚を諦める人の数は膨大になっています。中国は日本と同じく出生が結婚と強く結びついているので、結婚の減少はすなわち出生率の低下を招きます。それはそれで問題なので、住宅の高騰を抑えようとするのは不思議なことではありません。
ただ、問題は「房住不炒」的な締め付けが、効き過ぎてしまったということです。こうした動きにより投機筋が住宅への投資を手控えるようになったのはもちろんのこと、一般の人々も「いまマンションを買ったら損するかも」と思い始め、住宅購入に二の足を踏むようになりました(何を隠そう、僕もその一人です)。
結果として誰も住宅に手を出さなくなり、不動産価格があちこちで下落を始めています。負の連鎖です。
このような流れは、日本も経験したことです。当時の大蔵省はいわゆる「総量規制」により行き過ぎたバブルを抑制しようとしましたが、結果としてこれはバブルの崩壊を招き、日本の経済を大幅に後退させました。1990年ごろのことです。
中国は何かと、ちょうど30年ほど遅れで日本の通ってきた道をゆくことが多いのですが、不動産や住宅バブルについても同じような道をたどるのでしょうか。
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中国がこれから日本のようになるかどうか、中国経済が急激な停滞の道を歩むかどうかは、政府がどこまで「織り込み済み」で動いているのかにかかっているのではないかと思います。
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