中国でディストピアものが規制されないのはなぜなのか。2つの仮説
中国は、いわゆる表現の自由がないとされる国です。政府批判につながるものや、「社会に悪影響を及ぼす」とされたものが規制される話をたびたび耳にします。
いっぽうで、その規制される基準は外から見ているとよくわかりません。なかでも「なんでコレが規制されたり、発禁になったりしないのだろう」と、余計なお世話ながら思ってしまうものがあります。
その一つが、いわゆるディストピアものの類です。
ジョージ・オーウェル作品
たとえば、ジョージ・オーウェルによるディストピアの傑作といわれる「1984年」という小説があります。
知らない人のために補足しておくと、「1984年」とは国家による監視が日常的になった世界の息苦しさを描いた、全体主義への警鐘を鳴らす作品です。……何かを連想するなという方が無理でしょう。
しかしこの作品は、中国のECサイトで普通に売られています。なんだったら同じくジョージ・オーウェルの代表作であり、人間に反乱を起こす動物をモチーフに革命によって興った体制がやがて独裁と恐怖政治に染まっていく様子を描いた、「動物農場」とのセット販売までありました。
果ては、「1984年」のオマージュ作品まであります。これについては過去に僕のnoteでも取り上げました。
傑作であることは間違いないのですが、統計局に勤め始めた主人公が統計改竄の片棒を担がされたり、同僚からの密告の被害にあったりと、なにかと象徴的な出来事が数多く出てきます。しかし、この作品も今のところは中国国内で普通に入手できるようです。
キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
「1984年」以外にももう一つ、ある種のディストピアとして印象深い作品があります。それは2014年の映画、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」です。
この作品はいわゆるマーベルのスーパーヒーロー映画であり、娯楽映画として世の中に提示されたものではありますが、そこに流れているテーマは非常にディストピア的です。僕なりに説明すると、それはアルゴリズムによって特定した、世界に害を及ぼす可能性が高い者を予防的に拘束したり殲滅したりすることの是非です。これも、何かを思い出すような話で少し心配になります。
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