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答えはたぶん、その中間にしかない
僕のTLではこんな動画が話題になっていました。
国際的に人権問題が取り沙汰されている新疆ウイグル自治区において、漢族による現地のウイグル族への干渉がどのように行われているのかを追った動画です。その内容は、漢族による管理統制の不気味さを伝えるもののように見えました。
テロや騒乱防止の文脈で市場の包丁にまで鎖が付けられていること、民家の前にQRコードが貼られていつでも「問題のある市民」を通報できるようになっていること、モスクが取り壊されたり愛国を示す看板が貼り付けられるようになったこと、小学校では中国語(普通話)の使用が義務付けられていることなどが、その事例として取り上げられています。
そして印象的なのは、それらの同化を迫る側である漢民族の人々の態度です。
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こうしたシーンを動画に挿入した作り手の意図は、その同化への悪意のなさを取り上げることによって、そこで行われていることのグロテスクさを強調することでしょう。
たしかにこうした干渉を「よきこと」として捉える人々には、ゾッとするものを感じなくもありません。
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ただ、動画でも少し取り上げられていますが、漢民族の側がこれを「よきこと」とする背景には、とりもなおさず中国は同地域の経済発展を重視し、手を差し伸べてきたのだ、というロジックがあります。
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同地域の経済が中国の躍進とともに牽引されてきており、そのための「手助け」として漢民族の介入が必要だったことは、事実ではあると思います。
言語にしても、域内でしか通じない現地の言葉だけではおそらく同地域に発展の余地はなく、中国を相手とした商売を可能とし、生存していくためには中国語の学習がほぼ必須であった(これからも必須である)というのも、本当のことではあるでしょう。
報道ではなぜ中国共産党がウイグル人を同化しようとしているかまで踏み込めていないので補足。
— Son' (@sscrimess) July 17, 2023
中国共産党は暴動の再発を危惧
↓
共産党的ロジックで貧富の差が騒乱の原因と判断
↓
漢族経済圏への統合で貧困解消
↓
言語・文化が障壁となる
↓
同化政策を進める
という乱暴な理屈による政策が実態。
もちろんそれは現地のウイグル族に「文化か経済か」という厳しい選択を迫るものであり、ある種の非情さを含むものではあります。しかし、「文化を守るか、経済を優先するか」というテーマは、世界のどこにでも見られるものです。
親子3代続いたそば屋を潰してコンビニを開けば儲かりそうだが、そこで守られてきたそば作りの伝統は失われる。ある国が英語を公用語化すれば経済発展に有利だが、土着の言語をどう保存するかという問題が出てくる。これは場所を問わず、普遍的に起きることです。
同地区の現状は、「文化か経済か」という両天秤のなかで中国が出してきた一つの答えではあるのです。
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さて、それを普遍的なものであると捉えたうえで、いま新疆ウイグル自治区で起きていること、たとえば上の動画で触れられているようなことを、どう評価すべきでしょうか。
いろいろな見方や考え方があってよいと思うのですが、個人的にはそれを「中国はいいか悪いか」というような善悪の二元論に落とし込まないように気をつけるべきではないか、と考えています。
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