「南京大虐殺のカラー写真」のニュースと、それをめぐる2人の中国人の見解
今日は日本がらみなのに、あまり日本では話題になってないニュースについて取り上げます。
日本語だと、ニューズウィーク日本語版によるものと、下記のレコードチャイナの記事しかありませんでした。
いわく、米ミネソタ州で質屋を営むのEvan Kail氏のもとに、「南京大虐殺の様子が収められた、まだどこにも出ていないカラー写真」を含んだアルバムが届いたというのです。その内容に強いショックを受けたKail氏は、9月1日にこの写真についての検証を求めるメッセージをTwitterやTik Tokなどに投稿しました。
これらの投稿はすぐに中国国内にまで届き、またたく間に拡散。中国の最大手サーチエンジンである百度で、トップニュースとして表示されるに至りました。
(※下記リンク先には刺激の強い画像が含まれますので、ご注意ください)
ちょうど中国における抗日戦争勝利記念日(9月3日)の周辺だったこともあってか、中国のネットはある種の大盛り上がりの様相を見せました。その盛り上がりは加速し、中国大使館や南京大虐殺記念館の職員までもがこのKail氏にコンタクトをとっていると伝えられています。
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しかし、これらの写真には疑義も数多く挙がっています。
まず中国国内から、件のアルバムとほぼ同じものを所有しているという男性が動画を投稿しました。いわく、このアルバムは一般に流通していたものであり、決して珍しいものではないといいます。また、その中には南京大虐殺の資料として妥当なものは見られず、今回出てきたものが「まだ見つかっていない南京大虐殺のカラー写真」である可能性は極めて低いとしています。
同様の指摘は英語圏からも出ています。こちらの「Fake History Hunter」というアカウントによるツイートでは、アルバムの出どころや写真の出典などについてもより具体的に触れられています。
僕がこの記事を執筆している時点(2022/09/06の午前)では、Kail氏はこれらの反論に屈することなく「まだ真偽はわからない」「すべての写真をネット上にアップロードしたわけではない(=残りの写真に新規性のある資料が含まれているかもしれない)」として、専門家による鑑定を待っていると述べています。
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個人的に拾った情報を見ている限りでは、この「発見」がKail氏の言うような新規性を含むものである可能性はかなり低そうだな、と思います。すでに出典が特定されている写真なども多く、Kail氏の持っているものが特別なものである確率はほぼなさそうです。中国外交筋の動きや資料の検証も、おそらくは無為に終わるでしょう。
たぶん、このKail氏は中国や日本の戦争に対する知見があまりなく、悲惨な戦争(戦争時のもの、あるいは日本軍によるものであるかどうかすら疑わしいものも含まれているようですが)の写真を見て衝撃を受け、少しナイーブになってしまっただけのように見えます。
そのため「世紀の大発見」としてのこのニュースには注目する必要はほぼないかと思うのですが、それとは別におもしろいことがこの件をめぐって起きたので、以下にそれをシェアしてみたいと思います。
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