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「ピアニストYouTuber vs. 中国人」への雑感

こんなニュースをご存知でしょうか。

英国の公共の場で自身のストリート・ピアノ演奏を撮影していたピアニストのユーチューバーに対し、中国人観光客たちが「顔が出ることを望まない」として撮影しないよう要求した。ユーチューバーが「ここは英国だ」と要求を断ると、中国人たちは声を荒らげて激しく抗議した。ユーチューブのチャンネル登録者数219万人を抱えるこのユーチューバーの動画は急速に拡散され、ネット上では中国人観光客たちの無理な要求が波紋を呼んでいる。

上掲記事より

問題の動画はこちら。

「まーた中国人が意味わかんないイチャモンつけてるよ(笑)」的な文脈で拡散されているこの件ですが、SNSやニュースなどに流れてくるのは切り抜かれた映像が中心で、どうにも起きたことの全容がわかりません。

そのため、当該の動画を(英語は不得手なので、中国語の字幕がついた他の動画などを参照しながらですが)見てみました。そのほか、背景情報などについても少し調べました。その結果と雑感を以下に書きます。

ではどうぞ。

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まず、起きたことの流れを僕なりにまとめてみます。

上の記事では揉め事を起こしたのは「中国人観光客」とありますが、どうやら彼らはとあるインフルエンサー関連のグループで、どこかの企業の依頼で春節のお祝いメッセージのようなものを撮影しようとしていたそうです。

その撮影にあたってストリートピアノを使おうとしたが、そのYouTuberがピアノを占拠していたので、近くで順番待ちをしていました。やがてYouTuberが彼らに気付き、カメラをそのグループに向けました。

そこで中国人グループは、どうやらこのYouTuberは動画の撮影(実際にはライブ配信)をしているのではと気づき、慌てました。彼らは依頼者と秘密保持契約を結んでおり、部分的にでも自分たちの姿が公開されるとまずい、というのがその理由です。

そこでグループの中の1人の女性が、「(秘密保持契約に引っかかって)困るので、動画を公開しないでくれませんか?」とYouTuberに持ちかけますが、YouTuberのほうは「ここはロンドンだぞ、中国の法律が関係あるのか?」と取り合いません。

するとグループ側からもう1人の男性が、「どのような理由であれ、勝手に我々を撮影することは肖像権の侵害にあたる」と強めに主張し始めます。そこから明らかに雰囲気が悪くなり始め、一気に「揉め事」の様相を呈するようになってきます。

お互いが声を荒げるようになり、しまいには警察が出動してきました。警察はお互いの話を聞き、どちらにも注意を促します。

やがて中国人グループは去り、残されたYouTuberが「見ろ、あいつらを退散させたぞ」と、満足そうに配信を再開させました。

その後YouTuber側がこの件でテレビ出演したり、中国側でも話題になったことで当該グループの女性が説明の動画を出したりする中で、騒ぎが大きくなり続けています。

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以下、この件への雑感です。

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